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ゆっくりと休む筈が 8

「どうかな?」


 ママが再度訊ねた。


「そうですね………事務の仕事も大事な仕事ですよね?」


 ユカが確認の為に再度訊ねた。


「そうよ。裏方になるけどね。クエストに行くギルド員達のサポートも大事な仕事よ。ユカは、クエストも事務の仕事も出来そうと思っているけどね、敢えて事務の仕事を提案したのよ」


 ユカは日本に居た時は気合道を習っていたので、護身術を身に着けている。そして、この世界に来て、魔力を会得したので、ママ達に訓練を受けて魔法もある程度は使えるようになって来ている。そして、気合道と魔力を合わさった護身術を独自に開発をしていた。


「分かりました。事務仕事をやってみます」


「宜しくね」


「はい、宜しくお願いします」


 ユカはギルドでは事務仕事に決まったが、クエストも行っても良いとママが言っていた。


 昼食が終わり。


「さてと、私は舞と更夜を連れて魔物退治に出掛けるわ」


 学園祭の時からの約束を果たす。


「魔物退治。どんな魔物をやるの?」


 ママが訊いてきた。


「ゴブリン討伐が一般的かな。スライムは一番弱いけど倒した後が厄介だしね」


「確かにね」


「王都近郊の森で野良のゴブリンを数匹片付けてくるわ」


「分かったわ。ギルドで受付けをしてね。そういった依頼があると思うから」


「分かったわ」


 私と舞達はギルドに向かい、ギルドの依頼を物色すると、他のギルド員達が青ざめていた。


「ああ、ゴブリン討伐の依頼を物色しているだけよ。勇者達に魔物退治を教えるのが目的だから気にしないように」


 安心させるように言うと、ギルド員達はホッとため息を吐いていた。


「お姉ぇ?どれだけ荒らしたの?」


「荒らしてはいないわよ。この人達は私の実力を知っているからね。私が本気になれば、今からでもここに貼り出してあるクエスト全てを掻っ攫って、やってしまうではないかと思っているのよ。そうしたら、他の人達の生活費が稼られなくなるからね」


「ああ、なるほどね~?」


「でもさ、午後まで残っている依頼票はややこしいモノや簡単な依頼ばかりだぜ?別にお姉ぇが全てやっても問題ないような?」


「明日もあるでしょう?それにややこしい依頼は今からだと到底時間が無いし、簡単な依頼は小遣い稼ぎでやっている人達もいるのよ。それに日にちもまだ余裕があるでしょう」


「なるほど、その考えが及ばなかった」


「あっ!あったわ。ゴブリン討伐の依頼票が」


「これだな。村に出現したゴブリン達を討伐して欲しい。か。結構安い討伐料だな。それにここから結構距離もあるな。これでは他のギルド員達は食いつかない依頼内容だな」


 舞が見つけた依頼票は誰がやっても赤字を出す討伐の依頼内容だった。


「そうなの?」


「ああ、移動費とその間の生活費、武具の維持費を考えると赤字な依頼料だよ。コレ、依頼するギルドを間違っているわ。もっとこの村に近いギルドに依頼しないといけないわ」


 この依頼はおそらく間違って配布された依頼票だ。私はその依頼票を持って受付けに行く。


「コレ、間違って配布された依頼票だ。こんな依頼場所に行けば皆が赤字だよ」


「あっ!?そうですね。この依頼票はこちらで預かりますね」


「ああ、宜しく。でさ、近郊でゴブリン討伐の依頼無い?」


「ゴブリン討伐の依頼ですか?少し待ってて下さい……………えーっと………………ああ、ありますよ。王都郊外の森でゴブリン討伐をする依頼がありますね。依頼主は王国ですね。依頼内容は十体以上のゴブリンの駆除ですね」


「じゃあ、それをお願いね」


「分かりましたが、お一人でやるのですか?」


「いいや、こいつらとやるよ」


「えっ!?この人達はギルドに加入してはいませんが?大丈夫なのですか?」


 受付けの女性は更夜達を見て驚いている。


「ええ、だからこそ、私が居るのよ。火の当主として勇者達にゴブリン、魔物の討伐の経験をさせないといけないのよ。未成年者とかギルドの基準に足していないとかは当てはまらないし、既にギルドマスターにも許可を得ているわ」


「分かりました。これで依頼を承認しました。討伐の証明としてゴブリンの耳を削いて持って来て下さい。後、魔核を採って来るのならば、安いですがギルドで換金しますので」


「分かったわ。どうもありがとう。お前達行くわよ」


「「うん!」」


 私達はギルドを後にした。


「本当に大丈夫なのかしら………」


 受付けの女性は心配していた。


「大丈夫よ」


「あっ!マスター」


「あの子達の実力はとんでもないからね」


「火の当主様はとんでもないと分かっていますが、ゴブリンとはいえ未成年者の子共達ですよ………?」


「聖がヤバいと思えば即逃げるわよ。何よりも命が大事なのは知っているからね。ま、聖にヤバいと思わせる出来事はそうそう無いと思うけどね」


「そうですか」


 〜王都郊外の森〜


 ギルドを出てから転移してゴブリンが居る森にやって来た。


「王都の郊外にこんな森があるのか?」


「知らなかったわ」


 2人は王都から出た事がないので仕方ない。


「王都と言っても周りは手付かずで自然が沢山残っているからな。だからこそ、野生動物や魔物が王都の郊外の森に居るんだよ」


「そうなると旅も大変だな」


「そうね。旅が団体行動になるのも分かるわ。一般人がソロで旅するのが危険な行為のも分かったわ」


「そういう事だ。舗装した道でも魔物が出るからな。サトルもそう言っているだろう?」


「そうね。でも、お兄ぃは練習相手にもならないと言っていたわ」


「サトルも朝練で強くなってきているからな。それはお前達にも言える事だがな」


「そうだよな?あんな朝練をやっているのだからな強くなっていなければ詐欺だ」


「そうね。あたし達が強くなっていなければなんの為の朝練か判らないわ」


「さて、お喋りはここまでだ。ゴブリン達が来るぞ」


 私が言うと、武器を持ったゴブリン達が茂みから現れた。

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