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戦勝記念日 2

 しばらく私達と雑談をしているとアルクェイドもだいぶ緊張の糸がほぐれてきたようで、私達との雑談に花を咲かせていた。


 話の途中で、他の王侯貴族達がクレアに挨拶をしに来てもおかしくないのだが、全く私達に近づく気配はない。


 というのも、私達の会話の邪魔をされたくないので私が近付きたくなくなる魔法を掛けているからだ。


「なんか貴女達は身分を気にしていないようね?ところどころで普通に喋っているわ」


「わたくし達は親友ですからね」


 クレアは直ぐに答えた。


「親友ね?そういえば、王女様の弟さんもフレイム卿に懐いていたわ」


「そうですよ。今ではわたくし以上に懐いておりますよ」


 クレアは溜め息を吐きながら言う。


「そうだったわね。弟さんも私に自己紹介をした時にフレイム卿の事をお姉さんと言い、自分の事をお姉さんの弟と言っていたわね」


「そうですね。フレイム卿が居れば、それが定番の挨拶になっていますよ。知らない人達は目を白黒させ驚くでしょうね」


「そうね。かくいう、私も驚いたわ」


 アルクェイドは笑っていた。


「でも良いわね。ドロドロとした王侯貴族社会の中で真の味方がいて。フレイム卿が王女様の完全な味方なら王女様の将来は万全だわ」


「そうです。フレイム卿がわたくしの味方でいてくれるならば、千人、いいえ、億人力ですね」


 クレアは自信満々に答えた。


「でしょうね。私はフレイム卿とは戦った事はないけど、でも、フレイム卿が魔力を放出した時の魔力量はとんでもなかったわ。更に、私と同じく首席を獲っているからね。文武両道で更に美味しい料理も作れると、まさに万能な人間でしょう。というか、フレイム卿は本当に人間なの?私と同じ人外ではないの?」


 アルクェイドは私に疑いの目をもった。

 

「人間だよ。私は幼い頃からがぶり姉ぇに鍛えられたのよ。というのも、私もがぶり姉ぇのように成りたいという目標を持ってその本人から教わってきたのよ。だから、私も色々と出来るのよ。貴女のように本能だけでは出来ないのよ」


 私はそう反論した。まあ、魂は神だけどね。でも、外見は人間の性能だ


「イヤ、私も本能ではやっていないわよ。私の場合は生まれ持った能力よ」


 逆にアルクェイドも反論を返した。


「うん、世間一般では、そのことを本能というのよ。誰も貴女にやり方を教えていないのに勝手にやってしまっているからね。私の場合はがぶり姉ぇから教わってから初めて出来るようになったのよ。今までの努力の結晶だよ。しかしね、アルクェイドが本能だけで出来るのは、やはり、凡人から見れば、『真の天才』と言う他ないよ」


 私はアルクェイドを褒めた。


「そ、そうかなぁ?」


 アルクェイドは少し照れていた。


「そうだよ」

「フレイム卿がそう言うのならば、貴女の才能はもの凄いのでしょうね。そして、その才能は、凡人にはけして理解出来ない事もあるでしょうが、その才能によって新たなモノを産み出す事も可能でしょうね」

「その可能性もあるわね。人間に役立つモノを産み出す技術は貴女のようなとんでもない才能の持ち主によって産み出される事が多いわ。そして、政治も同じ事だわ」

「そうですね。アルクェイドが我が王国の貴族だったら、わたくしの治世はかなり良くなるはずですが、アルクェイドはイザイヤの貴族ですからね。それが残念ですね」


「えっ?王女様は、私をそこまで買っているの?」


 意外だったのか?凄く驚いていた。


「もちろんですよ。フレイム卿の見る目に間違いがないですからね。それに本能だけで首席になれるなんてあり得ませんよ。フレイム卿ももちろんですが、他の生徒達も勉強や学習をしてテストに臨んでいたと思いますよ。にもかかわらず、貴女が本当に本能のみでテストを受けて、首席を獲ったならば、これはとんでもない出来事ですよ」


「ありがとう。そこまで私を褒めてくれるのは貴女達が初めてだわ。私は出来て当たり前の存在だったから。出来ない事が許されなかったわ」


 寂しそうな表情で言った。


 アルクェイドは、新たなるヴァンパイアの真祖として産まれた(造られた)から、他のヴァンパイア達の前では細やかな失敗も一切許されなかったのだろう。そして、他のヴァンパイア達もアルクェイドという1人のヴァンパイアではなく、新たなる真祖。イヤ、自分達が生まれ変われる装置と見ていたかもしれない。


「それはそれで大変ですね。人間にもかかわらず失敗は誰にもある事ですからね。フレイム卿も数多くの失敗体験があるわよね?」


「もちろん、ありますよ。料理を初めて作ったモノは真っ黒焦げで食べられたモノではなかったですが、がぶり姉ぇは私が初めて作った料理とは呼べないモノを完食して、『初めて作った料理は美味しかったですよ』って、言ってくれた事を今でもはっきりと覚えていますよ。しかし、私がその料理を事前に味見してみると、焦げた味しかなかった。そのような料理とは呼べないモノをがぶり姉ぇは全て食べ切ってしまったわ。そして、どうして、食べてしまったの?と訊けば、『初めて聖さんが作った料理は私にとって記念で、ずっと私の心に残ります。それと味は関係はありません。聖さんが一生懸命に作った料理を、そんな料理を食べなければもったいないですよ』って言ってくれたわ」


「そうだったのね?って?あれ?確か、ガブリエルって、貴女の秘書だった筈。それなのに、その人に鍛えられたって、なんか変じゃない?」


 アルクェイドはそう指摘した。けっこう鋭い質問だわね。


「そんな事は、初対面の人に言わないわよ。初対面の人に1〜10まで全て話すはずはないでしょう?要は今現在の役割や自己紹介だけで良いのだからさ」


「ああ。そうだわね。私も初対面の人に私の過去なんて話題を振らなければ自分から話さないわ」


「でしょう?私は失敗体験で振られたからそう話したのよ。じゃなければ話さないわよ」


「そうですね」


「そうだわね。でさ、もし、私がこの王国の貴族に成りたいと懇願すれば、王国の貴族に成れる?貴女達の方が居心地良さそうだし、何よりも、私が人外と分かってても普通に話してくれているし」


「そうですね。わたくしとしては、有能な貴女が王国の貴族に成ってくれたら良いと思いますが、イザイヤの王やその貴族達が何と言うか?移籍するには、陛下の許可も必要ですので」


「ああそうよね。まあ、私はイザイヤが栄えようが衰退しようがどうでもいいのよね。それに、イザイヤ王は貴女達には逆らえないでしょう?この王国とは敵対をしたくはないと思っているからね」


「だからこその同盟ですがね。そうですね。この話は陛下に進言しますよ。そして、イザイヤ王と交渉次第でしょうね?」


「そうだわね」


 話も終わり、お開きの時間も迫っているので、魔法を解除すると、見計らったように2人の男が私達に近付いて来たのだった。

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