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ゆっくりと休む筈が 5

「これで分かったか?私がお前達の宗教に入らない理由が」


「うっ!?しかしながら、前の教皇が魔族だなんて、私はそんな話は聴いておりません!私が知っている情報は、心不全で亡くなったとしか…………それに同じく、前の教団幹部達は不正が発覚して国外追放としか聴いておりませんが?」


「それはそうだ。そんな事を教皇や幹部に成る前のお前達に話せるか!!話したらどうなると思う?教皇と成った今のお前なら分かる筈だ!」


 私はそう言った。


「あっ!?」


 どうやら、理解したようだ。


「分かったか?私達がお前達に素直に話したら、王国民達にも真実が露呈する危険性がある!そして王国民達は暴動を起こして本山に襲撃をする可能性があるんだ。私にしたら、こんな腐った教団は完全に潰れた方が良かったが、しかしな、そんな事情も知らない罪が無い神父やシスター達が大勢地方に居ると思えば忍びないし、こんな腐った宗教でも心の拠り所にしている民達が居るのも事実だ」


「た、確かに、その話が王国民達に漏れ出ていたら、教団がなくなってしまう可能性があります………」


「そういう事だ。教皇?お前の役目は他の教団幹部達が良からぬ事をしないように事前に止める事と、あれこれと政治に口出しはせぬ事と王家の言葉に素直に従う事だ。さもなくば、余が神聖王様の逆鱗を触れる前に教団の解体命令を出す事になるだろう。それだけ、今の教団は解体の危機に陥っていると認識しろ!!」


「は、はい。分かりました」


 陛下に言われ、教皇はコトの重大さに気付き素直に頷き返事をした。

 そして、教皇は1人で来たようで、今日は宮殿に泊まる事になった。

 ついでに私もそうなった。というか、イスレイくんの要望が大きいし、陛下も泊まるようにと言われてしまったので、断る事も出来なかった。

 私が「分かりました」と言うとイスレイくんが喜んでいた。そして、ミカ姉ぇに念話でその主旨を話した。


 教皇はメイドの案内で来客用の食堂に行くだろう。そして、陛下も教皇の食事に付き合わないといけないだろうか?そこら辺りは陛下の裁量だけどね。


「ヤレヤレ、なにもこんな時間に来なくてもいいような内容でしたな?」


 黙ってずっと聞いていた親衛隊長が呆れ顔で言った。


「そうだな。しかも護衛も付けずに単独で来るとはな。いい度胸か?怖い者知らずか?」


「そうですな。では、これで、私も失礼致します」


 親衛隊長が私達に挨拶をする。


「ウム、ご苦労」

「お疲れ様でした」


 私達がそう返した。親衛隊長は謁見の間を退出した。


「さて、私と王妃は教皇の相手をしないといけない。聖殿はイスレイと一緒に食事をして欲しいのだが」


「ええ、良いですよ」

「うん!お姉さんと一緒に食べるー!そして、お姉さんと一緒に寝る!」


 イスレイくんは元気よくそう言った。


「では、聖殿宜しくお願いします」


「はい」


 私達は陛下と別れ、王家専用の食堂に行き食事をしたが、イレギュラーにも係わらず、私や教皇の食事の分も陛下達と同じ物が良く出て来たなと感心してしまった。


 お茶を飲み休暇していると、


「お姉さん、お風呂に入ろうよ」


 そう言ってきた。


「そうね。行きましょうか?」


「うん!」


 私がそう言うと、イスレイくんは喜んで返事をしていた。

 とはいえ、身体は授業が終わった時に洗ったからただお風呂に入るだけなのだけどね。


 お湯に浸かっていると、イスレイくんはいつものように後頭部を私の胸に乗せていた。そして、


「お姉さんと一緒に入るのは気持ちいいから好き。ずっと一緒に入っていたいな〜」


「それは無理よ」


「えーっ!!どうして〜?」


「キミが男の子だからね。今は良いけど、後、2,3年程で一緒に入れなくなるわよ」


「嫌だ!お姉さんと一緒に入れなくなるは嫌だ!」


「そうね。私もイスレイくんと一緒に入れなくなるは寂しいけどね、これは仕方ない事なのよ。イスレイくんが大きくなれば段々と分かるようになるわ」


「…………じゃあ、ボクは大きくならない!このままで居る!!そうすればお姉さんと一緒にずっと入れるよね?」


「無理なのよ。私もイスレイくんも歳を取るわ。大きくなるというのは歳を取るという事なのよ。仮にイスレイくんがこのままの身長でいても歳を取っているから、一緒に入れなくなるのよ。それに段々と一緒に入っているのが恥ずかしくなっていくのよ。私もそういう経験をしたわ。やはり、ある程度大きくなったら、がぶり姉ぇと一緒に入っているのが急に恥ずかしくなったのよ。今まではなんとも感じなかったけど、ある日突然それがやって来たのよ。そして、その日以降、私はがぶり姉ぇと一緒に入らなくなったわ」


 がぶり姉ぇ曰く、私が一歩大人に近付いた証拠だと笑いながら話してくれたが、寂しい想いでもあるとも言っていた。私が女になり、初めてがぶり姉ぇと一緒に入った日は恥ずかし反面嬉しかった。再び、がぶり姉ぇとまた一緒にお風呂に入れると。


「そうなの?ボクはそうならないよ」


 自信満々なイスレイくん。


「今はそう思っても、いずれは、私と一緒に入るのが恥ずかしくなるわ。その日が来るまでは一緒に入ってあげるわ」


 多分、他のメンバーは、大きくなったイスレイくんとは一緒に入るのは躊躇うわね。それを見れば、やっぱり、私と一緒に入るのは無理と悟ると思う。


「うん!ボク、絶対に恥ずかしがらずにずっとお姉さんと一緒に入る」


 と、イスレイくんは変な思いを新たにしていた。

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