再会6
「ガブリエル、聖を母さんの所に案内をしてやれ」
「分かりました。聖さん行きましょう」
がぶり姉ぇが声を掛ける。
「うん、分かった。けど少し待っててくれ。父さん」
「なんだ?考えが変わったのか?」
「違う。ごめんなさい。そして、ありがとうございました」
俺は頭を下げた。
「なんだよ?急に気持ち悪い!」
「父さん達の気持ちを知らず。俺は勝手な事ばかり言ってしまった」
「イヤ、お前にはお前の人生がある。お前が人間として生きて行くに誰にも邪魔する権利は無い。考え方もそうだ。お前が言わないと俺達も判らない。そして、どう想っていたかもな?俺達、神も万能ではない、神の世界でも規則はあるんだ。さあ、母さんの所に行け」
「分かった。また、会おう父さん」
さよならは言わない。だって、また、俺が死んだら会えるから。
「ああ」
俺達は謁見の間を出た。移動中に。
「聖さん、本当にレイナ様が………」
ミカエルさんが再度謝って来た。
「良いよミカエルさん。レイナも反省の為に謹慎中なんだろう?それに、俺には新しい家族やマリアという妹が出来た。また、人間として生きていける。ただ、がぶり姉ぇ達と暮らせないのが心残りだ」
「聖さん………」
ミカエルさんの表情が暗い。
俺が神聖王の子だと分かってしまったから。
もしかしたらミカエルさんはレイナの立場も危ういかもと感じているかもな?レイナにはもったいない部下だな。
「聖さん?そのマリアって子は幾つ位の子です?」
がぶり姉ぇが気を利かせて話題を変えた。
「それが同じ年なんだよ。まあ、初めて出逢った時は、俺よりも年下だと思っていたし、マリアの方も俺を年上だと思っていたからさ。そうなったのさ。それに、その家がカフェをやっているからさ、がぶり姉ぇに教えてもらった料理もいかしているよ」
「そうだったのですね?それは教えた甲斐がありましたね」
がぶり姉ぇはニコニコしていた。
「ああ、がぶり姉ぇの教えは無駄にはしないよ。それに俺も料理を上達したいからさ、結構練習をやっているんだよ。いつかの日にか、俺の料理を食べてくれると嬉しいよ」
「はい、楽しみに待っていますよ」
「うん。がぶり姉ぇの弟子として恥ずかしくない料理を作って精進するよ」
「今の聖さんは、なにを目指しているのですか?将来の夢はあるのですか?」
ミカエルさんの質問だった。
「そうだな。今、出来る事はなんでもやりたいと思っているよ。そして、これだと思った事を専門的にやりたいな。前世は妹達のサポートをやるためにスポーツのトレーナーか、スポーツ整体マッサージ師になる為に専門の高校に行く予定だったんだよ。妹は剣道。弟は野球で、ちょっとした有名人だからな」
「前世の聖さんの自分の将来の夢は?」
「それが前世だった時の将来の夢さ。妹達がスポーツの世界で活躍してくれるのが、前世での俺の夢だったのさ」
「自分自身よりも弟妹達の夢を優先的に?」
「俺があいつらの父親代わりだったからな~。自然と献身的にもなるよ」
「ガブリエル?貴女はなにも言わなかったのですか?」
「言えないですよ。私の本音は聖さんにも表舞台に立って貰いたかったですけど、輝く為には裏方も必要でした。初めは私一人で全てこなすつもりでしたが。しかし…………聖さんが自分もやりたいとね………」
がぶり姉ぇはあの事はミカエルさんに言わなかった。
「そうでしたか」
「さあ、着きましたよ。ここが王妃様のお母様の部屋ですよ」
「あ、ああ………」
母さんとの対面か?神聖王よりも緊張するぜ。
一言を言えば母さんは滅茶苦茶で破天荒な人物だ。




