思い掛けない再会 12
「やはりお前か」
ステラ先生がやって来てそう言った。
「まあな」
「まあ、ここではなんだ。移動しようか」
ステラ先生は川田先生を見ながらそう言った。
「ああ、頼む」
俺達は応接室に案内された。そして、
「自己紹介といこう。私はステラ・クラークだ。コイツとは知り合いでな」
と言った。
「私は、ナオ 川田と言います。私は元教師で、山瀬君の元担任をしていました」
「ほう?で?この学園になんの用だ?ここの教師に成りに来たのか?」
「いいえ、山瀬君に聞きました。この学園にはもう一人の山瀬君が居ると、その山瀬さんに逢いたくて来ました」
「なるほどな」
「という訳で、ステラ先生を呼んだんだ。本当は直接姉貴達部屋に行きたかったが、川田先生が居るから、正式な訪問の方が良いと思っな」
「ああ、それが正解だな。今アイツは自分の部屋には居ない。もし行っても誰も居ないからな。アイツはエリサの部屋へ行っているんだ」
「ああ、なるほど?学園祭の打ち上げか?」
「いいや、ここでは詳しくは言えない。部外者が居るからな」
と、ステラ先生は川田先生を見ながら言った。
あまり、川田先生には言いたくはない情報らしい。
「あ、あの?山瀬さんはここでは何を?」
「アイツか?アイツは本当に使い勝手いいな。私はアイツをこき使っているぞ!こんなに使い勝手いい生徒はとことん使わないと損だよな」
と川田先生に向けて悪態をついた。
オイオイ、いきなり悪役を演じるのかよ?
「あ、貴女はそれでも教師なの!!」
川田先生は本気で怒っていた。身体がブルブルと震えていた。
「ステラ先生よ。川田先生は本当にあの時の事を気にしているんだ。ここまでにしてくれ」
「えっ?」
川田先生はキョトンとしていた。
「そうだな。試して悪かったな」
「えっ?あっ!?まさか…………全て知って?」
「ああ、全て知っているよ」
「この先生は、普段も姉貴達と一緒に住んでいるんだ。俺達の正体も知っていて、先生がその関係者だと分っててこういう行為をあえて演じたんだ。先生が姉貴の事を今どのように思っているのかをな」
「こういう事だ。コイツらの中等部時代の過去の話は聴いているよ。だがな、アイツは使い勝手いいのは本当の話だ。私の頼み事を悪態付きながらも最終的には聞いてくれている。だからこそ、大人である私が私達がアイツの今の人生を守ってあげないとな」
「あ、ああ…………や、山瀬さんは幸せに?」
川田先生は涙を流してそう言った。
「ああ、今は皆で楽しく暮らしているよ」
「よ、よかった~」
川田先生は本格的に泣いてしまった。
泣き止むのを待ってから。
「それでも、会うのだろう?」
「はい!逢いたいです」
「分かった!待っていろ!校内放送で呼び出す」
「校内放送?そんな物があるのですか?」
「あるから、言っているんだよ」
そして、ステラ先生はジェーン先生に頼んで、校内放送をして貰った。
○●○
私、聖山瀬は、学園長室の前まで転移魔法を使った。目の前にステラ先生が居た。
「来たか」
「はい、で?私にお客様とは?」
「会えば分かるよ」
「そうですか」
「ああ、じゃあな」
そう言って、先生は去って行った。
誰だろう?と思いながら、ノックのすると。
「姉貴か?」
と、サトルの声が扉越しから聴こえた。
「そうだ」
と、言いながらも、『お客様って、サトル事か?』とそう思った。
「入っても良いぜ」
「ああ」
私が扉を開けると…………この世界には居ない筈の川田先生が居た。
「なっ!?…………か、川田………先生………?」
私は衝撃を受けた。お客様とはサトルだと思っていたから、いきなり、中学校時代の担任教師川田先生が私の目の前に…………まったくもうステラ先生も人が悪い。
「貴女がもう一人の山瀬君?」
川田先生は冷静沈着だった。
「ええ、初めまして私が山瀬聖の転生体、5大貴族の一角を務めている現火の当主、聖・フレイム・山瀬です」
私は正式な挨拶をした。
「そう……やはり、山瀬君が、いいえ、山瀬さんが、火の貴族だったのね?数ヶ月前に初めてその名前を聞いた時は驚いてしまったわ。そして、山瀬君がこの世界に来ているかもと。でも、別人かもしれないと………」
「そうですね。私もそう思いますよ。この世界は通信が発展はしていません。日本に例えれば江戸時代レベルでしょうね。改めて現代日本の情報ネット社会がどれだけ凄いか」
「そうね。ここの王都で起きた事が私が住んでいる街に届くのは速くても2週間以上はかかるわ。それに神聖王様がこの世界に降臨したという情報は1ヶ月以上かかったわ。まさか、その神聖王様が山瀬君達の父親なんて夢にも思わなかったわ」
「そうですね。私自身も思わなかったですよ。な?」
「ああそうだな。俺自身も思ってもいなかったな」
「あなた達も隠蔽していたのね?」
「そうです。だから、日本に居る時は私達はただの人間だと思っていたのでね」
「もし、あなた達が自分達が神様だと知っていたら、おそらくとんでもない事が起こりそうね?そして、少なくとも、ああいう事が起きても直ぐに解決が出来たかもしれないわね?」
「そうだな。実際に先公1人を生きたまま地獄送りにしたからな」
「ああ。だからこそ、ヤツらが起こした行為は絶対に許さない!あの事件に関わったヤツら全員死んだら地獄行きが確定だからな」
「現在でも関わった教師全員が逮捕されて、それに伴い教員免許を剥奪され、務めている学校も懲戒解雇されて、更に山瀬グループを通して、関わったヤツら全員に多額の慰謝料を請求されているだろうな。まさに生地獄という訳だ」
「以前に言ったでしょう?いつかはその報いを受ける日が来ると?」
私とサトルが交互に言う。
「そうね。あの時はそんな日が来るなんて正直言うと思ってもみなかったわ。だって、大人の世界は汚く組織ぐるみの隠蔽工作なんて日常茶飯事の事だから………被害者の私達は泣き寝入りするしかなかったもの」
と、川田先生はそう言って寂しそうな表情をしていた。
おそらく、地球に日本に居た時にこの事件が解決が出来ていれば、まだ、自分にとって良い方向にいっていたかもしれないと思っているかもしれないな。
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