ゆっくりと休む筈が 1
〜夕食〜
「えっ!?今朝はそんな事件が起きていたの!?」
私達が今朝の事件を話すと、事情を知らない皆が驚いていた。
「そうですよ。王妃様も困惑していましたよ」
ミカ姉ぇがそう言った。確かに母さんももの凄く困惑していたな。
「はぁー。それにしてもね。新人とか言う暗部の少女?何故、聖の顔を知らないのよ!!」
エリサが愚痴る。
「情報共有されていなかったのが原因だね。新人の少女が悪いのではなく、新人に情報共有をしなかったその上司が一番悪いのよ。暗部の長が怒っていたからね。処分をすると言っていたわ。運が良ければ、一生牢獄の中だね」
「そうね。暗部は王国の機密情報を持っているから、ドジれば死は避けられないわね。その上司も職務怠慢でクビは確定で、もう二度と日を見る事がないわね。そう思うと新人の少女は運が良い方だわ」
「そ、そんなに暗部という所は厳しい職場なの?」
「そうよ。さっき言ったけど、王国の機密情報を持っている暗部の人間は途中でクビになると、最悪の場合のその場で死んで貰うのよ。敵国に王国の機密情報を漏らす訳にはいかないのよ。クビとなった人間を放置すれば、ここに住んでいる全ての王国民達の命や財産が危うくなってしまうのよ。だから、王国民達を守る為にクビとなった元暗部には死んで貰うか、一生牢獄に居て貰うかしかないのよ。因みに引退した暗部達は何処の隠れ里で余生を暮らして貰っているわ。それだけ、国家機密情報は知ると怖いのよ。その点、新人の人は運が良いとしか言えないわね?」
ユカの質問にエリサが答えた。
「まるで暗部は日本でいうと昔の忍者だわ」
「そうだよ。暗部は忍者だよ。実際にいろんな国に忍び込んでその国の情報を集めているよ。私の領にも暗部の組織があるわ」
「そうなの!?」
「そうだよ。各領には暗部の組織が存在しているわよ。私もその組織の長しか知らないし、何人で組織を構成をしているのかも判らないよ。しかも、私の領では非公式の組織扱いとなっているのよ」
隠密活動をしている組織だ。公式には表記にはしていない。
「知らなかったわ…………」
「そうだよ。そんな組織は知らなくても良いのよ」
「そうですね。ユカさん達は知らなくても良い組織ですよ」
「そういう事ですよ。この話は私達王家や5大貴族が主に共有する情報ですので知らなくても良いのですよ」
「なんかお姉ぇ達と疎外感があるわ」
「そうだね。お姉ちゃん達が違う世界の住人みたいだわ」
「はい。というか、私も知りませんが?良いのでしょうか?」
「リクは今は知らなくても良いのよ。そのうちに知るようになるわよ。でも、こんな機密情報は知らない方が楽だわよ?」
「確かにね。一個の機密情報を知っただけでも、関係者以外に喋られずに墓まで持って行くからね」
「そうよね」
「でも、私達は死んでも、神になっているからね。結局は永久に機密情報を抱えて生きて行かないといけなくなるわ」
『あっ!?』
全員が声を上げた。
「そうだったわ…………でも、神様になったら、それらはもう関係はないような………?」
「そうでもないでしょう。神になっても知り得た機密情報は喋らない方が良いのよ。それにさ、父さんのあの黒歴史もある意味、神界の機密情報だよ」
「ああっ」
「そうよね〜」
「あの黒歴史が世間一般に知られたら…………」
「一気に神聖王様の威光や尊厳が喪われてしまうわね……あの話はお父様達にも話していない、いいえ、話せられないわ」
「でしょうね。もしその事を知ってしまったらかなりのショックを受けたでしょうね?」
「ええ………気絶はしないでしょうが、ショックは受けるわね。神聖王様は美化されているからね」
「まあ、宗教は崇めている神をどうしても美化されているからね。その事態はただの親父だとしてもね」
たとえ、ソファで寝そべって尻をぼりぼりと掻いていても、宗教ではそれを美化されてしまうから恐ろしい。
「そうね………そうなるわね」
「あの話も機密情報になるのね?不思議だわ」
ユカが言うと、マリア達が頷いた。
「そうだね。この王国が父さんを祀っていなければ、ただの笑い話で済むけど、そうじゃないからね。人の捉え方によってはただの笑い話では済まなくなるのよ」
「そうね。過去の話だけど、あの話を知ったら大騒ぎになる可能性だってあるわね。ほら、神聖王様に仕えているのは、歴代の教皇達だと今まではそう信じられていたのだけど、ミカエル様達によって否定された事も真実を知った貴族達の間では大騒ぎになっていたのよ。あの話を知ったら更に大騒ぎになるかもしれないわ」
「そうだね。ま、皆が知った途端に機密情報は機密情報では無くなってしまうけどね。その機密情報をバラした暗部以外の人間はどうしてもその責任を取らないといけなくなるわ。それがどのような責任の取らせ方かが判らないのが怖いわね」
「そうね。その場合はお父様達が集まって会議を開いて決まると思うけどね」
「まあ、妥当だね」
来週から戦争祝勝記念日で休みになる。
その行事に出ないといけないが、休める時には休まなとね。
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