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武道大会 5 〜予選会〜

 話は聖の試合中に戻る。


『なっ!!』


 特別室で観戦している4人の大貴族と冢宰が驚きの声を同時に上げた。


「たった一本の指で突進して来た大の大人を停めただとう!?」

「あの細腕でどうやって停められるんだ!?しかも吹き飛ばしただとう!?」

「これがフレイム卿の力か!?」

「中身は別人ではないのか!?」


 4大貴族が驚きの声を上げる。


「いいえ、あの者は間違えなくフレイム卿御本人ですよ。嘗てフレイム卿は、デコピンだけで人一人の頭を粉々に吹き飛ばし殺しましたので、この位は容易いかと」


 冢宰が冷や汗を掻きながらも言う。冢宰は聖の正体を知っている為に、この位は出来るのだろうと再認識した。


「なんと、あの噂話は本当だったのか!?フレイム卿がたった指一本で人を殺したという話は」

「そうですよ。フレイム卿に敵対していた貴族を返り討ちにしましたよ」


 そして、第2試合もあっという間にケリがついてしまう。


『⋯⋯⋯⋯』


 その光景を目撃した5人はあ然としていた。


「つ、強すぎる⋯⋯⋯まさか、フレイム卿がこんなにも強かっただなんて⋯⋯⋯この強さは軍1軍団と匹敵するのではないか!?ただ、対峙しただけで、相手を気絶させるなんてとてもじゃないが誰にも出来ないぞ」

「なるほど、この強さ。陛下がフレイム卿に妖鬼(おに)の討伐を依頼する訳だ。俺はフレイム卿に従う神様と天使様の力を頼って、陛下がフレイム卿に依頼をしたと今まで思っていたが、フレイム卿自身も強い力を持っていたのだな。だからこそ、少人数、たった5人で妖鬼退治が出来たのだな」


 サンダーがそう言うと。


「たった5人!?たったの5人で妖鬼を討伐をしたのか!?確か報告書には妖鬼は総勢200体以上、頭は鬼神と書いてあったが⋯⋯⋯そして、フレイム卿の指揮の下で討伐に成功としか書いてなかったぞ」

「冢宰!?どういう事だ!!」


 3人が冢宰に詰め寄った。この報告書を書いたのは冢宰だからだ。


「どうもこうもありませんよ。貴方がたは、仮にその報告書を読んだ時に信じましたか?」


「「うっ」」


 土と水の貴族が言葉を詰まらせるが風の貴族は。


「少なくとも俺は信じたぞ。俺は天使様達がフレイム卿に従っているのを知っていたからな。まあ、フレイム卿に口止めされていたから今まで言わなかった。それにフレイム卿が強いというのも分かっていた。グランパニの勇者と名乗る輩をボコボコにしたと部下達から報告を受けた」

「た、確かにそうだったな。フレイム卿自らそう言っていた」

「そうだったな⋯⋯⋯しかし、これは言葉にしてはいけない事だが、敢えて言おう。俺はフレイム卿を今の今まで侮っていた。小娘がどうやってグランパニの勇者をボコボコに出来たのかが不思議だった。それにたった一本の指でどうしたら人を殺せたのかが不思議だった。もちろん、あの時は冢宰が一緒に居たというのは知っていた。その冢宰が虚偽を陛下に言う訳がないと分かりつつも、やはり、とても信じられない。という言葉が俺の中に支配していた。しかし、たった今、それが俺達の目の前で起きた。フレイム卿は俺達よりも強い実力者だという事がこの試合で証明した」


 と、土の貴族、ソイルが話した。


『なっ!?』

「ソイル卿!?」

「分かっている。だからこそ敢えて、貴殿らに俺の心内を話したのだ。こんな話しは俺の地位を落とすということ位にはな。だがな、俺はな、悔しかったのだよ」

「悔しかった。ですか?」


 冢宰が聞き直した。


「そうだ。貴族として悔しかった。俺達は、先祖代々、王族との関係を永年の間コツコツと築き上げて来たが、フレイム卿は、我々が築き上げて来た王族との関係性を一瞬の間に同レベル、イヤ、それ以上の関係を築き上げた。実際、陛下や御一家はフレイム卿との関係を重要視しているのは誰の目から見ても明白だ。それが悔しくてな」


「それは」と冢宰が理由を言おうとしたが、


「冢宰殿、言わなくても分かっている」


 ソイルが止める。


「我々、4大貴族が解決が出来なかった難題をフレイム卿が次々にいとも簡単に、しかも、恐ろしい程短時間の内に解決に導いた事だ。立て続けにフレイム卿が難題を解決してしまえば、陛下とて無視は出来ない。重要視するに決まっている。我々は一体何為の大貴族なのだ。同じ大貴族の立場として悔しいと思ったのだよ。俺にもフレイム卿の様な事が出来ればな⋯⋯⋯」


 冢宰は思った、悔しかったのは自分だけではなかったと、おそらく、ここに居る全員がフレイム卿の能力を羨ましく悔しく思っているのを確信した。

 フレイム卿は神様だ。しかも、ただの神様ではない。フレイム卿は自分達が信仰している神聖王の令嬢だ。神様なら、どの様な事態になっても解決が出来る。と、フレイム卿の正体を知った時はそう思っていたが、そうでもなかった。確かに国難とされた事件は全てフレイム卿が解決をしたが、王国が抱えている他の問題点はフレイム卿は解決をしてはいない。イヤ、出来てはいなかった。フレイム卿に聴けば。『私は政治関係はまだまだ未熟ですし、政治に関しては私一人では出来ないでしょう。それに土木も農事も同じですよ。それらは、皆の力を合わせないと意味がありませんので』と逆に言われた。確かにその通りだ。政治も土木も農事もフレイム卿一人では到底出来ない。フレイム卿一人にやらさせていたら、我々はなんの為に政治組織を作ったのか分からない。そして、フレイム卿はこうも言った。


『私は万能ではありません』


 と。


 フレイム卿が万能ではなければ、我々全員は凡人以下に成る。冢宰はフレイム卿にそう言うと。

『凡人で良いじゃないですか?私も優れた()()ではありませんよ。しかしね、私達凡人が沢山集まれば、1人の天才の案よりも、私達凡人の案の方がより良い案が出せますよ』


 フレイム卿はそう言っていたが、やはり、冢宰はフレイム卿が羨ましいのは変わらなかった。


「ソイル卿、貴方のそのお気持ちは分かりますよ。私にもフレイム卿の能力がほんの少しでもあれば良かったと、フレイム卿を間近で見て何度もそう思ったか。しかし、我々は、我々が与えられた能力でやって行かはければなりません。たとえ、フレイム卿が遥か先に行こうとしてもです。我々はその後に続けば良いのです。その歩みを止めなければ、陛下や御一家も我々の事を見てくれますよ。もし、陛下が見てくれなければ、その時は我々が辞めてしまえば良いのですよ。そうすれば、残った者が大変苦労するのが目に見えていますのでね?幾ら、フレイム卿でも全ては出来ますまい」


 冢宰がとんでもない事を言いだしたが、


「フハハハハ!!ここに居る我々全員が辞めるか!!」

「確かに、陛下及び残った者達が大変な目に遭うのは明白だな」

「冢宰殿、貴殿はとんでもない事を言い出すな?それでもこの王国の冢宰か?」

「だが、冢宰殿のその提案も悪くはないな。我々が辞めてしまえば王国が成り立たぬからな」


 4大貴族達は大笑いをしながら答えた。彼らも本気でそんな事を考えていないが、冢宰の提案も一理あると思った。


「ええ、陛下に任じられた正真正銘の冢宰ですよ」


 冢宰がそう答えると、4人が更に笑っていたのだった。

 そして、冢宰は4人を見て思った、もうあのような暗黒な時代は自分達の代では二度と来ないと、イヤ、来る要素が何処にもないと確信した。

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