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サンダー一家 3

 私達はゲスト室に退出した。サロンに残ったサンダー一家は。


「フレイム卿はとんでもない御仁なようだな?まさかゴブリン系最高位のゴブリンエンペラーをソロで斃せるとはな?俺はそこまでフレイム卿が強いとは思わなかったが、グレーシス。お前は、帝として、フレイム卿を見てきたのであろう?」


「はい。お父様の言う通り、フレイム様はとんでもない御方ですよ。私は、フレイム様とはあまり関わりを持ちたくはありません。今までの私の常識が次々と壊れてしまうからです。フレイム様は、あり得ない魔法の使い方や直ぐに動ける実行行動力など色んな事が瞬時に出来ます。今回の妖鬼の討伐もそうでしょう。本来ならば、大勢が集まって様々な会議をしなければならない所を、陛下の命とは言え、フレイム様はたった御一人で動いて、神様と天使様を合わせてたったの5人で、それも短時間の内に討伐をしてしまいましたわ。コレがどれだけ凄くとんでもない事なのか」


 父親に聞かれて、そう答えた。実際、彼女自身、聖と出会ってから様々な前例がない事を目にして、今まで常識だった事が悉く目の前で覆されていた。自分の中で、常識って何?と、自問自答をしてしまう程だった。


「そうだな。おそらく、俺達だけで妖鬼の討伐を行った場合は年単位で掛かり、被害も想像が付かないかくらいの甚大になるだろうな。それに妖鬼の討伐する前の会議も時間が掛かるな。そして、被害がより拡大する」

「でしょうね。見兼ねた王女様が、私達帝に討伐命令を下すやもしれませんわ」

「その可能性大だな」


 サンダーはため息を吐いた。貴族達は、どんな状況に成ろうとも、自分の命と利益を常に最優先するからだ。おそらく会議は責任のなすりつけ合いの無駄な口論でただ時間を食うだけだ。

 ましてや妖鬼討伐は生きて帰れる保証はどこにもないに等しい。

 サンダーは()()()何度も見て来ていた。


「いずれにせよ。わたくし達はフレイム様に大きな恩を作ったのには変わりはありませんわよ?」


 婦人がそう言った。


「そうだ。フレイム卿には大きな恩が出来てしまった。フレイム卿に何か起きた時は率先して協力をしないといかぬな」

「その通りですわ。フレイム様には、そのくらいに恩がありますわよ」

「ウム。しかしな、政治面は兎も角、軍事面はフレイム卿だけで事が足りそうだな。なんせ神様と天使様がいらっしゃるからな。我々が援軍をする意味があるか?と思ってしまうぞ」

「確かにそうですね。しかし、人間同士の国との戦争に神様と天使様が手を貸すでしょうか?」

「ム?手を貸さないと申すのか?」 


 サンダーは妻に疑問を呈した。普通ならば、人間同士の国同士での戦争でも、自分の主の為に手を貸すのではないのか?と思うのが自然な考えだからだ。


「ええ、今回は妖鬼討伐でしたから、神様と天使様がフレイム様共に動いたと思いますわ。国同士の戦争にはたとえフレイム様が出陣したとしても手を貸さないと、わたくしは思いますわ」


 婦人は自身の考えを述べた。


「そうか?グレーシスはどう思う?」


 サンダーは娘にも訊ねた。


「私もお母様と同じ考えです。先程も言いましたが、今回は、相手が妖鬼、人外でした。妖鬼は人間では到底太刀打ちが出来ません。ですので、陛下もそれが分かって、フレイム様に依頼をしたと思いますわ。それに、人間に手を貸さない理由は、もう一つ、今、我が領は、風、水の領と共に旧グランパニ公国の復興支援の真最中ですが、フレイム様は、今までの復興事業に神様や天使様をお貸ししていません。というより、その話題にも触れようともしません。たとえ、私達が話題にしても、フレイム様は、神様と天使様をお貸しするのはしないと思いますわ」


 グレーシスも自身の考えを述べた。


「ウム。そう言えば陛下も復興事業は、我々3当主が中心となってやるようにとお命じなられただけで、フレイム卿には何もお命じならなかった。ただ地理的に遠いと思っていたが、陛下は、前々からフレイム卿の所には神様と天使様がいらっしゃるのは分かっていたと思うのが自然だ」


「そうですよ。陛下は事前に神様と天使様がフレイム様の所に居ると分かっていましたわ。フレイム様が、貴族になる前から昵懇のご様子でした」


「だろうな。エルフとの事件で、我々の目の前で陛下と王女様は当時、一般王国民だったフレイム卿に依頼をしていた。そうだ。思い出した!!その時には既にフレイム卿はコックの姿だったな」


「えっ?コックの姿?会議中にコック姿で陛下の御前にやって来たのですか?普通は正装ですが?」

「それは前代未聞では?」


 妻と娘が驚いていた。どんな所でも、国王陛下に会う服装は正装が好ましい。それが当たり前で一般常識だ。

 グレーシスの頭の中でガラガラとまた常識が崩れる音がした。


「ウム、普通はそうだがな、あの当時は緊急を要していた為に王女様が強制的に連れて来たのだ。だから、当時のフレイム卿は正装に着替える隙も与えられなくてな。コック姿で我々の前に来たのだ。もちろん、陛下は、それを判っておられて、どの様な服装で来ようとも一切咎めようとはしなかったようでな。陛下が服装の事を言わなければ、我々も言う必要も無いのだがな。しかしな、何を思ったのか、空気を読まない老貴族と若手貴族が、フレイム卿のその服装に文句を付けてな。後にその2人は陛下によって断罪に処された。そして、陛下はこうも仰られた。『フレイム卿に喧嘩を売るな。売ったら最後、破滅をする。たとえ生き延びても、余がその者を成敗致す』とな。実際、貴族に成ったフレイム卿に喧嘩を売った輩連中は全て破滅の道を辿っている。その一族郎党も陛下から国外追放の命が下っている。陛下にとって、フレイム卿は重要な人物なのだろうな」


 サンダーはその当時の状況を混じえながら話した。


「そうですね。クレア王女様やイスレイ王子様もフレイム様を特別な存在の様ですわ。フレイム様は、王女様の名前を呼び捨てにして、王子様を君付けで言っていましたので」


「なんと?そうなのか?」

「まあ!?」


 話しを聞いた夫婦が驚く。どんなに親しくても、その様な呼び方は王家に対して絶対にあり得ない事だからだ。王家にその様な呼び方をしたら、宮殿には二度と入れず。貴族の地位と領地を剥奪されてしまう。


「ええ、王女様も王子様も、構わないと許されておりますし、王子様に至っては、フレイム様をお姉さんと言って慕っておりますわ。お父様もご覧になった事はありませんか?フレイム様と王子様が手を繋いで歩いている場面を?」


 と、聞かれた。


「ム?確かに宮殿で何度か見たことがあるな。フレイム卿はイスレイ王子様の家庭教師をしている関係から、王子様に懐かれていると思っていたが?それ以上の関係だったのか?」

「何に対してそれ以上かは分かりませんが、王子様は、フレイム様の弟と自ら言っておりますし、両陛下も公認していると思われます。クレア王女様に至っては、自分よりもフレイム様の方が懐かれていると、ため息を吐きながら言っておりましたわ」

「最早、昵懇よりも密接の仲ではないか?」


 娘がそう言うとサンダーが疑問を呈した。


「そうですわね?グレーシスの話しを聞く限りとても親密な関係ですわね。でも、これで判ったような気がしますわ。フレイム様を害する事は王家を害するに等しいという事です」


 妻が娘の代わりにそう言うと、


「そうだな。名門と言われた我が一族も、陛下のご意向に逆らえば家はお取り潰しになるだろうが、フレイム卿は、当主をやっている限りフレイム卿の家はそうはならないだろうな」


 サンダーは羨ましながらもそう言ったのだった。

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