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最終公演 6

「続いては、ヤジリと助っ人芸人聖様による剣舞だ」


 ダンさんは観客達にそう紹介してしまった。コレは本名だとかなり恥ずかしいな、やはり、私も芸名を付ければ良かったと後悔した。それにダンさんはサラッと様を付けて呼んでいる。それを聴いた一部の観客達がざわついている。


「オイ!団長!もっとほかに紹介の仕方があるだろう!紹介するのに姉貴を様呼ばわりはないぜ」


 サトルが悪態を吐く。


「言ってしまったのは仕方ない。やるぞ!」


「ああ!」


 私達はステージに上がり、剣舞を舞う。


 サトルに向けて黄色い声援が飛ぶ。


 演技している私達にとってはその声援は大迷惑だ。私達はお互いの足音を聞いてお互いのタイミングを取っていた。お互いのその足音リズムが聞こえないと私達の動きがズレてしまう。これは練習不足を補う私達が考えた事だった。


「(サトル!私に合わせろよ!)」


 私よりもサトルの方が剣舞の舞いのスピードが速い。本来は私がサトルに合わすべきだが、病み上がりの私には酷だ。今回は今の私のリズムに合わすようにした。


「(分かっているが、こう煩いと)」


「(仕方ない。煩いヤツらを黙らせる為に殺陣をやるぞ!)」


「(分かった!)」


 私達は演技しながら、念話で話をしていた。


 そして、予定にはなかった殺陣を激しくやり合う。お互い、本気で相手を斬り殺すようにだ。もちろん、私達はそんな事をやらないが、観ている観客達には分からない。


 真剣にやり合う私達を観ていた女性達は黄色い声援から徐々に悲鳴に変わり、私達の殺陣とは思えない迫力の剣戟で次第に黙ってしまった。


「なるほどね。この殺陣はそういう事だったのね」


「ああ。煩い観客達に対して『黙って観ていろ!』という聖達のメッセージだな」


 ママとパパの説明に皆が納得していた。


 静かになった私達は再び剣舞を約3分間舞い、舞台から降りた。こんなに舞う予定ではなかったな。


 舞台裏に引き上げると私達は椅子に座り息を整えていた。


「お疲れ様。2人共凄かったわ」


 メアリーがそう言うとゴンザさんとニートさんが頷いた。そのままゴンザさんとニートさんはメアリーが演技する舞台セットの準備に取りかかった。


「ありがとう」


「だが、こんなに舞う予定ではなかった。殺陣もやる予定もなかった。ある程度の時間舞ってメアリーに繋げたかった」


「そうだね。しかし、あのまま行けば私達の剣舞は確実に失敗していた。最終公演で失敗するのもイヤだからな、立て直す為に殺陣を入れたのさ」


「そうだったのね………確かに、ヤジリの声援がいつも以上に凄かったものね?」


「ああ。それに団長から特に演技時間の指定もなかったしな」


「そうだわね。ヤジリ達があれだけ演じれば、この一座の花形である私も気合いを入れて演じないといけないわ!」


 メアリーは集中力と気合いが入っていた。


「メアリーが花形であるのは間違いない。俺はまだまだだよ」


「あ、当たり前でしょう?貴方は芸人になって3ヶ月しか経っていないもの。本来なら、見習いよ。見習い」


 何故かメアリーは照れていた。


「そうだな。姉貴が剣舞を教えてくれなかったら、俺はこの舞台に立っていない」


 サトルは真面目な顔つきで言うと、メアリーは更に顔を赤くなっていた。


 オイオイ。この状態で芸が出来るのか?先ほどの集中力と気合いはどこに行ったんだ?大丈夫なのか?


 私がそう思っていると、ダンさんが、メアリーを紹介していた。メアリーの出番がやって来た。

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