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長期休み 1

 1学期が終わり、学園は1ヶ月以上に及ぶ長期休みに入った。日本に喩えると夏休みになるが、私達が住んでいるこの王国の気候は1年中ほぼ春の気候になっているので、この王国では春夏秋冬の四季がない。だから、夏休みとは言わずに長期休みになる。


 休みの間は皆自分達の実家に帰って行くが、私達は寮に留まっていた。ま、実家に帰っても良いけど、学園からも結構近いので、両親達も別にどうでも良い感じだ。


 私は、貴族の仕事をしたり、カフェでウェイトレスのバイトをしたりしていた。


 マリア達はほぼ毎日のようにクエストや帝の仕事に出掛けている。


 そんなある日の事。


 私はバイトでウェイトレスをやっていた。


「いらっしゃいませ」


「えっ!?なんで貴女がいるの?」


 アルクェイドが店に入ってそう言った。


「何故って。私はここで働いているからだよ」


「えっ!?だって、貴女は偉い貴族様でしょう?そんな貴女が?」


「ここは、私の実家で経営しているカフェなのよ」


「そうなの?私、のどが渇いたからお茶にしようと入っただけだったけどね?まさか、貴女が居るとは思わなかったわ」


 この真祖様は普通に物を食べられるのか?


「でしょうね。ま、適当な場所に座れば?注文の仕方は判る?」


 私は気にしつつも普通に答えた。

 アルクェイドも一応は貴族だから、こんな場所カフェには来たことはないと思う。


「バカにしないでよ。判るわよ」


「バカにしてはいないよ。貴女はまがりにも貴族だからね。貴族はこういうカフェに来ること事態が稀だからだよ」


「あっ、そうか?そうよね。貴族階級って、こういう所には来たくても来られないわね。私、誰も雇っていないから自由だけどさ」


「自由って?自分の領地の運営は?」


「ああ、知らない人間が勝手に領地運営しているわ。私はタッチせずだから、運営が行き詰まったとしても自分達で解決しなさいと言ってあるわよ」


「あのね?かなりいい加減だわ」


 私はアルクェイドの言い訳に呆れた。それと領民達は良いのか?


「仕方ないでしょう?私は領地運営のやり方が分からないもの。分かっている人間がやればまだマシでしょう」


「ああ、なるほどね」


 やり方は違うが、私と同じか。


 アルクェイドは席に着き、メニューを見ていた。


「聖さん?彼女が例の?」


「そうだよ。ミカ姉ぇ」


 賞状授与が終わった後に私は私の関係者全員にアルクェイドの正体を教えた。


「なるほど、確かに見た目は人間と変わりませんが、体内に内包している魔力が人間達とは違いますね」


 と、ミカ姉ぇはアルクェイドをそう判断した。仮に私が教えなくてもミカ姉ぇはアルクェイドが人間ではないと判別が出来たようだ。


「ねぇー?注文、良い?」


「はーい。ご注文は?」


「うん、コーヒー1つ」


「畏まりました」


 お辞儀して行こうとすると、


「あれ?何か言わないの?」


 アルクェイドは困惑気味に私に聞いて来た。


「お客様、何かとは?」


 私の方が困惑する。


「イヤ、注文はこれだけとかさ?」


 ああ、今まで、普通に話していたから、私に何かを言われると思っていたようだ。


「お客様が何をご注文をしようが、店の従業員である私には何も関係ない事です。コーヒー一杯でも、ご注文はご注文でございます」


「そうなの?」


「左様でございます。では」


 私はパパに注文内容を伝えた。コーヒーが出来上がり、アルクェイドの方に持って行く。


「お待たせしました。コーヒーです。それと私からのサービス」


 アルクェイドの前にコーヒーとショートケーキを置いた。


「えっ!?何これ?」


「私が作ったショートケーキでございます。このカフェでは売り物にならないのでサービス品です」


「そうなの?じゃ、遠慮なくいただくわね」


「はい。ごゆっくりとどうぞ」


 そう言って、アルクェイドの元を立ち去る。


 ○●○


 私は彼女がサービス品として置いて行ったショートケーキとなるものを食べてみる。


 えっ!?何これは、柔らかくて程良く甘くてなによりも美味しいわ。こんな食べ物は今まで食べたことがないわ。

 私はショートケーキに魅了されてしまった。

 気付くと既にショートケーキが無くなっていた。


 ヴァンパイアでその真祖ある私は、食べ物を食べなくても生きて行けるけど、味覚はちゃんとある。だから、人間達の食べ物に興味本位で食べていたけど、このショートケーキは凄く美味しかったわ。私はもう少し食べたいと思ってしまった。店員が通ったので、呼び止めて聴いた。


「ああ、チーフのショートケーキですか?これは本当にサービス品なので、これ以上はお出し出来ないのですよ。しかし、メニューにマスターが作ったケーキ類がありますので、こちらをご注文して下さい。マスターが作ったケーキの方が美味しいですよ」


 と、説明をしてくれた。


「えっ!?チーフ?彼女はチーフなの?それにあのショートケーキよりも美味しいケーキ類があるの!?」


 私は驚いてしまった。彼女が作ったショートケーキよりも更に美味しいケーキがあるなんて………。


「はい。チーフは私達よりも優れておりますので、私達ウェイトレスが勝手に呼んでおります。そして、チーフのケーキは他の店ではちゃんとした売り物になりますが、一度マスターのケーキを食べてしまいますと、ここではサービス品となってしまいます」


「そうなの?そこまで、言うなら、注文するわ。えーっと………結構あるわね?じゃあ、これとこれの2つ」


 私が注文したのはチョコレートケーキとフルーツタルト。


「畏まりました。では、お待ちください」


 なんか店員に乗せられたような気もするけど、彼女よりも美味しいケーキが食べられるなら、食べてみる価値があるわ。


 そして、2つのケーキが来て、食べてみると本当に彼女が作ったショートケーキよりも美味しかった。コーヒーも美味しかった。


 この日より、私は店が定休日以外毎日通う事になった。

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