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ようやくデートが出来るね 9

 話が終わろうとした時、領宰が、


「ご当主様」


「なんです?」


「はい、明日、ここでのお祈りの時間が終わった時に一言でもいいので集まった領民達にお言葉を頂きたいのですが」


 と、言った。


「私は信徒ではありませんので、ここには来ませんよ。よって、お断りしますよ」


 今の私から領民達に対して話す事は何も無い。


「なっ!?へ、陛下!?」


 私の発言に領宰が物凄く驚いていた。王国に住む貴族全員が父さんの信徒に成っているからだ。だからこそ、領宰の驚き方も半端ではなかった。


「聖殿は、訳があってな、神聖王様の信徒には絶対に成れないのだ。この件に関しては余も重々承知している案件だ」


「そ、そうなのですか?分かりました」


 ここで陛下と揉めたりもしたら、今後の領宰補佐の地位愚か領政からも外されてしまう危惧を感じたか?領宰はここで引き下がった。


 この人物は引き際を十分に解っている。だから、領宰という地位に居られたかもしれない。


「という事で、私は明日から視察を兼ねた観光を楽しみますよ」


 こうして、火の領まで来たのだから、兄さんと本当のデートを楽しみたい。


「分かりました」


「そうであったな」


 私は陛下達と別れて、兄さんと再び宿屋に戻った。


「いらっしゃいませ。ご当主様」


 女将を始め従業員全員なのか?かなりの人数で、私達を出迎えてくれた。


 私としたら、ここまでしてくれなくてもと思ってしまう。


 が、


 女将達にとっては、お客様を出迎える事はすごく当たり前の行為だ。


 そして、女将が私達を特別室へ案内をする。特別室がある場所は宿の最上階の位置だ。普段一般客愚か貴族階級の人達でさえ利用を許されていない為に通路に扉があり更に施錠をしてあった。その施錠を解除して、扉を開けた。そして、特別室の扉の前にたどり着く。女将が鍵を解除し、扉を開けた。


「こちらが陛下とそのご一家が泊まる特別室でございます。どうぞ、お入り下さい。…………………この部屋において一点だけご注意があります。けして、陛下と王妃様がご使用しているご寝室のご利用はお控え下さい」


 女将は特別室の各部屋を案内しながら説明をした。


「分かりました。私達はゲストルームで寝ますので」


「そうだな」


 ゲストルームも豪華なベッドルームだ。

 ふと思った、クレアやイスレイくんはどこで寝ているんだろうと。ま、帰ったら、クレアに聴けば分かることだ。


「分かりました。それでお願いします。食事の方は何時頃がよろしいでしょうか?」


「そうだな。先に風呂を入りたいから、食事は1時間後で良いな?」


「そうだね。また、食後にでも、また入りたいからね」


「そうだな」


「分かりました。この特別室のお風呂は家族風呂で混浴になっております。ごゆっくりとお過ごしください」


 女将はお辞儀をして、去って行った。


「オイ!?混浴なんて聞いてねぇぞ!?」


 あたふたする兄さん。


「特別室だからさ、お風呂は家族風呂は当たり前だと察しようね?」


「しかしな………まぁ、仕方ないか。聖、先に入って来い。俺はその後に入るから」


「兄さん?い、一緒に入らない?私は、男の体は識っているからさ」


 私がそう言うと、兄さんは顔を真っ赤っかになって。


「しかしな………お、俺はオフクロの体しか知らないぞ………」


 先程と違う意味であたふたしている。


「じゃあ、私と結婚したら、結婚後は、私の体を見るのは平気になるの?」


「い、イヤ………それはないと思うな………」


「ならさ、慣れよ。それにこんな旅行ではないと一緒に入れないでしょう?」


「しかしな………」


 踏ん切りがつかない兄さん。


「あのね?こうしている間も時間が一刻と過ぎて行くのよ?さっさと入りましょう。変な事はしないでしょう?」


「あ、当たり前だ」


「なら入りましょう」


「…………」


 返事がなかった。全くもってヘタレな兄だわ。


 それでも、私達は一緒に入る事になった。脱衣場は男女別々に別れていた。


 私は服を脱いで、バスタオルを胸から巻いた。本当なら、そのまま全裸で入りたかったのだけど、ヘタレな兄さんは、私の全裸を見た途端に逃げ出す可能性が高いので、これで妥協する。


 お風呂に行くと、家族風呂とは名ばかりな広いお風呂場があった。浴槽には何十人と入れる。更に、外にも露天風呂が完備されている。これは1時間やたった1回だけではもったいない。やっぱり、食後は入ろうと心に決めた。かけ湯をして、湯に浸かっていると、兄さんが漸く来たここに来るまでかなりの葛藤があったようだね?やっぱりヘタレだねぇ。

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