転生者 3
「ここまでね。貴方の剣の実力は判ったわ」
ギルドマスターが息も切らさずに言う。
一方、オレは「ゼィーゼィー」と肩で息をしていた。
なんという実力の違いは!?英雄と呼ばれたオレが手も足も出ないなんて⋯⋯⋯。
悔しい気持ちになったと同時にこの世界で英雄に成れるのか?という不安な気持ちも出て来た。
「貴方は魔力量が少ないのに魔法が出来るようだけど、そこの的に向けて撃ってくれない?」
そう言われ、「判りました」と答え、的に向けて魔法を撃った。
「雷牙!!」
初級の雷の呪文を言って放った。オレが撃った雷牙は光線となって的に穴を空け回りが焦げ付いていた。
「なるほどね。貴方が転生者だと良く判ったわ」
「えっ!?」
ギルドマスターの発言に驚く。オレの両親も信じてくれなかったのに⋯⋯⋯。
「何を驚いているの?貴方が言った呪文はこの世界に存在していないわ。だから、貴方が転生者だと思ったのよ」
ギルドマスターはそう言った。
「そうです。オレは前世の記憶を持ってこの世界に生を受けました。前世では、英雄と呼ばれていました。だから、この世界でも英雄に成りたくて、このギルドに」
そう答えた。
「なるほどね。今世も貴方が英雄に成れるかは貴方の努力次第ね。私は何も援助は出来ないわ。出来るのは、貴方のギルド員としての評価だけね」
「えっ?じゃあ?オレをこのギルドに?」
「ええ、加入を許可します。おそらく、他のギルドは貴方の魔力量を見ただけで追い出されてしまうわよ。剣の腕前の方も実戦のテストもしないでホラ吹きと言われるでしょうね?」
「そ、そこまで!?」
ギルドマスターの言葉に驚いた。魔力量が低いだけで追い出されるなんてな。
「ええ、貴方が農家の出だからね。農家の人間が剣術が出来ます。と言っても大半の人はその言葉をうのみはしないわよ。大した実力ではないと判断されるのが主よ。それに貴方が受付の人間に小さな魔法を見せたとしても、魔力量がある人間なら誰だって出来る芸当だからね。もし、やるのなら、先程の魔法を見せないとね」
そう言われた。オレは運が良かったが。
「じゃあ、何故、オレにテストを?」
「独断と偏見は良くないわ。特に貴方の様な、農家の出の人間に対してはね。本人が魔法や剣術が出来ると言えば、テストをしてみるのが当たり前でしょう?それにその人間が将来大物に成った場合は悔しいじゃないの。良く言うでしょう?逃がした獲物は大きい。と」
「確かに前世でもその経験がありました⋯⋯⋯」
思い当たる節はあったな。
「でしょうね。で、貴方のギルドランクはE よ。と、言っても、ここに入るギルド員は、兵士経験者でも全員E ランクからなのよ。嫌なら、違うギルドに行って頂戴ね。私も、本人の意思を尊重するから引き留めはしないわ」
「いいえ、このギルドにお世話になります」
オレは直ぐにギルドマスターに頭を下げた。
おそらく、ギルドマスターが言っている事は真実だろう。違うギルドに行っても魔力量測定で追い出されるのがオチだろうな。
「判りました。貴方が住む処も手配します。と言っても、ギルドが経営している独身寮だけど、自分で住みたい場所が見つけたら、移って貰っても構いません」
「判りました。お願いします」
一番困っている住む場所が、解決した。後は自分自身がこのギルドでどのくらい貢献が出来るかどうかだ。
オレは数日間ギルドで研修をやり、ソロで活動をする事となった。E ランクだから薬草の採取の依頼や人捜しやペット探しが中心だった。しかし、薬草採取は後々役に立つ。途中で怪我をした時に運良く怪我に効く薬草があれば怪我を治せる事が出来るからな。
オレは段々とギルドに慣れていき、先輩に貴族様の事を聞く。オレが入ってから王都で聞いた貴族様の姿が見えないからだ。
「ああ、彼女か?あの子は、まだ高等部に通っているからな。平日は来ないよ。というか、あの子にクエストをやらせたらな、俺達が食っていけないし、あの子には絶対にちょっかいを出すなよ。このギルドに居られなくなるからな」
と、言われた。クエストをやらせないというのはどういう事なんだろうか?まあ、貴族様にちょっかいを出せばとんでもないしっぺ返しが来るのは解っているが?
先輩に質問をしてみたら、貴族様はとんでもない魔法使いだという。なんと、時間停止魔法を使えて、転移魔法も自由に使えるという。その2つの魔法を使えれれば、クエストなんてあっという間に片付いてしまうから、そう滅多にクエストはやらないらしい。もし、貴族様がクエストをやるのなら、誰一人手が出せれない高難易度のクエストだろうと。でも、そんな高難易度のクエストは私営のギルドには依頼は来ない。帝というギルドの最高戦力者達に回す仕事だと先輩が笑いながら言っていた。
では、貴族様は何をしているのか?と、知らないフリをして訊ねたら、やはり、土日に隣りのカフェでコックをしていて、一般客に料理を振る舞っているという。その貴族様が作る料理は、どれも絶品で一度食べてみると良いと言われた。
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