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動けない私 3

「ただいま戻りましたよ」


 がぶり姉ぇがそう言って入って来たようだ。そして、


「聖さんの介護を補助する為の医療機器を持ってきましたよ。早速取り付けますので」


「お願い」


「はい。では、ミカエルも手伝って下さい。まずは聖さんの下半身のパジャマとパンツを脱がせますよ。そして、しもの周りの毛を全て剃りますよ」


「「は?」」


 2人で呆けた声を上げていた。どうして、下の周りの毛を剃らないといけないんだ?


「この医療機器を取り付ける為ですよ。この医療機器は聖さんのような者や大怪我などで自力では動けない天使の為に開発された装置です。この医療機器は下の処理や洗浄、乾燥を自動的にやってくれる優れ物ですが、乾燥の際に、まれに周辺の毛がまだ乾かないで濡れたままになってしまうというデメリットがあるのですよ。それによる感染症を防ぐ為にどうしても剃らないといけないのですよ」


 がぶり姉ぇは説明をした。なるほどね。毛が濡れていれば、臭いが溜まり、私が不潔症になったり。菌が増殖して感染症を引き起こしてしまうから、敢えて毛を剃って感染症を起こさないようにする為か。介護をされるのも大変だわ。


「分かったわ。お願い」


 私は納得をし、お願いした。


「はい」


 がぶり姉ぇは返事をしてから、しばらく経って、「ジョリジョリ」という音が聞こえる。おそらく、がぶり姉ぇが私の毛を剃っているのだろう。というか、毎回、メンテナンスの時にこの行為を受けないといけないのか?ならば、回復した時に魔法で下の周りの毛を生えなくした方がお互いに楽になるわね。というよりも、毎回、姉に毛を剃ってもらうのはかなり恥ずかしいわ。


「はい、終わりましたよ。医療機器を取り付けますよ」


「ありがとう。ミカ姉ぇ?悪いのだけど、宮殿に行って、王妃様に()調()()()の為、イスレイくんの家庭教師を休みにしますと伝えてくれる?」


「分かりました。そのように伝えましょう」


「よろしく」


「はい、では」


 ミカ姉ぇは転移魔法で宮殿に行った。


 ○●○


「…………という訳で、家庭教師をしばらくの間、休みたいそうです」


 と、私、ミカエルは、王妃とイスレイに聖の言葉を伝えたのですが、


「分かりましたわ。では、わたくしはこれから聖殿の御見舞いを致しますわ」


「ボクも行くー」


 と、2人は何故か、聖の御見舞いに行くと言い出しました。


「ちょっと!」


 私は慌てて止めに入った。


「ミカエル様?聖殿の体調不良は、おそらく、先の戦争のセイですわよね?ならば、総責任者のわたくし達が御見舞いをしなければなりませんわ」


「うん、お母様。お姉さんの御見舞い早く行こう」


 イスレイは王妃を急かした。

 仕方ありませんね。真実を話さないとこの2人は御見舞いを行ってしまう。しかも、今も旧グランパニ公国勇者2人が捕まっていないので今現在も王妃達周辺には厳重警備体制を敷いている状態で、学園に行かれると否応なく目立つのが更に目立つ。


 私は2人に今の聖の状況を話した。


「…………という訳でなのです。聖さんは、この事を言えば、貴方がたに余計な心配を掛けてしまうと懸念をして、貴方がたには体調不良と言ってくださいと言われました」


「そうでしたか?半年に一度訪れるメンテナンスとやらで身体の機能が低下をしていたのですか?」


「でも、ボク、お姉さんの所に御見舞いに行きたい」


「そうですね。しかしね?ミカエル様が仰ったように、今わたくし達が御見舞いをしても、聖殿はイスレイを見る事ができないのよ。それに聖殿もイスレイには今の姿を見せたくないのよ」


「そうなの?」


「はい、その通りですよ。ですので、聖さんが元気になり、ここに来た時に会ってください。その方が聖さんも喜びますよ」


「うん、分かった。お姉さん、早く元気になればいいね」


「そうですね。聖さんにそう伝えておきますので」


「うん!」


 イスレイは元気よく返事をした。


「ミカエル様。この事は、陛下のみお伝え致しますわ」


「はい、そのように。では」


「はい。お伝えしていただきありがとうございました」


 私は、聖の部屋に転移した。


 ○●○


 私達は教室に行き、エリサさんと話をしていた。


「先生はなんていうかしら?」


「…………自分で説明する?」


「それか、知らない振りをして私達に説明を求めるかのどちらかだね?」


 エリサさんの質問にエルフとマリアが答えた。

 私もそのどちらかだと思うわ。しかし、聖があんなふうにになるなんて夢にも思わなかったわ。

 ミカエルさんの話によれば、聖を転生させた神レイナの仕業みたいだ。生理の変わりに半年に一度、あんなふうになってしまうなんて………けど、月一度に周期でやってくる生理もキツくなる時もあるけど、聖みたいに身体が動かなくなる事まではいかないわね。


 チャイムがなりホームルームの時間になった。


「居る奴は居るな!居ない奴は知らん!」


 と、ステラ先生はいつものセリフを言う。まあ、聖が戦争に出ていた時は、説明をしたけど、今回は知らない振りをするようだわ。

 このまま、乗り越えるかなと思っていたけど、他の生徒が。


「先生?委員長が居ませーん」


 と、言って来た。


「あっ?そうだな?オイ!妹共!聖はどうしたんだ?」


 と、ステラ先生は知らない振りをして聞いてきた。


「はい、お姉ちゃんは体調不良で1週間から10日間は休むそうです」


 と、マリアが答えた。


「そういう事みたいだ。おそらく、先の戦争で、疲労が今頃出たのだろうな。この王国の為に働いたんだ。緊張の糸が切れて、急に体調がおかしくなっても仕方ない事だな」


 ステラ先生はそうフォローを言った。クラスメイトがざわついた。おそらく、学園祭の事だろう。


「ま、学園祭までまだ時間があるが、万が一、体調が回復ができない事も想定をしておくか。そうなった場合はカフェをやるしかないな。お前達も違う出し物をやるのは嫌だろう?」


 ステラ先生も察してそう言うと、クラスメイトも頷いていた。確かに、聖が不在だった場合でも違う出し物をやるのは大変だわ。


「けどな、これで分かっただろう?メインが不在になると、何も出来なくなると?だから、メインに頼る事もなくお前達でやれとな。はっきり言えば、病気や急な体調不良は誰にでも起こり得るコトなんだよ。でも、先ほど言ったようにだ。学園祭までまだまだ時間があるからな。さあ、授業をやるぞ」


 確かに、先生の言う通りだわ。メインの聖が倒れれば、私達はレストランは出来ない精々スイーツやお茶を出せるカフェが精一杯だわ。それに私を含めてクラスメイトは聖を頼っている。これは中学の時と同じ状況だわ。あの時も私達は聖を頼っていたが、2年の途中で聖はあの事件のセイで学校に来なくなり、当時、私達全員で、苦労しながらやった記憶がある。リーダーで指示役だった聖の不在はあまりにも大きかったわ。私達クラスメイトはどれだけ聖を頼っていたのかが改めて実感したのを思い出したわ。

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