グランパニの勇者達 10
シンは雄叫びを上げると同時に魔力も上昇した。
「ほう?自称勇者とはいえ、魔力が上がるのか?おっと、こんな場所で暴走状態で魔法を使えばとんでもない被害が出るぞ。もっと痛めつけないと止まらないか?ならば、飛燕鳳凰脚!!」
シンが魔法攻撃を撃つ前に、足技を中心に乱舞をシンに浴びせ、そして、シンを階段状のように無数に踏みつけながら登り、シンの顔を蹴った反動で宙に舞い。
「空中、魔道翔拳!!」
魔力と気を混ざった巨大な気功波擬きを放った。
メリメリとシンが巨大な気功波擬きに押し潰れる音がし、消えると地面にクレーターが出来た。
シンはクレーターの底に埋まっていて、見えている身体全身がピクピクと痙攣していた。
「フン!」
私はシンを魔法を使ってクレーターから引き上げ、気を失っているシンの首を掴みポイッと兵士達の元に放り投げた。
そして、クレーターも壊れたヶ所も元通りにした。ついでにシンが壊れた牢屋もだ。牢屋は更に頑丈にした。
その光景を見た兵士達が『おおっ』と驚きの声をあげていた。
「コイツをこの牢屋に。もうコイツの力では壊れない」
「はっ!」
兵士達はシンを牢屋に入れて鍵を掛けた。
「フン。この程度の力量で神と戦おうなんて片腹痛いわ。いかに自分がちっぽけな存在だと分かっただろうな!!」
私は牢に残っているリュウガをジロリと見る。
「…………」
リュウガは私のプレッシャーに耐え切れずに下を俯いていた。
○●○
なんなんだよう。あの女の力は?反則もいいどころだ。ああ見えて神のヤツはマジで強い。その神が全く手も足も出せずに敗北したのだからな。しかも、女は戦っている最中に魔力を発している様子はなかった。その戦いも完全に遊ばれていたように見えた。
女が本気ならば、神の体なんて一撃で跡形も無くなっている筈だからだ。
クソ!本当に俺達は井の中の蛙じゃねぇーか!
グランパニ公国に居た最初の頃は、兵士達も魔道士達も俺達に忖度をして手加減をしていたようだったが、神はそれに気付いてはいなかった。そのおかげか神はみるみるうちに魔力量はもちろんのこと、魔法攻撃と戦闘技術の腕を上げていき、最終的には、本気になった将軍達や上位の魔道士達をまとめて倒す位の強さを手中にしていた。そして、この俺も神にはやや劣るが、強さを手に入れた。だからこそ、俺達はこの世界で一番強いと、そう自負していたが、この目前の女がそれを易々と打ち砕いた。この女は、とんでもない魔力量を発したが、この魔力量でも下級神以下の魔力量だと抜かした。
だが、こんなデタラメな魔力を纏ったヤツに俺達がどう戦おうが勝てる見込みなんてなかった。しかも、この女は俺達と同じ人間でだ。それに、この女の後ろには、まだ、2人の女達が控えて居る。そいつらもこの女と同じように強いのだろう。女が魔力を発した時に全く驚かずに平然としていたのが証拠だ。そんなヤツらがこの国にゴロゴロと居ると思うと、俺はなんという過ちを犯したんだという気持ちになる。やはり、グランパニ公国のヤツらの言葉を信じるんじゃなかった。
○●○
監獄から出た私達は、ウインド卿の邸宅に戻った。
また、応接室に通されて、ウインド卿と面談をする。
「グランパニ公国の勇者達はどんな様子だったのか?」
と、ウインド卿が訊ねてきたので、
「どうもこうもないな!特に神々神という男は、一言で言えば妄想ヤローだ。グランパニ公国のヤツらから言われた事を頑なに信じ込んでいるようだった。そして、その話を元に自分で描いたご都合ストーリーを作り、捕まってもなおご都合ストーリーを実行をしていた。このタイプは私達が何を言っても無駄なタイプだ。このタイプは死んでも直らない非常に質の悪いヤツだ。一体、幼い頃にどういう教育を受けてきたのか、想像がつかないな」
「そこまで、酷いヤツなのか………?」
私の言葉に困惑していた。
「ええ。もう1人の天川竜雅は、隙があれば、1人でも脱獄をしようと考えている節がある。ま、自分自身が生き残りたい為だな。それはヤツにしたら当たり前の考えだな。否定はしないよ」
「確かにな。大半の犯罪者は自分勝手だからな。だからこそ、平然と人達に危害を加えられるのだからな。それに捕まったら、まずは脱獄を考えるのも犯罪者ならば、当然な考えだ。しかし、我々はそれを許さない。もっと厳重な警備体制を敷こう」
ウインド卿はそう言った。
「そうですね。公開処刑の日まで、厳重警備体制の方が良いですね」
「ああ。だが、そのうちに、もっと厳重な監獄所に輸送されると思うがな」
「そうですね。ヤツらは重罪犯罪者のヤツらですからね。逃げられても大変ですし、公開処刑までの日まで生きてもらわないと困りますね」
「ああ。そうだな」
私達をウインド卿の邸宅を後にして、寮に帰った。
今思えば、神々家にとっては、神聖王は邪神だったな。だが、神々家の同情はしない、自分達からが仕掛けて自滅をした間抜け共だ。結局は、自分達の利益の為だけに動いて、経営に大失敗をした話しだ。
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