去った後の話1
聖が去った後の話。
「帰って行きましたね」
「そうですね…………」
ミカエルは寂しい声で答えた。
「ミカエルは聖さんとまだ居たかったの?」
「…………」
ガブリエルの問い掛けに、ミカエルは黙ってしまった。
「ミカエルは意地っぱりね?寂しいなら寂しいって言いなさいよ」
「ガブリエルはどうなのですか?」
「勿論、寂しいに決まっているわよ。欲を言えば、また一緒に暮らしたかったわ。おそらく、聖さんもそうよ。けど、聖さんは私達よりも人間として暮らす事を選んだ。しっかりと、人間としての知識を得たいのでしょうね?それに私達との暮らしは、聖さんが死んでからでも出来きますからね。そっちの方がトータルで考えれば永いからね?」
「そうですね………でも、私を姉と呼んでくれたのが嬉しかったです」
「ミカエルは聖と居たいのですね?判りました。ミカエル!本日をもって、レイナの秘書を解任します!」
「えっ!?」
王妃からの突然の秘書解任に驚くミカエル。
「お、王妃様?な、何故です?」
ミカエルは王妃に説明を求めた。
「実のところを言うとね。レイナの秘書を替える話は前々からあったのよ。レイナはミカエルの胸に夢中で世界神の仕事が疎かになっているという声があちらこちらであがってきているのよ。で、謹慎中を口実に秘書を替えようとね?」
「で、では、私はクビですか………」
「そうね。でも、これはレイナの為でもあるのよ。レイナには立派な神に成って欲しいのよ。次期神聖王としてね」
「「はぁ?」」
突然のカミングアウトで驚く2人。
「次期神聖王って?てっきり、次の神聖王様に成るのは聖さんだとばかり…………あっ!?ま、まさか、レイナ様も神聖王様と王妃様の子供?」
「そうよ。ガブリエル。レイナは私達の子供よ。じゃないと、たったの3週間の謹慎処分なんてあり得ないわよ?親は子供に甘いのよ」
「レ、レイナ様も神聖王様達の子供!?で、では、聖さんは、実の姉であるレイナ様に殺されてしまったと?」
ミカエルの体が震えていた。
「そうよ。だからこそ、私達は困惑したのよ。両方共に私達の実子。そして、レイナは私達の最初の子供よ…………」
王妃の表情が暗かった。
「さ、最初の子供………だから、立て続けに産まれたのがあり得ないと言ったのですね?」
「そうよ。レイナが産まれて、約70年後に聖が、そして、その1年後に双子が立て続けに産まれたわ。神の世界ではあり得ないのよ。それに私達は何億年の間、子供が授からなかったからね」
「普通諦めるレベルですよね?」
「ガブリエル!失礼でしょう!!」
「そうね?諦めてもおかしくはない永い歳月ね。でも、私達は、どうしても子供が欲しかったのよ……」
「でも、レイナ様は王妃様達の事はただの上司としか認識していませんでしたが?」
ミカエルからの質問だった。
「レイナは産まれて直ぐに行方不明になってしまったのよ。私達も必死で捜したけど見つからず、あの時は半ば諦めていたけどね。しかし、約50年後に新たな世界神クラスの神が誕生し、謁見した時に自分達の子供だと直ぐに判ったのよ」
「何故、その時に名乗らなかったのですか?」
「出来る筈がないでしょう?我が子を産んで行方不明になり諦めていた。だけど、こうして元気な姿で再会出来た。なんて、面と向かって言えないわ。それにどんな言葉を掛けてあげれば良いか分からないわよ。だから、私達は罪滅ぼしで、レイナを優遇したのよ。ミカエル、貴女を直ぐに秘書にしたのもそうよ。普通は天使のトップである貴女を世界神の秘書にはしませんよ」
「確かにそうですね。私達、最上位である熾天使は神聖王様達に仕えている天使。その中のトップであるミカエルが世界神クラスの秘書はあり得ないと思いましたが、そういう理由でしたのね?考えてみるとミカエルも私と同じですね?」
「そうですよ。ミカエルもガブリエルも私達の子供達を護る為に付けたのよ。でも、レイナの最近の行動は目に余るモノがありますので、秘書を替えようと言う事になったのですよ」
「そうでしたか………それで私の後任は?」
ミカエルは最後まで、レイナの事を心配していた。
「女性天使よ。レイナは男性天使は嫌がるわ。天使のランクは熾天使だけど、最近、昇格した天使よ。で、ミカエルには新たな任務を言い渡します!」
王妃がミカエルに与えた任務とは?
ようやくあらすじを回収した………。




