最終公演 4
そして、公演時間となった。私除く団員全員がステージ上がり、ダンさんが最終公演という事で少し長めの挨拶をし、そして、ニート、ゴンザコンビの芸が始まった。芸が終わりダンさんは私を紹介した。
「続いては、今回助っ人のピエロだ!シャイで喋る事は出来ないが、芸の腕は確かだ!」
そう紹介した。演技中に喋れないのは、私がお願いした。いくらピエロの姿になっても声でばれてしまってはピエロになった意味がない。
私はステージに出て行った。見ると私の家族は最前列で見ていた。
水芸が始まった。水芸の内容はおなじみとなった水イルカを使った芸を披露する。
ピョンピョンと6頭が綺麗にジャンプをするが、1頭だけがだんだんとズレていく、仕舞いにはジャンプをする際にイルカらしからぬ動きやポーズをし出した。
私は一端止めて、そのイルカに注意する。イルカも分かったと頷くが私が背を向けると、そのイルカは私に対して悪態をつくが、私が振り向くとイルカは大人しくしていた。当然、私はその悪態は気付かない。
観ている客は、その光景を笑っていた。
そして、同じように再度やると、6頭が同時に綺麗にジャンプをする。
客は拍手をしていた。
一方で。
「この水芸って、お姉さんがいつもぼくたちにやってくれていたよ?なんで、このピエロさんがお姉さんのように出来るの?」
イスレイがエリサに質問していた。どうやらイスレイは、ピエロは違う人物だと思っているようだ。
「そのピエロが聖本人よ。私もどうして聖がピエロに扮しているのか分からないけどね?」
「そうなの?あのピエロさんはお姉さんなんだ?」
「ぼく、分からなかった」
「わたしも」
イスレイと子供達は驚いていた。
「だからね。応援する時はピエロさんと言ってあげた方が良いわよ」
エリサも何故聖がピエロに扮しているのかその理由は分からないが、ピエロに扮している以上は、ピエロと呼んだ方良いと考えて、イスレイや子供達にそう言った。
「うん、分かった」
『はい』
子供達は返事をした。
芸の方は、イルカ達による輪くぐりを連続でしていた。次々とイルカ達が高速で輪をくぐっていく。
「しかし、聖の水芸を初めて観るがすげーな?どうやって水芸をやっているんだ?ほら、手とか動かしている形跡がないぜ?」
リョウタが聖の水芸を観て驚いている。イヤ、初めて観るリリカ、ファルコンも驚いているようだった。
「本当だな?イルカというモノが独自で動いている感じだな」
ガイも聖の水芸を観て魔法を操る技術に驚いているようだった。
「そうですね?お風呂でやっていた時はちゃんと手を使って水を操っていましたが……今は、全くやっていませんね?」
「………不思議」
「本当、お姉ちゃんの水芸は凄いわね。あれ?一匹(頭)、輪に引っかかっているわ」
「というか、今まで通過していたのになんでだ?それにイルカのヤツ、聖に助けを求めているな?」
イルカがキュイ!キュイ!と鳴いてヒレをバタバタさせていた。聖が助けようとしたが。
「そうね。って、助けようとした聖がイルカの中に体丸ごと入っているわ」
「お姉さまがジタバタともがいていますよ?あっ!なんとか脱出しましたね」
聖は全身水浸しになりゼィーゼィーと疲れた様子で息切れを起こしていた。が、もちろん、これは演技だ。その光景を観て客は大笑いをしていた。
「イルカは元々水だしね。助けようとしても、助けるその本人がイルカの中に入っちゃうから助けるのは不可能なのね?」
「オイオイ、そのイルカが、抜け出して、聖の頭を尾ビレで引っ叩いているぞ?それに後ろから思い切り押せとジェスチャーしているぞ?それに聖は素直に頷くし、そして、また自分から引っかかっているし、完全にこれはコントだろう」
リョウタは呆れるように言う。
「というか、自力で脱出出来ているじゃん?なんでまた引っかかるの?」
「マリア?それは禁句よ」
リリカが注意をした。
マリア達は聖の事を分かっているので、意外と冷静で観ていられているが、何も知らない他の客達は聖の芸を観ては笑っていた。
ずっと観ていたミカエルが、気付いた。
「分かりましたよ。聖さんは目で水芸をやっているのですよ」
そう言うとマリア達が驚愕した。
「め、目って?まさか、お姉ちゃんは視線で水を操っているの?」
「そんな事が出来るの?」
「手を使っていないとなると、視線で水を操っていますね。聖さんは想像魔法と創造魔法が使えますから、別の箇所でも操っているかもしれませんが、主に視線で操っている事は間違いないです」
と、ミカエルが言い切った。
「だから、ピエロのメイクはそれを隠す為だと?」
エリサが質問した。
「さあ?それは分かりませんが、本来、ピエロは、王侯貴族の前でも、どんな口を利いてもどんな態度を取っても無礼千万が許される役職です。政治などでピリピリした場の空気を読んで更に皮肉やちゃらけた事を言う事で、その場の王侯貴族達が冷静さを保つようにと生まれた役職です。この世界のピエロの役割は主にお客を楽しませる為でしょうね。だからこそ、水芸で笑いをとっている聖さんはピエロに扮しているのでしょう」
ミカエルの説明に皆が納得して聖の水芸を観ていた。
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