巻き込まれた!?
私が公園に行くと、大道芸がやっていたが、既にメインのメアリーのナイフ芸をやっている最中だった。メアリーのナイフ芸は、メアリーがダンスを踊りながら、的に当て行くという芸だ。
それにしてもあんなに激しく踊っているのに、相変わらず、的確に的に当てているな。
前回も見た時もそうだった。
それが終わり、これで終了かなと思っていたら。
「最後にお客様に手伝ってもらい、とっておきの芸を披露します」
そう言うと観ていた観客から『オオッー』と歓声が上がった。
ほう?そんな芸があったんだ?というか?なんか嫌な予感がするな?人間、そう思うといつも。
「あっ!そこの変わった服を着ている女性の方!来て手伝って下さい」
メアリーがそう言うと客達も一斉に振り向いた。私も真似をするが、私の後ろには誰も居ないぜ…………。
「そこの最後方にいる女性のお客様。貴女ですよ。私の方へ来て下さい」
メアリーの声が少しイラついていた。仕方なくメアリーの方へと行く。
「はい。このお客様に手伝っていただくのはこの果物(リンゴに似た果物)を両手に持ってもらい、私がその果物をナイフで同時に当てます」
メアリーはそう言った。
観客は先ほどの『オオッー』との声とザワザワとざわめく声が聞こえた
私の方はマジかという感情だ。これなら終わった時に来れば良かったな?
「こちらとはプロよ。絶対にケガはさせないから動かないで」
メアリーが小さな声で言う。
やれやれ、仕方ないか?失敗しても回復魔法はあるし、その前に肉体を強化魔法を使えば問題ないわ。
ま、メアリーが投げるナイフのスピードも私にしたら速くはない。ナイフがすっぽ抜けて、違うコースに行っても躱す自信がある。
「お客様の準備が出来ました。しばらく集中しますので、お静かにお願いします」
私は両手に果物を持って腕を真横にしている。
メアリーが集中力を高めている。そして、『はいいやぁ!!』とのかけ声共に2本のナイフが同時に投げられて、見事に左右の果物にナイフが刺さると、観ていた観客から盛大な拍手と歓声が沸き起こった。
大成功だな。ダンさんがこれで終わりの挨拶をすると、団員達がお金を回収する。今回はかなりの金額になったようだ。
「いやー。聖様のおかげでかなりの金額になりました。ヤジリに聴いたら、貴女様が来ると」
「だから、やったのよ。他の客達ではびびって出来ないし、他の団員達だと何かズルしているのだろうと、客達に難癖付けられてしまうわ」
「あれは私専用の芸かよ!?」
そう突っ込んだ。
「良いでしょう?結果は大成功で終わったから。けど、結構目立つ格好で来てくれて助かったわ。直ぐに分かったけどさ。この服って何?」
「ハァー。これは着物だよ。私達が育った国の民族衣装さ」
「俺達は着物を着たいと思っていたらな。今、姉貴が着ているのは女性の着物だ」
休みの日には着ていようと思っていたが今回は裏目にでたな。
「聖様、これはそのお礼です。どうぞお納め下さい」
と、お金を差し出した。
「ああ、もらっておくよ。でだ、私が来たのはメアリーの状態だ」
メアリーをジッと見る。
「大丈夫だな。神にはなって居ないわ」
「そう………けど、複雑だわ。もう隠しても仕方ないけどさ。ヤジリと一緒になって死後には私も神様に成るのでしょう?」
「まあね。神になるといっても、今は魂だけだよ。人間には変わりはないよ。死後に神になるだけだからさ」
「そうなのね?やっぱ、貴女の話を聞いたら余計に複雑な気分だわ」
「だろうね?ま、サトルと付き合って、生涯ずっと共にするならね。もし、別れるなら、神にならなくて良かったと思うしな?」
「今、ヤジリと別れる事は全く考えてないわよ」
メアリーは言い切った。
「というか、俺達の前で2人で何を話しているんだよ!それに団長達はニヤニヤしない!!」
「イヤ、お嬢にも好きな男が出来て良かったなとな?」
「ああ、俺達はおっさんだからな。3人のおっさんがいて、お嬢に恋愛が出来るかと心配になっていたんだよ。これでも俺達はお嬢を一人娘と思っているしな?」
「そうだな。メアリーは俺達3人の娘だ。メアリーはいい男と巡り会えたと思っている」
「うっ////」
「は、恥ずかしいわよ。パパ////」
「はいはい。ごちそうさん。で、まだ、あなた達に頼み事があるんだよ」
私は真面目な顔になった。
「えっ?頼み事ですか?」
「ああ、夕方にまた宮殿に私と一緒に行ってもらいたいんだよ」
「えっ!?な、何故ですか?」
「まさか?パパ達を!?」
ダンさんは緊張している。メアリーは勘違いをしている。
「違いますよ。頼み事と言った筈だ。私は嘘を付かない。その頼み事とはな。陛下達の前であなた達の大道芸を披露してもらいたいんだよ」
「えっ?俺達が陛下達の前で芸を!?」
ダンさん達が驚いていた。
「そんな………私達が陛下の御前で芸なんて………緊張して出来ないわ………」
「おーい?なにふざけた事を言っているんだ?私達の正体を知っているでしょうに」
「ええ。ヤジリ達は神聖王様の………あっ!?」
「解ったか?それも、自分で言うのもなんだが、私達は王族で王子と王女だよ」
「あっ!」
「その私を芸でなんの躊躇もなく使っているぞ?」
「…………」
メアリーはシュンとなっていた。ダンさん達もだ。サトルはあたふたしているから知らん。
「なにか勘違いしているが、私はあなた達を評価しているんだよ。私達と平気で話しているし、平気で芸で使う。それを考えたら、陛下達の前で芸をするのは楽だろう?」
「そう言われるとそうだけど、貴女はやらないでしょう?」
「イヤ、私も芸をやるよ。こんなのを」
近くにあった噴水なようなもので水を操る。
「おおっ!これは凄い」
「ま、この様に水を操る芸をするんだ」
「魔法を使っての芸か?」
「今までは白ける芸ばかりだったが………」
「聖様の芸は違っていそうだ」
「まあね。水で色んな形を創るからね。そして、サトル!お前も芸をやるぞ!」
「えっ!?お、俺はまだ芸は出来ないぞ」
「そうですよ。ヤジリはまだ芸を仕込み中ですよ」
「フン。サトル?お前、剣舞が出来るだろう?剣の型を剣舞に昇華させれば良いだろう?こんな感じでだ」
私は日本刀を創り、剣の型をやり、そして、剣の型を参考に舞って見せる。
「おおっ!すごい!確かにまだ荒さがあるが芸になっている」
「ああ、大道芸ではないが、踊りも立派な芸だ」
「そうね。私も踊りながらナイフを投げているわ。それに着物だっけ?それを着ているから余計に綺麗に踊りが見えるわ」
「しかし、着物を着てよく舞えるな?女物の方が体力をより使って大変だろう?」
「まあね。だが、舞えるぞ?そんなコトよりお前もこれなら出来るだろう?」
「ああ、良くやっていた型だからな。姉貴、刀を貸してくれ」
「ああ、これはやるよ。本物の真剣だからな気を付けろよ」
鞘に収めて渡す。
「分かった」
サトルも剣の型をやって見せる。
「久しぶりにやったが、体、イヤ、この場合は魂か?魂が覚えているな?なんとかなりそうだ」
「そうか?なら、私とやってみるぞ」
「ああ」
2人で実践してみるが、タイミングが合わない。全くのバラバラだった。
「全く、合っていないじゃない?」
「仕方ないだろう?初めて姉貴とやったのだからな?合わないのが当たり前だ」
「同じ人なのに?」
「私達はもう別人だよ。思考も違っているし、お互いに考えている事はバラバラだ。もし、サトルが突然変な会話をし出したらどうする?」
「それは気味が悪いわよ。私達と全く関係ないことを言うのでしょう?」
「そうなった時点で、気持ち悪くて即刻にクビにする!」
「なっ!?団長!それはないわ」
「ま、普通はそうなるわな?けど、そうはならなかった。それが証拠さ。だからこそ、練習が必要だ。サトル、コレから私の空間で練習だ」
「ああ、その方が良いな」
私達が空間に入って出て来たのが、8秒後の事だった。




