グランパニの勇者達 14
謝罪をしたウインド卿が席に着き、会議が始まった。
「一昨日、グランパニ公国の勇者達が脱獄を致しました。おそらく、外部の犯行の可能性が高いでしょう。その証拠に当時見張りに就いていた兵士達が全員刃物の様なモノで斬り殺されております。そして、兵士達の殺された向きも大半の頭が出入り口の方向にうつ伏せで倒れ込んでおりました」
冢宰が犯行当時の状況を説明してくれた。
「なるほどな。正面から斬られて、うつ伏せに倒れ込めば、大半が出入り口になるか?仰向けなら、牢の方向か?」
「はい。しかも、犯人らしき複数の足跡もありました」
「犯行はグランパニ公国のヤツらか?勇者共が捕まって、グランパニ公国が救出に動いたか?」
「その可能性が高いと思いますが、まだ、犯人の特定には至っておりません」
5大貴族達の質問に冢宰が答えた。
「まずは、勇者共を見つけ出さないといけない。あいつらは、陛下とその家族の命を狙っている連中だ。何としても確保して、公開処刑をしないといけない輩共です」
私はそう言った。コイツらを野放しにしてはおけない。
「確かに、陛下とその御一家のお命が狙われる危険性がありますね。しかし、グランパニ公国の勇者ですから、強さも普通ではないかと考えられますが?」
「そうですね。ヤツらの魔力量は5億を超えているとヤツらが自慢げに話していましたよ。だからこそ、邪神に勝てるとバカバカしいコトを自慢げに言っていましたよ。たかが、5億を超えた程度の魔力量で神に勝てるなら、誰も苦労しないわ」
冢宰の質問に私が答えた。
「うむ。確かにそうだな。神聖王様並びに神々の魔力量は計り知れない。我々人間が神々に勝つ事は出来ぬな」
「その通りでございます」
「フレイム卿?兵士達に聴いたのだが、フレイム卿は、グランパニ公国の勇者の1人をボコボコにしたと」
「な、なに!?それはまことか!?5億を超えている者をボコボコに?」
「どういう事だ?5億を超えている者をどうやって出来るのだ?」
質問攻めにあった。
「なに、相手は5億を超えていようが、あの時は、暴走状態だったのでね。ある程度の実力者なら、対処出来ますよ。それにMAX状態がずっとは続く筈が無いでしょう?魔力を使えれば使うほど、自身の魔力量が落ちて行くのですよ?」
私はそう指摘する。
「あっ!?た、確かに………」
私の説明で納得をしていた。
「でしょう?体力もそうですよ、いくら、魔力量が凄いと自慢げに話していても、体力が付いていかなければ、意味がなさないですよ。なおかつ、自身を見失う暴走状態なんて以ての外、論外ですよ」
「……………」
誰も言葉を発しなかった。
「あれ?まさか、魔力量だけを気にしてて体力の事を放置していたの?」
私がそう訊くと、
「その通りだ」
と、返してきた。
「今の今まで魔力量だけを重視してきましたので、フレイム卿が言う体力という概念はありませんでした」
「イヤ、体力が無ければ、まともに敵とは戦えないでしょう?そりゃ、圧倒的な魔力で短時間で敵を倒せば、体力は関係ないけどね?だけど、実際には、自分の思う通りにはいかないよ。敵だって考えて行動をしているのだから、下手を打てば、長い時間戦う羽目になるわ」
「た、確かにそうだが、我々は、敵とはそう滅多に戦わぬ」
サンダー卿が言った。
「我々は当たり前のように指揮官として、最後方の陣で指揮をしているからだ。今回の戦争もそうだろうな」
ウォータ卿もそう言う。
「そして、フレイム卿。貴殿もそうなる」
「それは分かるわ。上位の貴族が指揮を採らないと、兵士達の士気に関わって来るのはね。と言っても、私はまだ未成年で戦争の経験がないから、今回は代理人のテレサ様に指揮を採ってもらうつもりよ」
「ウム、その為の代理人だ」
陛下もそうフォローをした。
「さて、脱獄犯達の話に戻りましょう。とは言え、その脱獄犯達の行方は現在不明です。王国内に居るのか、王国外に居るのか、分かっておりません。よって、当面は陛下並びにご家族様達には警護の強化を採らせていただきます。そして、5大貴族達は各領の脱獄犯達の捜索をお願いします。それにグランパニ公国との開戦は早めた方が良いでしょう。少なくとも、グランパニ公国が亡くなれば、グランパニ公国の勇者達の大義名分が無くなりますので」
冢宰がそう言った。
「確かにそうだな。だが、脱獄犯達の捜索までは手が回らぬ。兵士達の数が足りない」
「ならば、王国中のギルド全体に依頼を掛けたらどうですか?中央ギルドを除く私営ギルドのギルド員の大半は一般王国民ですからね。王家の名で国王陛下の暗殺者の捕縛の依頼を出した方が良いかと思います。とは言え、ヤツらは、5億以上の魔力量を持っていますから、ギルド員同士で徒党を組まないと返り討ちに遭います」
「ならば、帝にも動いてもらった方が良いのでは?」
冢宰が質問した。
「帝も単独では危険ですね。(公式で)一番魔力量を持っている帝は聖拳帝の2億ですからね」
「そうなのですか?」
「しかし、フレイム卿は帝の内情を知っているな?」
「それはそうだ。フレイムは余の要請で貴族に成る前に帝に就任したのだからな」
『なっ!?』
『えっ!?』
「本当ですよ。帝での私の役職は創帝ですよ」
「そ、創帝!?火帝ではなく?」
「火帝は他者が務めていますよ。私は創造魔法が得意ですからね。だから、創帝に就任したのですよ」
「創造魔法………」
「創造魔法が実在していたのか?」
「最も不可能な魔法の一つだと言われていたが…………」
「あっ!だからこそ、無詠唱で転移魔法が使えるのですか?」
「それは関係ないわ。でも、無詠唱で転移魔法が出来るのは、かなり訓練を積み重ねた結果なのよ。私だって、最初の頃は転移と言わないと転移魔法が発動しなかったわ」
「訓練………か」
「フレイム卿は訓練をやっていたのか?」
「そうですよ。訓練をしないで、無詠唱の転移魔法が出来ますか?転移魔法は難しいというのは、皆さんもご存知の筈です」
私がそう言うと、全員が頷いた。
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