グランパニの勇者達 11
翌日の朝練で、私達は、昨日の事を皆に話した。なんだかんだと言っても皆が一番集まるのがこの朝練だ。ここで、話した方が1回で簡単に済む。本来は参加しないユカも今回は参加をしている。
「は?なんだそいつは?まだガキのようなヤツだな」
私達の説明が終わるとステラ先生がそう言った。
「確かにそうね。自分が描いた事をやらなければ気が済まないなんて、三才児の幼児の発想だわ」
「そうですね。それで、今まで通って世間に許されていたのが不思議ですよ」
ママとジェーン先生も呆れた声でそう言った。
「ま、腐っても神々財閥は日本有数な大企業でしたからね。今まで自分の主張が通っていたのは、裏でお金の力でねじ伏せたのでしょうね?だからこそ、全て自分の主張がやっている事が正しいと歪んだ性格の持ち主になってしまったのでしょうね」
「酷い性格だわ」
「そうね?私でもお金で解決をしようとはしないわ」
「……………私も女王の時、そんな事をした事がない」
「ホンにのう。最悪な人間じゃな」
「はい」
「ソイツの親はソイツにどういう教育をしたんだよ」
「あたし達と同じように親が放置したのよ。きっと」
「そうかもな?俺達の場合はがぶり姉ぇが居たから良かったけどさ。それに俺達の生活は一般家庭と同じだったしな」
がぶり姉ぇの言葉にマリア達がそう言った。
「ま、結局は、そんな性格だったからこそ、自分が間違っていたと、全く気付かずに従来の主張を言い続けているんだよ。じゃないと、普通ならば、洗脳されていない限り、周りが違うと言えば、自分の意見や考えを思い直すでしょう?だが、ヤツは普通ではなかった。周りがいくら違うと言っても聞く耳を持たなかった。自分がやっている事が正しいと、周りが間違っていると、自分が遂行すれば、自分の主張が正しかったと皆が必ず自分を絶賛すると自分都合ストーリーを常に描いているんだよ」
「うわっ!!イタイ奴だわ」
「救いようがないな」
「よくそんな輩が召喚されたな?」
私の説明に非難ゴーゴーの嵐だ。
「でも、召喚されて、日本経済は助かったかもしれませんね?ま、どっちみち神々財閥は潰れていますが、仮にそのような輩が大企業のトップに居れば、いずれは日本経済がガタガタになりますよ。なんだかんだで、日本経済を支えていた大企業の1つですから」
がぶり姉ぇはそう言った。おそらく、日本では神々財閥の社長や幹部達が逮捕されて大騒ぎになっているのだろうが、私達には関係ない話だ。
「ま、姉貴がソイツをズタボロにしたのだろう?俺もあの時に知っていたら、やりたかったぜ」
サトルが悔しがっていた。前世で私達の人生を滅茶苦茶した一族の一人だからな。
「そうだろうが、ただ恨みでボコったとしても犯罪になってしまうが、だがその結果、たまたま、事前に犯罪を止めた事になるのか?」
「どうだろうな?」
「難しい判断だわね?」
「そうですね?たまたま、その人物に恨みを抱いて、殴って負傷したが、実はとんでもない犯罪計画をしていた。としても、これはこれでとんでもない偶然ですからね?まあ、犯罪を止めた事には各地で賞賛の声は上がると思いますが、しかし、その人物に恨みがあり、負傷させた事はやはり軽犯罪になりますね。ですが、犯罪計画を止めた事にはかわりはないでしょうから、相殺されて注意だけで釈放されるのではないでしょうか?」
エリサは、自信なさげで言った。
「私の所なら、そうしますが、やはり、難しい判断ですよ。ギルドに寄ってその判断が分かれますから、そして、報告書にも書かないといけませんので………」
「そうですよね」
「とにかく、グランパニ公国がこの王国に戦争を仕掛けた事は事実だよ。そして、各当主は戦争の準備をしているわ。私の所もそうだけどね。ナチ帝国の見張りの数を増やさないといけないし、ナチ帝国の動向を探る為のスパイも増やさないといけないわ。それに街を巡回する兵士達の数や回数も増やさないと」
「マジで姉貴の領は戦争状態だな?」
サトルが驚いていた。
「そうだよ。住んでいる領民達の安全を守らないとね。今回は、私の領が直接戦場にはならないと思うが、戦争はどうなるか分からないからな。お前達も念の為王都に避難した方が良いぞ?風の領も戦場になる可能性があるからな?」
「そうだな。興行している街をもうそろそろ出るから、そのタイミングで、王都に避難するよ」
「ああ、だが、いつ戦争になるか分からないがな。こちらも準備段階だ。情報は逐一入れる」
「分かった。ま、風の領の街に居れば噂で流れて来るしな。それに、早めに退避した方が良いだろうな」
「ああ、その方が良いだろうな。戦争なんて、経験した事ないからな」
「そうだな。まあ、団長達は戦争を経験をしているから、団長の指示に従うがな」
「戦争か………」
「まさか、あたし達がそれを経験するなんて思わなかったわ」
「だろうな。日本という国に住んでいた頃は、戦争は永遠に無いと思っていたからな」
「まあ、そうですね。神聖王様達も戦争や紛争が起こる可能性が低い国を選んで、地球の日本という国を選びましたから」
がぶり姉ぇがそう説明した。
「そうだったのね?私と聖達が幼なじみになったのは全くの偶然なのね?」
「そうですね。そうなりますね」
「それで、ユカもこの世界に来られたのだからさ」
「そうですよ。貴女も私達と同じように聖達と出会ってその命が助かったのですからね」
「ええ、そうね。私は運が良かったわ。おそらく、聖達に会わなかったら、私は魔力を得られなかったわ。そして、勇者にも選ばなかったかもしれないわね?だって、聖達が居なかったら、私は魔力を得られなかった訳だからね。そして、生きる事に絶望して自殺をしたかもしれないわ」
ユカがそう言う。
「そうね。私達も聖に会わなかったら、全員が違った運命を辿っていたわね」
エリサがそう返すと、マリア達も頷いていた。
そして、数日後、私の下に嫌な一報がもたされたのだった。
作品が気に入ってくれたならブックマークや下にある★★★★★の評価やいいねの応援をお願いします。
作者の創作のモチベーションに繋がります。




