武道大会 12 〜本戦〜
両チームの先鋒は更夜と光帝だ。
帝チームは、女性である光帝を当ててきた。
「始め!!」
審判の開始の合図で2人とも動きだす。
光帝は光の魔法で攻撃をする。典型的な魔法使い型である光帝は魔法攻撃で更夜を仕留めようとしていた。
対する更夜は、刀を出して、光帝が放った光魔法を弾いており確実に至近距離で仕留めようとしている。
「くっ!?」
接近戦が苦手の光帝は魔法で牽制しながら間合いを取ろうとするが、更夜はそれをさせない。
更夜は魔力を温存をしてこの試合を勝ち抜こうと企てていた。
一方、光帝は魔力を使い果たしても更夜を倒そうとしていた。勇者チームはバケモノの集まりのチームだ。まだ、今対戦している勇者とその姉、舞はマシの方だ。しかし、新人の帝3人はバケモノで、自分では絶対に勝てないし闘いたくない相手だ。特に拳帝はどういう原理か解らないが一切魔法攻撃が効かない。魔法主体の光帝にとっても一番厄介な相手だった。だからこそ、勇者と当たる事は光帝にとっても渡りに船だった。勇者と当たれば、全力で魔力量を使い果たしても言い訳が立つからだ。
が、
光帝は違和感を覚えた。勇者は女性には弱い筈だ。何度か模擬戦をやった経験上、勇者は自分に対して積極的に接近戦を仕掛けて来なかった。創帝からヘタレとヤジが飛んでいたが、今回の闘いは、そんな風には見えない。勇者は普通に自分と闘っている。
「いつも顔を合わせる女性に対して苦手意識を持っている程ピュアじゃないよ。貴女はもう慣れた」
勇者はそう言った。
「なるほどね?どうやら、勇者は光帝を克服してしまったようね?」
光帝と勇者の闘いを見ていた炎帝がそう言った。
「そうか?ならば、我々の作戦は破綻したな」
帝チームの作戦は、勇者に戦闘経験をより多くさせる為に絶対に先鋒にすると解っていた。だからこそ、こちらも女性の光帝をしたのだが、勇者は光帝との模擬戦で苦手意識を克服してしまったようだ。そうなると、光帝に勝ち目はほぼなくなってしまった。
「そうね。尤も言えば、この1回戦で勇者チームだけは当たりたくなかったわ。どう足掻いても、私達に勝てる要素はないわ」
「そうだな。光帝には勇者に勝って欲しかったが、それも難しいようだ」
「オイ!なに弱気になっているんだ!!曲がりにも俺達は帝だぞ!!」
雷帝は、弱気発言をしている炎帝と聖拳帝に苦言を呈したが、それを反論したのは水帝だった。
「雷帝!!貴方も解っている筈だ!!予選1回戦で圧倒的な創帝の力を!!」
「ぐっ!?」
「あの力をいきなり見せつけられたら、絶対に1回戦では当たりたくないと思う。しかも、創帝は我々の常識を遥かに超えた事を今までに何度かやって来ている。仮にあの予選1回戦を観なくても創帝の力を知っている者達の反応は同じだ!!」
「⋯⋯⋯」
水帝にそう言われ、雷帝はグッの音も出なかった。
だが雷帝もそれは解っていた。しかし、帝という矜持を保つ為には、虚勢を張ってでも士気を上げないといけない事も解っていた。
「水帝、ここまでにして頂戴、雷帝も解っていて敢えて言っているのよ。マイナス思考ではチーム全体の士気に関わるわ。本来チームリーダーの私がそんな発言をしてはいけなかったのよ。でも、私達の作戦はご破算に近いわ。貴方達2人は責めて、勇者とその姉と中堅に出て来ると思われる火帝を倒して頂戴。私は大将の創帝を聖拳帝は後継者の拳帝をお願い。特に水帝、貴方の負担は大きいわ」
次鋒で出る水帝は勇者と姉の舞を倒さないといけなくなった。更に、中堅で出て来ると思われる火帝の体力を消耗させるという作戦を炎帝は立て直した。
試合は。
光帝は善戦したが、更夜には敵わなかった。最後はダウンして、レフリーストップで終わった。




