帰還報告 3
昼になり、私は王族専用の食堂で、陛下達と昼食を食べる。
昼食の後。
陛下から妖鬼討伐報酬を貰った。
「本来ならば大々的にやるべきだが、事が事だけにな」
「構いませんよ。クレアは私の事を英雄と言いましたが、別に英雄に成るつもりはありませんし、勇者に仕立てた更夜が霞みますよ」
「ああ。そうね⋯⋯⋯」
陛下は判っていたが、クレアは気付いていなかったようだ。
「そういう事だ。どちらにせよ時期が悪過ぎたな」
「そうですね。召喚して間もないし、未成年者ですしね。私が妖鬼を討伐をしたとなれば、勇者不要論者が出て来ます。それだけは避けないと」
将来『勇者は居ても役に立たない』と言われてしまう。
「ウム、勇者不要論が一度出れば、それを消し去るのに大変な労力で時間が掛かるからな」
この世界にSNSが無くとも、悪い噂話がなかなか消えないのが世の常だ。
「それにクレアとの結婚も危うくなりますしね?」
「ウム」
「ゔっ!?ソレは困るわ」
「でしょう?更夜には、いずれ何らかの大きな実績を上げてもらうしかないわね」
「それしかあるまいが、更夜が高等部に成ってからだな。今、焦らせてやらせたら、かえって色々と問題が出て来る」
今の更夜に色々とクエストをやらせれば、世間から未成年者虐待と言われてしまうな。偶に修行という名目でゴブリンクエストをやらせた方が良いな。
それからは、私とクレアはイスレイくんと一緒に過ごし、夕方には寮へ戻った。
「ただいま〜」
そう言って、エリサ共にリビングに入った。
「「おかえりなさい。お姉ぇ」」
「心配したわよ。聖」
舞、更夜、ユカが心配をしてくれた。
「というか、私も連れてて欲しかったですよ」
「⋯⋯⋯私も行きたかった」
「私も!!」
リク、エルフ、マリアの3人がそう言った。3人の成長は著しく、自信を付けていた。特にエルフの成長が凄まじく、魔力量は15億を超えた。ここに初めて来た時より倍以上になっていた。
「仕方ないでしょう?緊急事態だったし、貴女達を連れて行く余裕は無かったのよ」
「そうだ。聖に加えて、お前ら3人まで抜けたら、クラスが大騒ぎになるぞ。お前らの実力はクラスの連中に既にバレているのだからな」
ステラ先生がそう言った。まあ、私達は運動をしても汗一つかかずに息を乱す事も動き回れてしまうから、バレても当たり前だった。
そんな私達が、一斉に休んだらどうなるか?
火の目を見るように明らかだ。
「そうね?聖が早退しただけでもクラスメイトは騒いでいたものね?」
「そうだったわね」
「そして、トドメがエリサだ!!委員長と副委員長が居なくなったからな。また、何処かの国との戦争が始まるのではないか?と、大半が思っていたらしいな。先のグランパニ公国との戦争でもお前達は休んだからな」
先生がそう言った。あの戦争は短期で終わったけど、戦後処理の方が掛かった。
「私は「判っているよ。王女として万が一に備えてだろう。だが、生徒の前で言う訳にもいかんだろう」
「そうですね」
「だから、エリサは急用で休んだと言ったよ。聖とは無関係だとな」
クラスメイトの誤解を解くにはそう言うしかない。
私達はがぶり姉ぇが作った夕飯を食べ、風呂に入ると、ママが入って来た。ママは私達が居ると、安心した表情を見せた。ママはパパに話を聞いて、今日の朝練で先生達に確認取りをしたようだ。
「無事な姿を見てホッとしたわ。お疲れ様」
「ありがとうママ」
私達はお風呂から出て、ママと先生に変化した妖魔道武器を見せた。
「驚いた本当に魔道武器が変化しているわ」
「ああ初めて見る現象だな」
「ええ。ジェーンもおそらく知らない現象よ」
「そうだな。ま、聖が持つ魔道武器は最初から特殊な方向で変化したからな。しかしな、元は不純物が多い魔道鉱石だ。その魔道鉱石がここまで変化するとは予想外だぞ」
「そうね。私が高等部の時に造った魔道武器は既に壊れたわね。それに純度が高い魔道鉱石は値段が高くてなかなか手が出ないわ」
ママが嘆いていた。魔道鉱石の純度が高ければ当たり前だが、良い物が造れるからだ。しかし、純度が高い魔道鉱石はなかなか採れない為に高い値段で取り引きをしているので、一般王国民達には手を出しづらい。
出しづらい要因はもう一つ、純度が高い魔道鉱石はインテリアやコレクションとして貴族達にも人気がある。収集している貴族もいるくらいだ。なので、純度が高い魔道鉱石は一般王国民達には高嶺の花になる。
「そうだな。ま、魔道鉱石が高いのは元々だ。聖が持つ魔道武器が変化したのは、聖が込めた魔力が多かったのが原因かもしれんな」
「そうかもね。魔道鉱石に魔力を最大で込めれば、耐久性や攻撃力が変わってくる事が判って来たわ」
「聖の魔力量は桁が違うから、不純物の魔道鉱石でも、とんでもない物が出来上がったという事だな」
「この魔道武器を見れば、そういう事ね」
と、結論付けた。
「なるほど」
「コレはあくまで私達の結論よ」
「判っているわよ。聞いたのは私だからさ」
私が納得すればそれで良い。
作品が気に入ってくれたならブックマークや下にある★★★★★の評価をお願いします。
リアクションもご自由に押してください。
作者の創作のモチベーションに繋がります。




