もう一つの勇者召喚 2
「偽物の勇者達及びその者達を召喚した魔道士達全員公開処刑にします!!」
王女がそう言いきった。王女にとっては魔道士達はいくらでも居ると思い込んでいるから平気で切り捨てられる発言が言えた。
「そ、そんな!!王女様!思い直しを!!この魔法陣は異世界人を(勝手に)連れて来る魔法陣なのです。我々にはどうしようもないのです!!」
魔道士達は王女に向かって懇願している。実際にはこの公国には魔道士はそんなにいないのが現状だ。そして、魔道士全員がこの公国の貴族達だ。魔道士の中に一般人は誰1人と居ない。これは公国の法律が原因だった。公国の法律は一般人が魔力を持つ事は犯罪に当たるとはっきりと書いてある。その理由は、一般人に反乱を起こさない為だ。仮に起こされても、剣などの武器と魔法では勝負にならない。砦に立てこもって魔法で遠距離攻撃をすれば大概勝てる。たとえ、一般人が弓で攻撃しても、魔法攻撃の方がより遠くから撃てるので、やはり勝負にならない。
なので、魔道士部隊は全員貴族で構成されている。その公国貴族でも魔力も持っている者達は多くない状態だが、それを王女は全く知らない。
一方。
「は?公開処刑?」
「なにを言っているんだよ?」
と、2人の男達は王女の発言にぼう然となりつつもそう呟く。
それもその筈だ。自分達を勝手に連れて来て、戦えないと拒否したら、偽物勇者と決めつけ、しまいには公開処刑をすると言う始末だ。
日本ではこんな事は非現実で非常識でしかないからだ。
「(チッ!コイツのセイでとんだとばっちりだぜ!異世界に来た人間には王族は優しくするのが決まりだろう?それにオレ達もここに来たらすぐに何かしらの能力やスキルを獲得が出来るのだろうがよ?)」
巻き込まれた男がそう愚痴るが、実際はそんなに甘くはなかった。男の考えはWeb小説やコミックの読み過ぎによる偏見な考え方だ。
そもそも、ただの人間では、この世界にただやって来ても能力やスキル、魔力を獲得は難しい。
しかし、魔法陣で選ばた人間や巻き添いになった人間では話は別だ。魔法陣に選ばれた人間は高確率で魔力を獲得する事が出来る場合が多い。もちろん、魔法陣に選ばれてもなにも獲得を出来ない人間も居るが、しかし、この男達は当たりを引く。
「お待ちよ」
大魔道士が王女に進言する。
「王女様。偽物の勇者とはいえ、せっかく召喚した者共をただ処刑してしまうのはいささかもったいないですな」
「大魔道士?わたくしの命令が気にくわないと?いくら、大魔道士のお前でもわたくしに逆らうとどうなるか判るよね?」
大魔道士を睨みつけるが、大魔道士は意を介さずこう言った。
「判っておりますが、しかしながら、せっかく異世界から召喚した者達です。この者共を勇者ではなく、ただの奴隷兵と使ってみればよろしいかと愚考したまで、処刑よりも使え道はあるかと」
「なるほど?ただの奴隷兵として使い潰しにしろというのね?」
「はい。処刑よりもその方が過酷です」
「そうね。でも、偽物勇者を呼んだ魔道士達は沙汰は変えないわよ!!」
「なっ!?」
どこか安堵していた魔道士達にとっては青天の霹靂に近い。王女にとっては当たり前の事だ。
「王女様。魔道士は我々貴族で構成されているのをご存知な筈です。我々貴族は、主上の臣下でございます」
「それが」
どうしたのよ。と言おうとしたが、大魔道士が遮る。
「貴族の処刑は主上のお許しがなければなりませぬ。しかしながら、この魔道部隊は万年人員不足。これ以上人員を減れば、魔道部隊自体が機能しなくなります」
「ならば人数を増やしさない。簡単な事でしょう?」
大魔道士は首を振り。
「王女様、我々魔道部隊はこれが精一杯なのです。そもそも、貴族の中でも魔力を宿せない者達も多く、仮に宿っていても魔力量が5000万以下の者達ばかりでございますので、なかなか魔道部隊の人員が増やせないのが現状でございます。この事は主上も把握しております」
簡単に言えば、小娘如きの我が儘で、貴重な魔道士達はけして処刑は出来ないと、大魔道士は言っている。だが、魔道士達はその事を知らないので必死に王女に向かって懇願していたのだった。
「なっ!?」
王女は絶句し、魔道部隊の真実を初めて知った。
「まさか、お知りになっていなかったと?」
大魔道士は大袈裟なポーズを取り、王女に言う。大魔道士は王女は現状を知らないのを知っていた。
「う、うるさい!!わ、分かったわよ!魔道士達の処刑も特別に取り消してあげるわ!」
「はっははーーっ!ありがたき幸せでございます」
大魔道士がそう言って、頭を下げると、魔道士達も一斉に大魔道士に倣って頭を下げた。
大魔道士は頭を下げるがニヤニヤとしていた。
魔道士達はホッと胸をなでおろしている。魔道士達は大魔道士に命を救われたのだから。しかし、今後、魔道士達は、命の恩人である大魔道士の言いなりとなるが。
「ふん!(だから、このクソジジィはいけ好かないのよ!!)」
王女は自分の失態を悔やんで大魔道士に悪態を吐いていた。
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