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立ち会いと………… 10

 風帝は私のパンチ一発でノックアウトした。


 そして、


「風帝、貴女をここに置いて行く!ま、自力でここを抜け出したら、顔を見せて頂戴。それで許してあげるから」


「アッハハハ………無理ですよ。魔力を封じられた上に、牢の時よりも雁字搦めに拘束されていますからね」


 風帝は壁に手足を鉄で数ヶ所縫い付け、動けないように張り付け状態で拘束してある。普通でも抜け出せれない。


「そうね。じゃね」


「聖様。一つだけ」


「ん?なに?」


 後ろを振り返らずに言う。


「貴女様は一体何者なのですか?冥土の土産に教えて下さい」


「残念だけど、敵である貴女に教える義理は無いが、私の正体を知るヒントはあげたわよ。暇つぶしに考えれば良いわよ」


「そうですか?残念です………」


 私はその場を去った。


 拘束された風帝が残った…………。


「……………はぁー…………聖様の言う通りに謝って聖様に鞍替えしてれば良かったわね…………それに聖様は私が誰のスパイかは解っているようだわね………」


 風帝は主が居る場所を見た。今も扉の向こうで、無駄に騒ぎ立てているだろう。


「今更悔やんでも悔やみきれないわね………それに子供達が心配だわね………ごめんね………こんなダメなシスターで………」


 風帝の目から涙が流れ出ていた。


 そこに、


「全くよー!なんでこの俺が娘の尻拭いをしなければならないんだよ」


 文句を言いながら、1人の男が出て来た。


 突然、現れた男に驚く風帝。


「あ、貴方はどこから?いいえ、何故、ここに転移魔法をしたのですか?」


「あ?娘の尻拭いだよ!」


「娘の尻拭い?」


「そうだよ。これからここに居る連中を俺が地界に連れて逝くんだよ。コイツらは俺の俺達の逆鱗に触れたからな!」


「えっ!?地界?逆鱗?」


 訳が分からない風帝。


「そうだよ!俺の娘にあんな事をされて、にこやかにしている親が何処にいる?」


「……………」


 風帝は答えられなかった。そもそも風帝には、イヤ、セシルには産まれてから両親がいなかった。気付いたら、教会の孤児院に居た。そして、孤児院で育った。しかし、セシルは、魔法を使う才能があり、魔力量も周りの人間達よりも桁違いに多かった。それを当時の大司教の目に止まり、セシルは、暗殺者となるべく、孤児院から教会の暗殺部隊の養成機関に送られて、そこで、暗殺者としての技術や隠密としての会話術を学び、以来、セシルは、大司教の狗として、表向きはシスターと風帝として、地方の教会に勤務し、裏では暗殺者として、教会にとって、邪魔者を密かに始末していたのだった。


 セシルはそう男に語っていた。


「そうか………まあ、この世界では、孤児はありふれた話だな」


「そうですね………何故、私はこんな話をしてしまったのでしょうかね?」


「自分自身がもう助からない。だから、酷い過去の話でも誰かに自分自身の存在をしていたと残したかったのだろう?」


「そうかもしれませんね………」


「生きたいか?」


「出来れば………」


「ならば、選択肢をやろう!1つはこのまま死ぬか!もう1つは今までの記憶を無くして、違う場所で生きるかのな!」


「記憶を無くして生きるのですか………それじゃ、私が私で無くなってしまいますよね?」


「そうだな。今までの自分の人格や記憶を無くして、新たな人格の自分になって生きるという事だな。もちろん、今までの記憶が甦る事は無いぞ」


「そうですか………結局2つの選択肢を選んでも、『私』という人間は死んでしまうのですね?貴方様の選択肢はかなり意地悪ですね?」


「そうだな。だが、これは特別サービスだよ。お前がやって来た行為は許される事ではないからな」


「…………そうですね………私がやってきた行為は教会の教えに反する行為です。でも、私はその事でしか、生き方を知りませんでした………だから、日向の人間が眩しかった………私も本当はそういう場所で生きたかった」


「そうか………ならば、そうすれば良かったのでは?という言葉は、その相手に対して無礼な言葉だな。他人の生活環境も知らずに考慮無しの言葉だ。お前が過ごした環境は世間が極々小さく狭い環境で育って来た。そういう環境で育って来た者に対して言える言葉ではない」


「そうですね。私、貴方様の正体が分かりましたよ………そして、聖様も人が悪いなぁ。私と初めて会った時になんて言ったと思います?『私は神です』と、言ったんですよ…………ハハハッ、確かに『私は神』。聖様は本当の事を言った訳ですね?コレって、全くのヒントでもないでしょう?答えそのものでしょう。しかし、私は初めてその言葉を聴いた時は、何を言っているんだコイツ、頭でも狂ったのか。と思ってしましたが…………本物の神様じゃあ言って当たり前の言葉ですね………私はとんでもない事をやらかしてしまったのですね………」


 聖の正体も分かり後悔していたが、既に時遅しだった。

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