王女様からの依頼9
「今日はかなり、話し込んでしまいましたね?これでお開きにしましょうか」
そうエリサが言った。
「分かりました、解散に致しましょう」
学園長がそう言った。
「では、私の部屋でお食事を」
「それはありがたいが、ちと、反省をしなければならぬ2人がおってのう?また、今度の機会に」
学園長はそう言うと、ママとステラ先生を睨み付ける。帝をバラしたペナルティーのようだ。
「うっ!?この年になってもお説教とは………」
「本を正せばステラがいけないのよ?という訳だから、マリアと聖は王女様に」
ステラ先生は落ち込み、ママは既に諦めていた。
「分かったわ。あーあ、お姉ちゃんのハンバーグ食べ損なったわ」
「また作ってあげるよ」
「うん!」
「えっ?ハンバーグ?」
「私達の夕食の話だよ」
エリサの疑問にマリアが答えた。そして、俺達はエリサの部屋に行くこととなった。
その後、ママとステラ先生は学園長とジェーン先生にこってりと絞られていた。
俺達はエリサの部屋に着くと、扉の装飾が豪華だった。明らかに他の部屋とはレベルが違うとこれを見ただけで判る。
「どうぞ」
バーストさんはその扉を開けた。
扉が開くと、執事やメイド達が勢揃いしていて一斉に『お帰りなさいませお嬢様』と言った。エリサ『ただいま帰りました。2人はわたくしのご友人です』と、執事やメイド達に言うと『いらっしゃいませ、ご友人様方』と一斉に言うから、マリアがビクッとしていた。
俺達が通されたのは、客室だったが、直ぐにエリサの部屋に通された。どうやら、エリサがドレスを着替える為に客室に通されただけのようだ。
「お待たせ」
エリサは私服のドレスに着替えていた。
「やはり、王女様だわ。そのドレスも似合っているよ」
「本当だ」
「ありがとう。聖も合いそうよ」
「ありがとう。私はなんでも合うよ。昨日、母親にいろんな服やドレスを着替えされられたからさ。で、写真をみたら、どの服やドレスも似合っていたよ」
ボツとされていた服やドレスを着たが、意外と似合っていたので母さんが喜んで、また、服の企画部に写真ごと持ち込むらしいが、俺が着たから似合っているだけなような気がするが?
「そうなの?私、見てみたかったわ」
マリアがガッカリしていた。
うん、見ない方が良いよ。最終的には母さんと姉達が揃って鼻血を出していたからね?
そして、食事の準備が出来たので食堂に行く。
やはり、食堂も広い部屋だった。テーブルも長方形で長い。何十人と座れる。
一番奥にエリサが座り、左右に俺達が座った。
「ねぇ?エリサはいつも1人でここで食べているの?」
「ええ、そうよ」
マリアの質問にエリサが答えた。
「寂しくはないの?」
「そうね。結構寂しいわ。だからこそ、貴女達を招待したのよ」
「なるほどね?」
執事やメイド達が食事を運んで来た。
俺達の目の前に料理が次々と並ぶ。
「凄い!豪華な料理だわ」
マリアは料理を見て喜ぶ。
「そうだね」
と、俺は答えたが、この料理の味はそんなに期待はしていなかった。だって、昨日、神界で母さんやがぶり姉ぇ達と一緒に食べた料理の匂いが同じだから。昨日の神界の料理は期待はしていたのだけど、食べた途端あまりにも期待外れでガッカリした。だから普通で美味しくも不味くも無いと答えた。
そして、俺達はその料理を食べるが、一定の味で作り手はただ作っているだけに感じる料理だった。予想通りの味だった。
貴族の食事は黙って食べる。食事中は話さないのがマナーだ。話すのは食事が終わった後だ。
そして、全ての食事が終わり、エリサの部屋に行く。
「どうだった?」
「うん、凄く美味しかったわ」
「私は普通だったよ。昨日の神界で食べた料理と同レベルの味だったよ」
俺はそう答えた。
「えっ?そうなの?それって凄い事なの?」
「イヤ、旨くも不味くも無いって事だよ。ま、レストランをやれば儲かる味だったよ」
「えっ?言っている意味が判らないわ?」
「エリサを担当している料理人は家庭料理が向かない料理人という意味だよ。レストランで今日食べた料理を出せば、美味いと感じるが、個人で家庭で食べる料理となるとその料理に疑問が残ると意味だよ」
「ああ、なるほどね?お姉ちゃんが言った事が分かったわ」
「えっ?マリア、分かったの?」
「うん、ウチもカフェをやっているからね。どうしても、皆一定の味になってさ、カフェの料理を日替わりで食べてもどうしても飽きて来るのよ。でも、家庭料理は日によって味が微妙に違うからね。同じ料理でも飽きて来ない料理があるのよ。特にお姉ちゃんの料理は家庭料理だよ。いつも料理に工夫しているからさ、食べていても飽きないんだよね」
「そうだったの?」
「そうだよ。さっき食べた料理は私は美味しかったわ。だけどね。お姉ちゃんが言ったような料理だったら、ずっと毎日食べていれば、どんな豪華な料理でもやっぱり飽きてくるわ」
「そうなの?私はそんな事を考えていなかったわ。毎日食べているからね」
「それは長い間食べ続けていたその料理の味に馴れてしまったからだよ。だから、気付かないのさ。で、料理人も雇われているからその味をずっと継続していて、新たな味の料理を出さないか、出せれないか………どちらかと思うよ?」
「えっ?新たな味?」
「そう、例えば、エリサが、家庭料理を食べたいと料理担当に言う。ところが、王家の規定で作るのは禁止されている場合さ。王家は一般家庭料理を出さなくても良いという規定や味の固定だよ」
「あっ!?」
エリサは声を上げた。
「思い当たる事があるの?」
「ええ、私が初等部の頃に一般の料理が食べたいと言った事があったのだけどね。ダメですと言われて断れた事があったのよ。その時は理由も聞かなかったけど、子供ながらにダメなんだって、妙に納得しちゃってね?それ以来言ったことがなかったわ」
「そう言えばさ、エリサはずっと私と一緒に食堂で食べていたでしょう?あれって一般料理じゃないの?」
「実はね。あれもここで作った料理だったのよ。私が食堂に来ると私専用の料理が配膳していたのよ。まあ、貧乏貴族の設定だったからね。豪華に見えないようにしていたのだけどね?」
「そうだったの?知らなかったわ」
「ふーん?じゃあ、エリサが一般料理を食べたのは、昨日、私が作ったお弁当だったのね?」
「あっ!そうね。そうなるわね」




