勇者召喚 6
「ガブリエルさんって、そういう肩書きだったのですか?」
「そうですよ。表向きは会社からメイドとして派遣された社員となっているのですよ」
「あたし、初めて知ったわ」
「俺もだ」
「えっ?舞さん達も知らなかったの?」
「うん。父さん達からがぶり姉ぇは、住み込みのお手伝いさんだからとしか紹介されていないからね」
「ああ。普段から父さん達が居ないから代わりにがぶり姉ぇがいろいろとやってくれていたけど、そんな肩書きだったとは今まで知らなかった」
「ま、それはそうだろう?私達はまだ幼かったからね。幼い私達に難しい言葉で言われても理解不能だから、お手伝いと言ったのでしょう?それに私達はずっとそう思って暮らしきていたのだから」
「そうだったのね。確かに、私も幼い頃は大人達の話は良く判らなかったわ」
私達の説明にユカは納得した。
「さて、ユカ。改めて、勇者の件だが」
「えーと、私が勇者をやらないといけないの?」
ユカが不安がっている。当たり前か、召喚されていきなり勇者をやれなんて言われて喜ぶ奴はお気楽な中二病の人間だ。普通はユカのように不安な表情をするのが当然だ。
「イヤ、ユカは勇者をやらなくても大丈夫だよ」
私はユカや舞達に本来の計画を話す。
「えっ?そうだったのね?」
「ああ」
「兄貴?俺がユカさんの代わりに勇者をやるのか!?」
「当たり前だ!何のデメリットが無く勇者召喚に便乗出来ると思ったか?」
「でもよ?それで良いのかよ?偽物の俺が勇者をやってもさ?」
「あのな?お前は神だろうが!ただの人間よりも神の方が強いに決まっている。更にこの世界を含めてな父さん達の支配地域だよ。父さん達もそれは容認しているし、ここの国王陛下も既にお前を勇者として承認しているんだよ」
「は?」
更夜の目が点になる。理解が出来ていないようだ。
「お兄ぃ?更夜が勇者をやる事に根回し早くない?」
「早くないよ。お前達が来ることは既に把握済みだ。神であるお前達に特に更夜に勇者をやらせるのは当たり前な行為だよ。ゲームでもそうだろう?主人公である勇者は神の子孫か王族に連なる者とな?お前達はそれに全て当てはまるんだよ」
「えっ?そうなの?お兄ぃ?あたし達が神は知っているけど、でも、あたし達が王族って?」
「舞さん、私は教えましたよ。貴女達のお父様は神の頂点に立つお方神聖王様だと、神聖王様こそ神様の王なのですよ。だから、舞さん達は王族に連なる神様で、貴女達の肩書きは王女様と王子様になりますよ」
「あっ、そうだった」
「忘れていたわ」
「忘れていたって?じゃあ、聖もそうなの?」
「そうですよ。聖は神聖王様のご令嬢で、この王国の宗教は神聖王様をお祀りしておりますよ」
「えっ?そうだったの?」
クレアの説明にユカはビックリしていた。
「ま、この世界に転生したのは偶然だよ。私もこの王国が神聖王を父さんを祀り上げているとは知らなかったよ。そして、自分自身が神だとは知らなかったよ」
「そうだったのね?しかし、私の幼なじみが神様だったなんて思いも寄らなかったわ」
「それはそうでしょうね。私達も思ってもいなかったよ」
「でさ、今後、私は貴女達の事はなんて言えば良いの?神様なんでしょう?やっぱり、様を付けた方が良いわよね」
「そんな行為はいらないよ。いつものように普段通りで良いよ。私はこの王国では人間として暮らしているからさ、私の正体を知っているのは極一部の人達だけさ。じゃないと、私はこの王国で暮らしていけないよ」
「そうですわね。特にわたくし達王族は、神聖王様をお祀りしておりますので、正体が世間にバレていたら、わたくし達王族はご令嬢の聖に常に頭を下げていなければいけませんし、気軽に聖と呼べませんよ。いいえ、それどころか、聖がこの王国の新女王として君臨しててもおかしくてはないですね」
「あっ!確かに。神様とバレていればそのくらいなってても不思議ではないわね」
「ですが、聖は望まなかった、この王国でただの人間として生きる事を望みましたが、しかしながら、わたくし達、王族は、聖程の優秀な人材を遊ばせておく程の余裕はありませんので、聖にはいろんな役職に就いてもらっておりますよ。今の聖の身分は貴族です」
「貴族ですか?それは凄いわね。だって、聖が死んでから半年も経っていないんですよ?」
「聖がこの王国にやってきて、いろんな国家レベルの難事件を解決してくれましたので、その報奨として貴族に抜擢したのですよ。いくら、神様と言っても王国に何も貢献していなかったら、貴族には抜擢はしませんし、この召喚の立ち会いもいません」
「国家レベルの難事件を解決って?聖にそんな難事件を解決が出来てしまう力があったのね?さすが神様なのね」
「イヤ、魔力と魔法が使えれば解決が出来るよ。それに、ユカにもその魔力が体に宿っているよ」
「えっ!?わ、私に魔力が!?」
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