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思い掛けない再会 2

 それから1週間後。

 放課後で、委員会で教室に居残っている山瀬君と柏原さんと担任である私。


「クソが!!どうしてこうなったんだよ!!俺と先生は何も無いと言うのに!!」


 山瀬君が荒れていた。特に上級生やクラスの一部が山瀬君をからかって面白がっていた。その都度、私も注意をしているが………逆効果だった。


「山瀬君、ごめんなさい………あの時に私がもっと校長達に追求をして、弁護士でも警察でも介入して貰えれば良かったわ………こんな一大事になるなんて思ってもいなかった…………」


 私も既に意気消沈していた。あの日以来、職員室に行っても、私を助けてくれる同僚が誰一人としていなかった。見て見ぬ振りをされ、陰口を叩かれるようになった。


「聖………先生………」


 柏原さんが心配そうに私達を見ている。柏原さんは私達の主張を受け入れてくれた数少ない生徒の内の一人だ。


「クソが!!なにが大人との教師との不倫エッチはどうだっただ!!なにが童貞卒業おめでとうだ!!ふざけるな!!人の話を聞かない猿共が!!先生!!俺、もう限界だ!!しばらく学校を休む。イヤ、ずっと引き篭もるが、勉強の方はがぶり姉ぇが教えてくれるそうだ。がぶり姉ぇは頭も良いし、勉強以外にも色々と教えてくれるそうだ」


 山瀬君は保護者との話し合ってそういう結論に至ったようだ。山瀬君が言うガブリ姉の事、ガブリエルさんには私も山瀬君が1年生の時に三者面談で話した事があった。なんでも海外で仕事をしている山瀬君の両親の代わりに全てを任されているという若い女性だった。見た目は私とそうそう変わらない歳に見えるが、山瀬君が小さい頃からずっと世話をしているという。それを聞いて私は驚いたわ。どれだけ若さを保っているのか不思議な人の印象だった。


「そうなんだ………ごめんなさい。私は何も力になれないわ………そして、私のセイで…………」


 私は何度も山瀬君に謝罪をした。


「この件は先生のセイではないだろう?くだらない噂話を流した大馬鹿者共のセイだよ!!いつかはその報いを受ける日が来るさ!!」


 山瀬君は強く言い放った。


「そうね。そんな日が来れば良いわね………」


 私は半信半疑だ。大人達の世界は汚い。山瀬君が言った報いを受ける日が本当に来るのか解らない。


「先生?先生もこの学校を辞めた方が良いと思う。俺は先生の事は好きだった。だから、自分の身体を大切にしないとな。俺が引き篭もるのもその為だ」


「山瀬君…………」


 私は泣きそうになった。あんな目に遭っているのに山瀬君は私の事まで心配をしてくれている。


「ユカ、悪いな。俺は明日から家に引き篭もるけどさ、そういう理由だから」


「そうね。こうなったら仕方ないわね。話を聞く限り先生も聖もどこも悪くないのは分かっているわよ。それに一体、何年、聖の幼馴染みをしていると思っているのよ?貴方がこんな事で挫けるような人ではないという事くらい判っているつもりよ」


 柏原さんは呆れたように言った。この2人は幼馴染みなのね?知らなかったわ。だから、私達を信じてくれたのね。少し山瀬君と柏原さんのその関係が羨ましく思っていた。


「そうだな。じゃ、俺は帰る。明日から学校には来ないし、その連絡も一切しないから先生もお元気で」


「ええ。こんな形で、山瀬君とさよならするとは思わなかったわ………山瀬君も身体に気を付けて元気でね」


 教師としては不本意な形で、山瀬君と別れる事になった。担任を受け持つ限り、その年度の3月までこのクラスの生徒達の担任でなければいけないというのに、私はその責任を果たせないまま、山瀬君が引き篭りをしてから一ヶ月後に辞表を提出をし、一学期が終わった後に退職した。


 退職した私は両親が住んでいる田舎に帰る事になった。退職をする前に事情を全て話したら、両親もこちらに帰って来いと言ってくれていたのが決め手となった。

 婚約者には、婚約を解消され、逃げるように私の元から去って行った。

 元婚約者も私の主張を信じてはくれなかったのだった。今思えば、それはそれで良かったと思う。私の事を信頼していない人と一緒にずっと住むことなんて出来ない。結婚したのちに浮気をされれば目も当てれないからだ。

 田舎に帰って、今回での心の傷を癒やしてから、次の就職活動をしようと決めていた。

 しかし、それは叶わなかった。引っ越しの前日の夜、私は夕食の買い出しにコンビニに行く途中に数人の見るからに怪しい男達が私の後をつけていた。男達の服装がよくハチTV局で放送される『逃亡中』の狩人達にそっくりだが、顔にあり得ない切り傷がある男がいる。見た目で判断してはいけないが、その男はどう見ても善人には見えない。


 私は歩くスピードを速めた。私は、男達の視界が見えなくなるのを見計らって走った。

 しばらくすると男達も私を追いかけて来るのが分かった。私は警察署に行きたかったが、残念ながら距離があったので、仕方ないので森の中に入って逃げた。追いかけて来る男達を撒けば良いと考えた結果だ。そして、その後に警察署に行けば良いと思った。

 暗い夜道が森の中に入ると更に暗く暗黒化とかしている。

 男達もこの森の中に入って来たようだった。その証拠にスマホに付いてあると思われるライトを点けて追いかけて来た。


 私は慎重に逃走を図ったが、突然、森の空気が変わったような気がした。空気の密度が濃く感じたからだ。後ろを見ると、ライトの明かりが見えない。もしかすると男達もライトを消して私を追いかけているかもしれない。ここで安心する訳にはいかない。

 私は夜が明けるまで森の中を逃げ回る事にした。

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