もう一つの勇者召喚 1
~グランパニ公国~
グランパニ公国の宮廷の一室で複数人の魔道士達が集まり、魔法陣に向けてカオスワードを一斉に唱えていた。
この魔法陣は、ファーネリア王国にある魔法陣とは全く違った召喚魔法陣だった。
『王女様。準備が整いました』
「あっそう?じゃあさっさとやりなさい」
王女と呼ばれた女はやる気がない声で促す。女にとって魔道士達の行いはどうでも良い。ただ興味があるのは成功する結果だけだ。
「はっ」
更に魔道士達がカオスワードを唱え魔力を注入するその魔法陣が光り光柱が上がりしばらくすると、2人の人影が浮かんだ。
「成功だ!!」
魔道士の1人が叫ぶ。
光柱が静まると、イケメンの2人が魔法陣に立っていた。
「あれ?ここはどこ?」
「お前!?なぜオレを巻き込んだんだよ!!」
「えっ?だってボクたち友達でしょう?」
「友達じゃない!ただの腐れ縁だ!行くならテメー1人で行けよな!!」
「酷いな~でもそれを友達って言うのだろう?」
と、のほほんと言う。
「お前!この状況を分かっているのかよ?えーっ!!」
男はのほほんと言う男に腹をたてているが、周りに居る。王女、魔道士達は、男達がなにを言っているのか全く理解不能だった。
「魔道士達!この者達はさっきからなにを喋っているの!!さっさとわたくしに教えなさい!!」
王女はしびれを切らして、魔道士達にそう命令をするが、魔道士達も召喚された男達がなにを言っているのかさっぱり分からないので、あるじである王女に報告が出来なかった。出来ても、「我々にもさっぱり分かりません」だ。だが、王女に対してそんな報告が言えるワケにもいかず、魔道士達は右往左往していた。
「フォッフォッフォッ。どうやらお困りのようですな?」
長い杖をつきながら老人がやって来た。
魔道士達はその老人を見るなり一斉に畏まる。
「大魔道士?なにしに来たの?ここは貴方が来る場所ではなくてよ!!」
どうやら、王女はこの大魔道士と呼ぶ老人が好ましく思っていないようだ。
「フォッフォッフォッ。これはこれは手厳しいですな。ですが、召喚された者達の言葉が解らぬようなので、不肖のワシがこの者達の言葉を解るように魔法を使いましょう」
大魔道士は自信満々で答える。
「なっ!?で…………分かったわ。さっさとやりなさい」
当初、王女はできっこないと言おうとしたが、腐ってもこの公国の大魔道士と名乗る老人だ。いけ好かないが、出来ない事はない。出来るからそう言っていると考えを瞬時に改めて承諾した。
「はっ!承知」
大魔道士は呪文を唱える。
「これでこの者達の言葉が解りますし、通じます」
大魔道士は王女に向かって一礼をする。
「そう。そこの者達よ。わたくしの声が聞こえる」
言い合いしていた男達に声をかける。
『えっ!?』
言い合いしていた男達は王女の方を見た。そして、
「に、日本語?」
「ここは日本なのかよ?」
「どうやら、わたくしの言葉が解るよね?わたくしはこの公国の王女よ。貴方達は、わたくしの国の魔法陣によって喚ばれた勇者よ」
王女は男達の問いを無視し、内容だけを説明した。
「ゆ、勇者?」
「(チッ!やっぱり異世界かよ)」
「勇者って、キミの事?」
「何ふざけた事を言っているんだよ!!お前の足元を中心に魔法陣が出て来たのだぞ!!お前が勇者に決まっているだろうが!!オレはたんなる巻き添いだ」
と、怒鳴り付けた。
「その男の言う通りよ。勇者になるのは魔法陣の中心にいた人物になっているわ」
「そうなのかい?」
「ええ。で、言い伝えによると、勇者は強いとされているわ。今から、公国の兵達と戦ってもらいます。その兵達全員に勝ったら、この公国の真の勇者よ。そして、この公国に呼んだ理由を教えます。さあ、勇者よ。兵達と戦いなさい!!そして、わたくしに勇者の力を見せるのです!!」
王女が言うと、どこかに控えていた兵達がぞろぞろとやって来て男達を取り囲んだ。そして、兵達は一斉に剣を抜いて構える。
それを見た男達が慌てる。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。ボクらは急にキミ達に喚び出されたんだよ?それでいきなり兵達と戦えはあんまりだ。それにボクらは戦い方は知らないんだ」
「そうだぜ。オレ達は今まで剣を用いて戦った事なんてないんだよ。それにオレ達が居た国は至って平和な国で、国自体がもう何十年と他国と戦争をしていないんだよ」
「は?何十年と戦争をした事がない?何バカな事を言っているの?そんな国がある訳がないでしょう?さては魔道士達は偽物の勇者を召喚したのね?」
王女は自分自身の国に置き換わって話しているので、この男達が言っている事を理解が出来なく信じていなかった。この世界は何十年と戦争の経験がない国疎か過去5年以内で戦争をしていない国はないからだ。
「そ、そんな王女様!?」
王女の発言で慌てる魔道士達。王女の発言は絶対。王女が死刑と言えば、その者達は死刑になる。取り消しは滅多にない。99,99%実行されるからだ。
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