魔力が消えた日 2
「なるほど」
私が返事をする。心ではそう思っていても、まともな提案だから納得して返事した。
「先生?喫茶店と言っていましたが、どうやるのですか?」
「それは、お前達で考えろ。学園祭も学習の内だ。まあ、レストランや喫茶店で出すスイーツを作り置きにするとかな?そのスイーツはお前達が作れよ!」
「えっ!?」
クラスメイトが疑問の声を上げた。
「えっ!?て、お前らな?まさか、全て聖に作ってもらうつもりだったのか?」
呆れる先生。
「イヤ、私はケーキは作れますけど、聖のようには美味しく作れないので」
と、ユカがそう言ったら、
「えっ!?貴女はケーキを作れるの!?」
クラスメイトが驚きの声を上げた。
「ええ、一応は、それにスポンジを作れるのは意外と難しくないわ。だけど、店に出せれるようなレベルではないわよ。あくまで、家庭で作れるケーキよ」
「か、家庭で!?ケーキって、家庭でも作れるんだ!?」
また、クラスメイトが驚きの声を上げる。
「ええ、そのケーキを作る道具と材料がありさえすれば出来なくもないけどね。家では結構シフォンケーキとか作っていたわ」
「シフォンケーキって何?」
「確か、委員長の店で最近出した新作のケーキがそのシフォンケーキだったような…………?」
「ああ、それ、私がリクエストしたのよ。メニューにシフォンケーキが無いから作ってって」
ユカがそう言った。
「えっ!?そうなの?」
「ええ、私は聖に保護されているから、聖にそうリクエストしたのよ。そうしたら、作って店に出したようなのよ。シフォンケーキって、主食にも、スイーツにもなれるケーキだからね」
ユカはそう説明した。
「そうなんだ?しかし、家でケーキが作れるなんて驚いたな?」
「そうだね。最低、そういった専門の店ではないと作れない物だと思ったわ」
「そうそう、だって、ケーキの作り方のレシピをまだ公開していないからな。他の店は未だにケーキ作りに苦戦しているからな」
「そんなケーキをまさか家庭で作れるなんて、誰が思う?」
と、クラスメイトが私を見ながらそう言った。
「ケーキのレシピの公開はしないよ。ケーキは出してまだ間もないからね。しばらくは発明者が独占するのは当たり前の話だよ」
私はそう返した。この世界は特許というモノが存在しない。レシピを公開すれば、誰でも自由に真似が出来てしまう。それに公開によって粗悪品が出来てしまうと、オリジナルの商品も多大な損害が出来てしまう可能性がある。
例を挙げるとカップ麺がそうだ。善意でタダでカップ麺のレシピを公開したら、当時大量の粗悪品商品が出回り、オリジナルのカップ麺も莫大な風評被害を出してしまった経緯があった。
今もケーキモドキが出回っているが、今の所、パパの店には被害は無い。
「しかし、聴く限り異世界ではケーキはありふれた食べ物のでしょう?」
「異世界は異世界だよ。ユカがいなかったら、知り得ない情報だよ」
「それはそうだけど………」
納得がいかないようだ。
「納得がいっていないようだな?だがな、聖は今は貴族階級だからな?」
先生が一言言うと、
「あっ!?」
生徒が理解し青ざめる。
「そういう事だ。だが、聖は貴族階級を笠に着て横暴な事は滅多にやらないが、あまりにもしつこければ、それ相応のしっぺ返しがくるからな?」
「分かりました」
先生にそこまで言われれば引き下がるしかないな。
「まあ、スイーツやメインメニューに関しては、候補が沢山ある筈だ。とりあえず、上げておいて、お前達が作れる物を決めろよ。作れない物を上げても意味がないからな」
この日はスイーツのメニュー候補が上がった。そして、自分達が作れるスイーツを絞るようだ。メインメニューは私が作る為に私に任された。
しかし、本当に出し物がレストランで良いんだろか?
「良いに決まっているだろう!」
と、先生が夕食の時に言った。
「どうしてですか?」
「あのな毎年、学園祭には王家が来るのだぞ。そして、今回から、お前が居るんだ。そして、イスレイ王子様も必ず来るだろう。でだ、王家は今回は昼飯はどこで食べると思う?」
「どこでって?そりゃあ、食堂でしょう」
私はそう答えた。
「前回まではな、今回からは、お前の所だよ。お前は陛下達に食事を提供しているだろう。それに、イスレイ王子様は、絶対にお前の料理を食べたいと思っているだろうな。仮にクラスで食べ物関係をやっていなくてもな」
「あっ、やっぱり…………」
そんな気はしていたわ。
「おそらく、今後、学園祭でのクラスの出し物は、食べ物関係だけになるだろうな」
「どうしてですか?」
「お前さ、学園祭と言えども、手を抜かないだろう?」
先生は呆れたように言った。
「そうですね。手は抜きたくはありませんね。カフェに影響が出ますから」
「だろう?お前の料理を食べれば、また、やって欲しいと絶対に要望が来るぞ。それに、今のお前は5大貴族で火の当主。そんな立場の人間が学園祭で料理で腕をふるうんだ。次回も続けて欲しいと要望が出る筈だ。それにイスレイ王子様も言うだろうな」
「それはありえますね」
「うん」
「はい」
「そうね。聖が作る料理は美味しいしね」
「ありがとう」
私達は夕食がすみ。お風呂に入って、眠りに就いた。
翌朝、私は何時ものようには起きられなかった。更に私の魔力が完全に消失していたのだった。
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