休日 9
「これにて本日の大道芸は終了と致します。皆様、ご観覧誠にありがとうございました。本来ならば、ここで、団員達が皆様の元にお捻りをちょうだいする所ですが、最後の大道芸はご観覧の皆様に危険な目に合わせてしてしまい大変申し訳ございませんでした。よって、本日は無料とし、これで、ご勘弁をいただきますようお願い申し上げます」
ダンさんがそう言ってから、深々と頭を下げた。そして、私達も頭を下げる。ステージ上に立っている限り、私もここの団員の一員だ。
そして、一部が残り、タダというので文句も出ずに皆家路へと帰って行った。
「メアリー」
ダンさんの声が厳しい。
「はい………」
「今日の踊りはなんだ?今日の踊りとナイフ芸は客達に見せれる芸ではないぞ!!しかも、ヤジリと聖様が機転を利かせて結界を張ってくれたから、客達に何事もなかったから良かったものの。メインを飾るのが嫌ならそう言え!」
「………………」
失態を犯したメアリーがしょんぼりしていた。
「聖様、せっかく助っ人で出演してくれたのにこんな事態になってしまい申し訳ございませんでした!!少ないですが、出演料はお納め下さい。ではないとわたくしの気持ちがおさまりません」
と、ダンさんは私に頭を下げてそう言った。
こう言う事を言われてしまうと、私も断る事が出来なくなる。
「分かりました。出演料はお受けします」
私は素直に出演料を受け取った。
「ありがとうございます」
「いいえ、メアリーの事はそんなに怒らないで下さいね。ミスは誰でも起こる事だし、どんなに安全を考慮をしたとしても予期せぬ事故は起こる可能性があります。だから、今後は、ステージと観客の間に防御結界を張った方が良いでしょう」
「そうですね。ヤジリ、次回から頼む」
「ああ、任せておけ」
「…………要らない……結界なんて要らない!!私はもうスミらないから要らない!!」
メアリーはそう言ったが、
「そうは言うがな。念の為だ。念の為に結界を張るんだよ。俺はメアリーに人殺しをさせたくないからな」
サトルはそう言って、メアリーの頭をなでた。
「ッ!?」
メアリーにとっては不意打ちだったのか。顔を真っ赤にして、
「あ、頭を撫でないでよ!私、子供じゃないのよ!!」
言葉では嫌がっているが、顔は更に赤くなっていた。
「良いなぁ〜あたしもお兄ぃに頭を撫で撫でして貰いたいなぁ〜ねぇ?ユカ姉ぇ」
「えっ!?え、ええ…………そ、そうね」
舞がそんな事を言うとユカは照れながらも頷いた。
知らないうちに皆が来たようだ。
「ああ来たのか」
「うん。だって、お姉ちゃん遅いだもん。心配して来たのよ」
マリアが代表して言う。
「皆様、ここまで来てもらいましたのに、今回のメインの芸でお見苦しい所をお見せして申し訳ございませんでした」
ダンさんが頭が下げ謝罪をした。
「でも、全体的に良かったわよ。ね?」
「うん。あたし達は初めて大道芸を観たわ。改めて大道芸人は凄いと思ったわ。それとお金を取らなくても大丈夫なの?」
舞が心配していた。確かに、客達からお金を貰わないとダンさん達は生活が出来なくなるが。
「アハハ。こういう事態に備えてお金は貯蓄はしてありますので一度くらいは大丈夫ですよ」
「そうなのね」
「はい」
「おじさん。おじさん達の芸、面白かったー。また、観に来るからね」
「うん、聖お姉ちゃんにまた連れて来て貰う」
と、子供達はワイワイと言って無邪気にはしゃいでいた。
「ありがとうございます」
ダンさんは子供達に頭を下げた。今回はメアリーが失態を犯したけど、子供達の言葉に救われたようだ。
「山瀬君、山瀬さん。2人共凄い芸だったわ。特に山瀬さんの水芸は昨日の(お風呂場で演った)水芸とは違っていたわね?」
「ええ、違ったやり方の水芸を見せたくて演りました。それに先生のはなむけの水芸です。私は大道芸はそう滅多に人前では披露しませんので」
「そうだったのね?山瀬さん、ありがとうね。良い思い出になったわ」
「いいえ」
「山瀬君、山瀬さん、柏原さん、伊勢君。今日は本当にありがとう。私は、担任教師としては良くなかったかもしれないけど、あなた達の担任教師をやれて良かったと思っています。この異世界で頑張っていきましょうね。本当にありがとう。あなた達に再会が出来て嬉しかったわ」
先生の目に涙が浮かぶ。
「私も先生に再会が出来て嬉しかったです」
「俺もです。それに、全てが噓だっだと判ってわだかまりが取れました」
と、ユカとリョウタが言った。
「それじゃ、皆、元気でね」
『はい』
「先生もお達者で、何かあった場合は遠慮なく連絡を下さい。出来る限り行きますので」
「ありがとう、山瀬さん」
そう言って、先生は教会へと帰って行った。
そして、私達も大道芸人達に挨拶をして帰る。
「先生はここで暮らしていくんだな。俺達が住んでいる王都よりも不便そうだな」
「そうだな。ま、住めば都ということわざがあるからな、どうにか工夫して暮らしていっているのだろうよ」
「そうだな」
「伊勢君、私達は恵まれているわよ。聖達が居るのだからね?」
「そうだなぁ。聖がこの異世界に居なかったら、少なくとも俺は野垂れ死になっていたな」
「私だって、どうなっていたか分からないわ。でも、現実は聖達が居るから私達はこうしてまともな生活が出来ているわ」
「ああそうだ」
「そういう事なら、私達の村もそうですよ。聖様達が居てくれたおかげで村は徐々に豊かさを増して来ています。それに今回もこうやって、私達は村の外に出られて色んな事を経験が出来ています。聖様には感謝の言葉しかありません」
と、ラキさんが言うと、村人達は頷いた。
「私がただきっかけを与えたに過ぎないわよ。それを活かすもの殺すものあなた達次第だった事よ。そして、活かされて上手くいっているのよ。私は村にはそんなに関与していないわよ」
私は提案をし、実行をしただけで、後はラキさん達村人達に任せているだけだ。そして、週に一度成果を確認するだけで、口出しはしていない。
「いいえ、聖様が裏で私達の村を良くしようと尽力をしている事は知っています。ではないと、寂れた村に人々はやって来ません」
そうラキさんが言うと、村人達も『その通りです』と言い、子供達も『聖お姉ちゃんのおかげで食べ物が毎日食べられるようになった』と言ってくれた。
「聖?貴女が動き回っているのはここに居る皆が知っているわよ。貴女がどんなに自分を下げようとも、私達の評価は変わらないわよ」
「そう、ありがとうね」
私は素直に礼を言う。
そして、村人達を村に帰し、リョウタをカフェに帰し、イスレイくんも宮殿に帰した。そして、陛下達と話した。クレアが、
「いいな。私も行けば良かったわ」
と、愚痴っていたが、クレアは今回、御公務があったので仕方なかった。
私達は、陛下達に挨拶をしてから、エリサを連れて寮へと帰って行った。
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