S組のテンサイ 5
コンコンコン。
学園長室の扉をノックした。
「開いておるよ」
「失礼します」
私達が入ってくる。
「これはぞろぞろと来よったのう」
「けど、予想通りです」
ジェーン先生がそう言った。事前に分かっていたようだ。
「学園長?私に用とはアルクェイド・アルカードの事ですか?」
「ウム、ステラの話によると、ヴァンパイアのようじゃな?」
「そうのようですね。まだ、確定した訳ではないですが、ほぼそうでしょうね」
私はエルフを促す。
「……………そう、匂いが人間とは違っていた。人外には間違いない」
「そうか」
「後、アルクェイド・アルカードは、転入生でしょうか?4月の魔道鉱石の時にはいなかったと思いますが?」
居たら目立つ筈だ。
「ウム、そうじゃよ。転入生じゃよ。本当は4月当初に来る筈じゃったが、予定が大幅にずれてしまったと言うておった」
「学園長?アルクェイド・アルカードはS組に居るようですが、我が王国の貴族名にアルカードというファミリーネームが付く貴族名は存在しませんが?」
クレアがそう聞いてきた。
「そうじゃな。ワシもその事で問い詰めた。アルカードというファミリーネームの貴族名は居らぬとな。そうしたら、小国、イザイヤの貴族だと言うっておったので、イザイヤに問い合わせてみたら、アルカードは確かにイザイヤの貴族じゃったよ。なんでも、大国ファーネリアに留学をして勉強をたいとな。問い合わせ先も同じ回答じゃったよ」
「そうですか」
「ねぇ?イザイヤって?」
マリアが質問した。
「イザイヤは王国の同盟国と言えば聞こえが良いのだけど、王国の属国なのよ。まあ、イザイヤだけではなく、周辺の小国は3大大国の属国になっているのよ。小国はいずれかの3大大国に頼らないと国として成り立たないからね」
「そうなの?」
「ええ、小国は単独で繁栄は出来ないのよ。大国や他の小国に侵略されてしまうのよ」
「どうして?」
「自分の領土を広げたいのよ。小国は、他の小国を滅ぼして大国に成りたいのよ。だから、侵略を避ける為に保護という形で属国になるのよ」
「そうなんだ?そんな所からやって来たのね?」
「そうね」
更にエリサの話によれば、ファーネリアに付けばまだ安泰だと思うわ。と言った。
他の2大大国は小国に対しての扱いが酷いらしい。おそらく、属国ではなく隷国の扱い。しかし、地理的に他の2大大国に近い小国は仕方なく、付き従っている。
「それでじゃ、ワシらでアルクェイド・アルカードの正体を確かめたいのじゃよ」
「学園側としても、把握をしておきたいのですよ。ただ、彼女が素直に話してくれれば良いのですがね?」
なるほど、学園側でもアルクェイド・アルカードの正体をしっかりと把握して何か起きた時に対応しておきたいのだろう。
「で?どうやって確かめるのです?」
「ウム、丁度、学年別に賞状を授与をする予定じゃ。その授与する時に確かめたいのじゃよ」
「えっ?なにそれは?」
私には分からなかった。賞状の授与って?それは、全校生徒の前でやるんのではないの?アルクェイド・アルカードの正体を全員に知らせるのか?
「学期ごとに成績が首席の児童・生徒に送る賞状の事ですよ。昔は、全ての児童・生徒達の前でやっていたのですが、あまりにも人数で時間が掛かり過ぎてしまい、今では学年別に首席だった児童・生徒を学園長室に呼んで授与しているのですよ。で、今回は、高等部1年生では聖さんとアルクェイドさんが同時に首席だったので、アルクェイドさんの正体を知るには丁度良い機会ですよ」
と、説明をしてくれた。
数日後、私はアルクェイド・アルカードと対面する事になった。
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