派閥 2
「とは言え、もしそうならば、まだ未成年者である聖殿の勧誘は褒められた行為ではないな」
陛下は苦言を呈した。
「そうですわね。聖殿はしっかりとしておりますが、それでも、大人の世界を知らない。いいえ、聖殿がその前例を作ってしまえば、今後、未成年者の当主が誕生した時、派閥の引き入れがあるやもしれません」
「ウム。当人達が親に派閥の仕組みを聞いていれば良いが、大概、未成年者が当主に成るのは、大半が両親の急死が主だからな。何も伝えずに亡くなってしまうケースが多いだろう」
陛下がそう言うと王妃様も頷く。
「まあ、私は何処の派閥にも入りませんよ。もし、入るのなら、クレアの派閥か、個人で動いているかのどちらかですよ。私が居た日本の政治を見ていれば、数が多いければ有利に働きますが、ここでは、権力が膨大な人が有利に働きますよね?派閥はその権力を取り込めるで、自分達の発言力を高めるのが目的です」
5大貴族の権力や発言力は絶大だ。私以外の4大貴族達は、政府に自身の派閥を当然持っている。
それに対して弱小派閥に所属している貴族達は何がなんでも私を取り込もうと画策中なのだろう。
しかし、弱小派閥にしか所属が出来ない貴族達は恐らく政治家としては使い物にならないと考えても良さそうだ。そうでなければ、既に4人が取り込んでいるからだ。
「その通りだ。聖殿に接触した者は、そういった目的で接触をした可能性がある」
「そうですわね。なんらかの目的があって聖殿に接触を図ったと思われますわ」
2人はそう言った。
「分かりました。やはり、晩餐会は参加しない方が良いですね」
「ウム。大人が開催する晩餐会には未成年者の聖殿は参加させない方が良いだろう。議会の議題にも上げよう」
陛下は議会に上げ、未成年当主の接触を禁止をする法律を作ろうとしている。
「分かりました。では、失礼致します」
私は陛下達の私室を出て、寮部屋に転移した。
「ただいま」
「おかえり」
「今日は遅かったですね?」
「また、イスレイが駄々をこねたの?」
「いいや、今日は───」
皆に遅かった理由を話した。
「ああ、そうだったのですか」
「お父様達と話していて遅かったのね」
「そういう事よ。がぶり姉ぇ?今まで、晩餐会の誘いってどうしているの?」
秘書のがぶり姉ぇに聞いた。
「はい、火の領では、聖さんの参加は全て断っていますよ。テレサさんとローランさん夫妻は、当人達の判断ですが」
「そうなんだ?道理で何も無かったのね?」
「はい。やはり、貴族達が開く晩餐会はくだらない催し物ですからね。自分が少しでも良い地位に就きたい欲望が丸出しですよ」
「接待かよ」
がぶり姉ぇの説明に更夜がツッコミを入れた。
「そうですね。ある意味では接待ですね。自分の上司を屋敷に呼び、同僚と一緒にご機嫌と取るのですから」
「ま、貴族専用のレストランは少ないし、そこで晩餐会を開くという発想はないよ。晩餐会は、自分の屋敷で開催するものだ。と、思考は固定されているよ」
「そうですね。今日も何処かの邸宅で晩餐会を開催していると思いますよ」
「というより、ほぼ毎日のように何処かで晩餐会は行っているわよ」
エリサが呆れながらもそう言った。
「貴族って、やっぱりお金持ちなのね?」
「そうでもないぞ。私の所は貧乏な貴族だったぞ。けどな、貴族は見栄やプライドの固まりでな。たとえ多額の負債をしても晩餐会を開催していたんだよ」
先生がユカを否定した。
「そうなのですか?けど、どうして多額の負債をしてまで晩餐会をやるのです?」
「貴族同士の繋がりを持ち人脈を築きたいんだよ。少なくとも、私の両親はそう思っていたな。晩餐会を開き、人脈を広げ、あわよくば有力な貴族の傘下に入れるとな。しかしな、現実は甘くはない。貧乏な貴族だというのは、周囲の貴族達にも解っていた。そして、無理な晩餐会の開催をして、他の貴族達はタダ飯にありつけていただけで、両親の要望をのらりくらりと躱していたんだよ。だけどな、両親は、晩餐会を辞めようとしなかった。自分達の接待努力が足りないと勘違いしてな」
「じゃ?結局は?」
「ああ、ただ借金が膨らむ一方だったよ。そして、私は好きでもない金持ちの豪商の息子と政略結婚をさせられたよ。
貴族だった時は全く良い思い出もなかったな。普段の食事は、一般王国民達よりも酷い食事だったし、晩餐会で残った食べ物は全て捨てていたしな。幼い私の口には一切入らなかったな。
この学園に入った時は、寮に居た方がマシな生活を送れてたいからな、長期休日もずっと自分の寮部屋に居てな、家には帰ろうとは思わなかったしな」
「先生にそんな過去が⋯⋯⋯」
ユカがショックを受けていた。
「もう過ぎた事だ。今が一番楽しいぞ」
「⋯⋯⋯そう、今が楽しければそれが一番⋯⋯⋯過去は過去で⋯⋯⋯もう二度と戻らない」
「エルフの言う通りだ」
同じ様な境遇で結婚した事がある者同士、その気持ちが分かるのだろう。
作品が気に入ってくれたならブックマークや下にある★★★★★の評価をお願いします。
リアクションもご自由に押してください。
作者の創作のモチベーションに繋がります。




