休暇と陛下の悩み事 7
扉が開き、私達を迎え入れてくれた。
「聖様、お待ちしておりました」
「もう、御回復するとは、流石です」
「聖様、どうぞこちらへ」
私とミカ姉ぇは中央の席に通された。
そして、責任者が、
「聖様。我々の命をお救い下さってありがとうございます。このご恩はけして忘れません!」
この場に居た人達が一斉に頭を下げた。
「我々が掴んだ情報によれば、聖様は近々火の貴族に御就任するとか。聖様が御就任した暁には我々も聖様が治める火の領に移籍をし、我々も聖様を支えていきたいと考えております」
そう言ったが、私は、責任者の突然の発言で、ぼう然とした。何故、こうなるんだ?
「聖様?もう一度言いましょうか?」
責任者は私の惚けている表情を見て言った。
「いいえ、大丈夫です。突然の事でただ驚いただけです。質問、良いですか?」
「何なりと」
「あなた方のその考えは既に陛下には伝えているのでしょうか?」
「いいえ、まだですが、聖様に伝えてから陛下にお伝えをしようと」
うん、それはダメだね。
「それって、順番が逆ですが?初めに陛下にお伝えをしてから、私に言うべきですよ。火の貴族に成れば私も陛下の臣下になりますよ。それに、私はまだ未成年者です。火の領は当面は陛下のご長女のテレサ様が私の代理人として治めますよ。せめて、陛下にお伝えするべきですよ」
「分かっております。しかしながら、陛下も我々の熱意がお分かりになると信じております」
まぁ、確かに熱意だけは伝わるわね。
「私からは何とも言えませんね」
「それとは別に、仮にあなた達がごっそり抜けた場合、この部署の穴はどうするのですか?分かっているかと思いますが、聖さん達と共に直ぐには火の領には行かれないと思いますが?」
ミカ姉ぇがそう言った。確かにこの部署が丸ごとごっそりと火の領に異動が出来る筈もないわね。現実的には、1年くらい掛けて、次々と異動して来るのが、良いのか?と、私ナリに思ってしまったが…………。
「それは、分かっておりますよ。我々も今の仕事を誇りに思っておりますが、しかしながら、我々は聖様に命を助けて貰いました。このご恩をお返しするためには、やはり、聖様の仕事の手助けをする事で恩返しをしたいのです」
責任者が言うと、周りの人達も頷いていた。この部署の全員の総意だと判った。
「なるほど、そうですか?それでも、聖さんが言うように国王の許可が必要ですね?聖さんがあなた達の事を決める権利はありませんので」
ミカ姉ぇがそう言った。ミカ姉ぇの言う通りだ。この王国の全ての決定権は陛下が持っている。私には無い。
「その通りです。全ては陛下のご判断次第ですが、我々は聖様にどうにか恩返しをと」
「そうですか。その熱意は私に伝わりました。しかし、たとえ陛下が却下したとしても、あなた方はこの部署で働いて下さい。何故なら、あなた方の仕事が間接的に私の仕事を助けになっているやもしれないからです。私は、貴族の仕事の事はまだ良く分かってはいませんが、しかし、どんな仕事でも1つだけでも欠けていれば、全体の仕事が回らなくなるやもしれません。だから、どんな仕事が私の仕事の助けになるかは分かりませんが、あなた方の仕事はけして無駄にはなりませんから」
私はそう言った。はっきり言って、貴族の仕事はどんな仕事だか解らない。だいいちに全く見たことがないからだ。
「分かりました。でも、我々は聖様の元で仕事をしたい事を分かっていただきたいのです」
「ええ。それは十分に分かっていますよ。では、私達はこれで失礼しますね。一応、私の方から、そう言う話があったと陛下にもご報告しておきましょう」
「はい。お願い致します」
責任者が頭を下げた。おそらく、この台詞を私に言わせたかったのだろう。そうした方が私の元で仕事が出来る確率が高くなるからだ。
私達は部屋を出て、イスレイくんの部屋に行く、今日はイスレイくんの部屋ブ遊ぶ約束をしたからだ。
ノックをして、ドアを開ける。
「お待たせ」
「うん、早く遊ぼーよ」
イスレイくんは待ちきれない様子だった。
そして、イスレイくんが持って来たのは、4人で遊ぶモノだった。なので、イスレイくんの担当のメイドも巻き込んだ。
当のメイドは、
「えっ?私もですか?しかし、私は今仕事中でして………」
困り顔のメイド。ミカ姉ぇが、
「王子と遊ぶのも仕事の内ではないのですか?王子が頼んでいるわけですし、それに誰かが、ここを訪ねてきた場合は、貴女が、率先して応対をすれば良い事ですよ」
そうフォローをした。
「それに、何かあってもぼくがお願いしたと言えば良い」
イスレイくんもそう言った。
「分かりました。では、お茶を淹れて来ますね。それから、参加します」
メイドが折れた。
お茶を淹れて、4人で遊んだが、あっという間にお昼になってしまった。遊んでいると、時間が経つのが早い。
「あー面白かった。またやろうね」
「そうだね」
「偶にはこういう息抜きも必要ですね」
「そうですね。また、誘ってください」
メイドも満更ではなかったようだ。私達は、昼食を摂るために食堂に行った。そこで私は陛下に今朝の話をしたのだった。
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