陛下達に報告 6
「お婆さんは、何故、ママの判断が正しいと思い知ったの?」
私がマリアの代わりに聴いた。
「なに、バラルの嫁さ。アレの家柄は悪くは無かったからねぇ。あたし達も結婚には賛成した。だけどね、アレの性格を考慮していなかったのさ」
「最悪だったの?」
お婆さんが自分の息子の妻の事を名前ではなくアレと言う。その言葉だけで、お婆さんはその人を相当嫌っていると分かる。
「その通りさ。アレは我が儘で散財を平気にする嫁だったのさ。最新作の服や宝石類を買わないと気が済まない性格でね。その最新作を常に身に着けていないと癇癪を起こす事がしょっちゅうだった。あたしは、そこまで酷くはなかったからねぇ。そこはあたし達の大失策さ」
その話を聞いた私達全員は呆れ顔になった。何?その疫病神と貧乏神が同時に憑いたような女は?大失策どころではいないでしょう。おそらく、実家の方でも厄介者として扱っていたかもしれないわ。
「そんな行為をしたら、いくら大貴族の火の貴族で大金持ちと言っても、幾らあっても足りないね?」
「その通りさ、それでも、アレを追い出す事は出来なかった。家のプライドがあったからねぇ離婚が出来なかったのさ。
そして、あたしは段々と旦那と息子と反りが合わなくなって、旦那達に嫌気がさして家を出たのさ。
あたしは、ここで勤めながらも、何年間、外を見回って、リリカが言っている事が正しかったと確証した。それにリリカは去る前にこんな事を言っていた『一般人でも私達貴族よりも優秀な人間は沢山居るわ。その人達が政治や色んな場所で活躍出来たら、この王国はもっと良い国になる。そして、私が選んだ人もそうだ。貴方達よりも遙かに立派で優秀な人間よ』とねぇ。
今のあたしには理解が出来るよ。
貴族とか平民とか関係ない、優秀な人間はどこからでも生まれて来るとね。あたしが間違っていた。お嬢さん、あたしを許しておくれとは言わない。貴女達には酷く苦労をかけてしまって済まない事をした」
お婆さんはマリアに頭を下げた。
「…………」
それに対してマリアは黙っていた。イヤ、何も言えなかった。
マリア自身、このお婆さんになんて声をかけてあげていいのか分からないようだった。私が代わりに、
「お婆さん?貴女達の行いはけして許される行為ではないよ。いくら自分が産んだ我が子と言えども、縛る事は出来ないよ。子供は親の操り人形ではないのだから。子供にも自分の考えを持っているよ。それを判断が出来る意志があるのだから。ママも自分の意志でパパを選んだ、貴女達が猛反対を受けても変わらない意志を持って、将来得ただろう全ての地位や名誉を捨ててまで」
そう言った。
「そうだねぇ。結果がそうだからねぇ………。もし、あたし達がファルコンさんを………イヤ、当時は出来なかったねぇ。今より更に厳しい貴族達の目があったからねぇ、平民であったファルコンさんを受け入れる事は出来なかったねぇ、例え、どこかの貴族の養子に入っても、あたし達は、火の貴族の地位や名誉を気にしたからねぇ」
「その当時は今よりずっと身分に煩かった時代だ。どの貴族達も結婚相手の家柄や身分を気にしながら相手を選んでいたのだ。その当時は、ファルコンやリリカのような恋愛は王侯貴族では珍しかったのだ」
陛下がフォローをした。
当時は相手の家柄や身分を気にするあまり、どこも相手の性格は二の次だったのだろうね。
「そうですか。おそらく、火の貴族はその妻を迎え入れた為に資金難に陥っていたのでしょうね。そこで、前火の貴族の当主は、自分の妻の為に金策の為に犯罪に手を染めた訳ですか?はっきり言って笑えないわ」
内情を知れば、何故、犯罪行為に手を染めた理由が分かる。
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