休日 4
私は店を出て、クローズの看板を掛けて、本日から閉店の知らせの張り紙を貼った。この店の営業はオーナーが変わらない限りもう出来ないだろうな。
「お姉ちゃん?」
「ああ、大丈夫だよ。で?シュークリームはどうだった?」
マリアは私の事を心配してくれたが、本当に私は大丈夫だ。私は子供達にシュークリームの味の感想を聞いた。
「うん、美味しかったよ…………」
「でもね、聖お姉ちゃん達の店の雰囲気が違っていて暗かったから美味しかったけど………」
と、もごもごしてその後の適切な言葉が出て来ないようだ。
「もしかして、美味しくはなかった?」
と、私が言うと、この子は頷いた。他の子供達も同じように頷いた美味しかったけど美味しくはなかった。子供達には、なんとなくかもしれないが現場の雰囲気が解っていたようだ。それに影響して美味しい筈のシュークリームが美味しくなく感じてしまったようだ。
「そうか。それは悪い事をしたわ。今度は私が作ってあげるよ」
「本当!?」
「ええ」
『やったー!!』
子供達が喜んでいた。
「それじゃ、気を取り直して大道芸人達の所に行くわよ」
私が言うと子供達が更に喜んだ。
そして、転移魔法で、川田先生が住んでいる町に飛んだ。
町の検問所で、私の身分証明書を出す。ま、私1人で大丈夫でしょう。
「えっ!?貴女様が火のご当主様!?」
私の身分証明書を見た兵士が当たり前のようにびっくりして、私の顔と身分証明書を何度も見比べていた。
「そうですよ。この町に用事がありましてね。ああ、この者達は私のお付きの者達ですので、私が身分は保証しますよ」
「はあ、そうですか……………分かりました。どうぞお通り下さい」
「どうもありがとう。皆、行くわよ」
私達は検問所を抜けて町に入った。
「思えば、俺初めて王都以外の町に来たな」
「あっ!?あたし達もだわ」
「そうだな」
「言われてみればこれが初めてだわ」
と、リョウタ、舞、更夜、ユカが言った。この4人はずっと王都から出たことがなかった。
「そう言えばそうだったな。ま、今後、色んな町へと行く機会があるでしょうよ」
私はそう言うと、
「そうよね」
と、ユカが答えた。
私を先頭に町中を歩く、町は王都ほど賑わってはいなかったが、治安は良さそうで平和そのものだ。
更夜が。
「所でお姉ぇ?兄貴の場所って判るのか?俺、判らずにお姉ぇに付いて来ているけど?」
「サトルから発する魔力や気で判るよ。朝練で一緒にやっているだろう?魔力や気は個人個人で違うからな。母さんなんか私の魔力を察知して転移をしているのだからな」
「マジか!?」
「悟空の瞬間移動かよ!?」
更夜とリョウタが私の言葉に驚く。
「自由自在に転移魔法が出来れば意外と難しくはないぞ。転移魔法の本質はイメージだからな」
「そうなのかよ?」
「そう言えば、がぶり姉ぇもそのような事を言っていたな」
「転移魔法って一体?実は簡単な魔法なのか?」
リョウタが質問をした。
「いいや超難しい魔法だな。移動に失敗すれば、身体が切断するし、イメージを失敗すれば木や岩に入り込んで同化して即死するぞ。それに転移する人数が増えれば更に難易度が上がるぞ」
私はそう言うと、2人は青ざめていた。
「ま、私は失敗はないよ。想像魔法が補助役となっているし、母さんが私の転移魔法を安定してくれたからな」
「そうなんだ?じゃあ俺達も?」
「望めばおそらくな?だが、まだ早い、高等部に入ってからでも遅くはないし、お前はまだ魔力が未熟だよ」
「そうだな…………いずれは俺も転移魔法が出来るようになれるよな?」
「ああ、だからこそ、朝練をやっているのだろう?」
「そうだな。お姉ぇ達が指導しているから俺達も転移魔法をマスター出来るな」
「そういう事だ。さて、着いたわよ」
大道芸人達が居る場所まで辿り着いた。そして、大道芸人達が出迎えて来てくれた。
「姉貴来たか。って?リョウタも一緒か?」
サトルはリョウタがいる事に驚いていた。
「ああ、聖から川田先生がここに来ていると聞いてな。それで、聖から事情を聞いてオレの勘違いしてたのを謝罪をしたくてな」
「そうか………」
サトルはあの頃の事を思い出したのか複雑な表情をしていた。
「サトル」
「ん?なんだ?」
私はあのカフェが潰れたのを伝える。
「……………そうか……………そいつは残念だな。だが、姉貴が来るまで姉貴の名前を使うとはいい度胸だったな?」
「そうだな。これから、リョウタと一緒に先生が居る教会に行ってくるよ。子供達を頼む」
「分かった」
イスレイくんが、
「お姉さん?ボクも付いて行きたいな」
そう言った。
「ごめんね。イスレイを連れて行くと、騒ぎになるかもしれないわ」
「どうして?」
「イスレイくんは王子様だからね。不意に先生がイスレイくんを見てそう言ったら、周りの人達が騒ぎたててしまうかもしれないのよ。だからね。皆と待ててくれると嬉しいわ」
混乱状態になれば私達の用事が済まなくなるかもしれない。出来れば、騒ぎにならないのが好ましい。
「分かった。お友達と待っている」
「はい、いい子ね。直ぐに戻って来るからね」
私はイスレイくんの頭をなでた。
「うん」
「ダンさん、皆を宜しくお願いしますね」
「はい!お任せを」
ダンさんが私に向けて頭を下げた。
「リョウタ。行くぞ」
「ああ」
私とリョウタは教会に行く。
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