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勇者召喚 9

「な、なんと!我が王国の勇者は聖殿の幼なじみのユカという者か」


「コレは驚きましたわね」


「ええ。私も最初ユカが現れた時は驚きましたよ」


「で、でも、わ、私は…………」


「分かっておる。そなたの代わりに聖殿の弟君の更夜にやってもらう算段がついている。君が気負う事は無いのだ」


「はい」


 陛下の優しい声にユカは安堵して返事をした。


「本当に話が付いているんだ?」


「当たり前だ!それにクレアとお前達の目論見が一致しているから、話がスムーズに進んだ」


「そういう事だ。しかも、神聖王様のご息子ならば、神聖王様を祀り上げている余達にはなんの文句は無い。最高な勇者だとな」


「そこまで!?」


「そして、勇者として、役目を果たした暁にはここに居るクレアを妻として更夜を我が王族に迎入れよう」


「はぁぁぁぁぁーーーー!!!!!」


 更夜が驚きの声を上げる。


 そして、


「あ、兄貴?こ、コレって?」


 更夜は理解が出来ていないようだ。


「ああ、以前に私達の家族写真を見せた時にクレアがお前の事を一目惚れをしてな。お前と結婚をしたいそうだ」


「ま、まじか…………」


「ウソは言わんよ。それにお前の外堀は既に埋まっている。父さん達もクレアとの結婚は容認しているよ。後はお前達次第だよ」


「そういう事だ。余達も容認をしている。神聖王様のご息子ならば文句は無いし、クレアが惚れているのだ。親とすれば、その恋路を応援をするのが筋だ」


「本当に更夜の外堀が完全に埋まっているわね?」


 舞はがぶり姉ぇに話しかけた。


「そうですよ。だからこそ、私はこの召喚を無事に成功させないといけませんでしたので」


「えっ?が、がぶり姉ぇも知っていたの?」


 更夜の身体全体が震えている。


「はい♪聖さんからの情報で、しかし、そんな話をすると更夜さんは残ると言いそうですので」


「確かにね?更夜は女性に弱いからね?事前にがぶり姉ぇにそんな情報を聞けば行かないと言いそうだわ」


「うっ」


 真実だから言葉を詰まらせる。


「更夜さん。お願いします。わたくしと結婚を前提でお付き合いして下さい。わたくしは、貴方としか結婚を考えていません!」


「そ、そこまでに俺と?」


「はい!わたくしは将来この王国の女王となりますが、わたくしは貴族達の前で神様と結婚をすると宣言しました。この宣言を実行しないとわたくしはこの王国の法律により女王にはなれません」


「そうなのか?」


「はい。そうです」


「もし、俺達が来なかったら?」


「そうなると、私がクレアと結婚しなければいけなくなるわね」


「まじかよ?というか、もう1人の兄貴が居るだろう?」


「アイツは既に恋人が居るからな。ああ、私もちゃんと居るからな」


「そうなのかよ!」


「えっ?お兄ぃに恋人が居るの!?」


「ああ、同じ大道芸人の娘さ」


「そうなの…………」


 舞はあからさまにがっかりしていた。本当に俺の事が好きだったようだな。


「ま、その話は今度だよ。更夜!クレアは真剣にお前に惚れているんだ。今すぐに返事をしなくても良いが前向きに考えろよ。と言っても、クレアはお前の内堀を埋める準備は万端だぞ」


「そうなのか?」


「はい。ま、今回、更夜さんがたとえ来なくても聖と結婚はしませんが、きっと、わたくしの所に現れると信じておりましたので」


「そ、そうなの………」


 更夜が少しドン引きしていた。


「さて、歓迎会を開催するので、食堂に移動しよう。食堂には聖殿の関係者達が居るのでな。とは言え、神聖王様達は居らぬが」


 陛下の声で食堂に移動する。


「お姉ぇ?もし、あたし達が来なかったら、どうするつもりだったの?」


「どうもしないさ。帝達に紹介した後にクレアが陛下を呼び、私がそいつを謁見の間に案内して、陛下が話してから、執事やメイド達がそいつを引き取り、私達は食堂で残念会をやっていたさ」


「残念会……」


 舞と更夜は複雑な表情をしている。


「そうさ、食事は必ず用意をしているから無駄にしない為さ」


「召喚はそうそう出来ませんからね。メンテナンスをやってもし次があるのは何十年後になりますよ。わたくしのワガママでやる訳にはいきませんので」


「そうだな。王家の目的は勇者召喚をする事だ。召喚が成功すればそこで終わる。ここが食堂だ」


 執事達が食堂の扉を開けて私達は食堂に入る。

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