勇者召喚 10
~回想~
「姉貴?今日、召喚の日だよな?」
俺、山瀬 サトルは、姉貴に訊ねた。
「ああ、そうだ。大道芸人の人達も来るのか?」
「イヤ、団長が恐れ多いと言ってな辞退すると言っていた」
俺はそう答えた。
「別に来ていただいても良いのに?」
と、女王様。ここでは、エリサが、にこやかに言う。
「団長達は一般人だからな。それにまだ自分達で気負う事もあるのだろうな」
「そうですか?でも、罪は償っておりますから、気負う事はないかと」
「そうだけどな。やはり、罪は償っても、自分達の中ではそうそうには消えないモノだろうな。自分が犯した罪は団長達は一生背負い続けると思う」
「そうですか………やはり、犯罪をするものではありませんね。後悔して悔いているなら尚更です」
「そういう事だな。中には犯罪を犯しても平然としているヤツもいるがな」
「そうですね」
「ともあれだ。俺は召喚が成功しても失敗しても、料理は作る。がぶり姉ぇ達に俺の料理を食べさせる約束をしたからな」
「そうだな。その約束が実現しないとな」
「ああ。そのために料理の腕を磨いてきたが、でも、姉貴の方が上なんだろうな………」
姉貴は、ほぼ毎日料理を作っているし、カフェでも客に提供が出来る腕前を持っている。俺よりも数段上だと容易がつく。
「かもしれんが、サトル、お前だって、大道芸人達に振る舞っているだろう?お前はお前の味をがぶり姉ぇ達に提供すれば良いよ。がぶり姉ぇ達もお前の料理を喜ぶさ。けしてお前の料理は不味くはないのだからな」
「ああ、ありがとうな姉貴」
姉貴に励まされて自信がつく。
しかし、可笑しな話だな。俺も姉貴も元は同じ一人の人間だったのに、同じ人間だった姉貴に励まされて嬉しくなるなんてな。やはり、今世は俺と姉貴は別々の人間として生きているんだなと改めて実感した。
~回想終わり~
○●○
食堂の扉を開く。
事前にマリアから更夜に会ったと言っていたから、がぶり姉ぇと舞も来ている可能性が高い。
自分の心臓の音がドックン、ドックンと聞こえる。
先ずは、国王と王妃が入場した、更に、クレアとリク、そして、姉貴に抱かれたイスレイも入って来る。
しばらく開いて、がぶり姉ぇ、舞、更夜と…………えっ!?ユ、ユカ!?何故、ユカが?まさか、ユカが勇者なのか!?
俺はがぶり姉ぇ達よりもユカがこの王国に居る事に驚いた。
「お兄ぃ?」
「兄貴?」
舞と更夜が俺を見つけた。
「ああ、久しぶりだな、お前達」
と言いながら、テーブルの前に出る。
「お兄ぃ!!」
「兄貴!!」
2人が俺に抱き付いて来た。2人の勢いがありすぎて後ろに倒れそうになったがなんとか堪えた。
「お前ら、勢いありすぎだ!!感動の再会ではないぞ」
「お姉ぇにもそう言われた」
「兄貴もやらないと」
「そうか。姉貴にもやったのか?」
「「うん」」
2人が返事をした。
そして、
「がぶり姉ぇ。会いたかった」
「私もですよ。聖さん。今は、聖さんでしたね」
がぶり姉ぇはいつもの笑顔だった。
「ああ。そして、ユカも久しぶりだな。ユカが勇者なのか?」
「久しぶり聖。そうみたい。だけど、私の代わりに更夜君がやってくれるみたいね。そして、私もこの王国に住むから」
「えっ?」
「私ね。両親に捨てられたのよ。だから、もう行くところが無くてね」
「そうだったのか………あのおじさんとおばさんが………」
優しい人達だと思っていたが、まさか、産んだ子供、ユカを捨てるなんて………。
話は一段落し、歓迎会になった。
食事をしながら、姉貴が自己紹介をした。ちなみにリョウタはまだ陛下の許しが出ていないようで1人寂しく留守番だ。
ユカにもリョウタがこの王国に居ると言ったら、驚いていた。何故なら、リョウタの失踪事件は大々的に報道をされたようだ。当然、ユカの元にも当時の同級生達からメールやLINEが届き、そのやりとりをしていたようだ。
「そうだったのね?伊勢君の両親達が報道機関やマスコミを相手取って、営業妨害と名誉毀損で損害賠償を求めて裁判を起こしたというニュースはやっていたけど、それ以降は判らないのよね」
「だろうね。世間の関心はリョウタの失踪事件だから、裁判は決着が着かないと報道されないか、報道自体しないと思うよ。報道機関やマスコミ関係者を訴えたのだからね」
「そうですね。どの局やマスコミ、週刊誌の内容もかなり過激な報道や記事だったですからね。当時は店兼自宅を隙間なく一斉に取り囲んでいましたからね。視てても、被害者であるご両親がまるで加害者側になっているような報道内容でしたからね」
がぶり姉ぇがそう言った。かなり酷い報道の仕方なようだ。これでは訴えられても仕方ないな。
「ちなみに弁護士は山瀬グループの弁護士軍団が担当になっていますよ」
「えっ?そうなのですか?けど、何故ですか?」
「疑い中はどこの弁護士事務所もご両親の相手を嫌がったようですね。疑いが晴れたご両親は、今までの弁護士事務所との契約を打ち切って、山瀬グループに話を持ちかけたようですね。まあ、筋違いですが、世界中で企業を展開していますのでね。ご両親は山瀬グループの担当弁護士には優秀な弁護士が居るだろうと踏んだようです。そして、弁護士を紹介して欲しいと依頼があったようですね。そして、詳細は省きますが弁護士軍団が付いたという事です」
「なるほど。山瀬グループの弁護士が付けば、裁判も負けないですね?」
山瀬グループは、トラブルになり裁判を起こされた場合の時に専属弁護士達が居る。その弁護士達が優秀らしい。
「そうですね。被告側は自分達で全国に報道と記事にしましたから被告側に勝ち目は薄いですが、どれだけ賠償金を低く出来るかが焦点ですね」
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