不穏な空気 3 山瀬 聖(男)の回想 1
俺、山瀬 聖は、俺の『 』である女と戦っていたが、本気を出したアイツには手も足も出ずにやられてしまった。
俺はこのまままた死ぬのか?
俺はなんのためにここに居るんだ?
俺は一体誰なんだ?
俺は…………。
~回想~
「うっ……………」
この世界に来て初めて目を覚ましたのは、森の中だった………。
「ここはどこだ?確か、幼女神に殺されて、違う世界に転生をしてくれると言ったが…………」
フラフラしながらも立ち上がり、周辺を散策したが、木々があるだけだったが、遠くの方から川が流れている音が聞こえたので行ってみる。喉が渇いたから水を飲みたいし、水は大事だからな。
行ってみると、やはり川が流れていた。上流に行くと池があった。その池を覗いてみると、俺の顔が写り込んでいた。
それを見て俺はホッとした。まあ、感覚的に分かっていたがな。しかし、あの幼女神が最後に言った台詞。『お姉ちゃん』という言葉が気になっていたからだ。そう言えば、魔法が使えたな?池の水よりも魔法の水の方が綺麗と思い、水の魔法を使おうとするが、全く出来ない。
「アレ?おかしいな?確か幼女神から万能の能力と魔力を貰った筈なのに?」
俺が知っているいろんな魔法を言う。勿論、有名な某RPGの呪文も言ってみたが、うんともすんとも出来ない。
そこで俺はあることに思った。
実は俺は地球上のどこかに居るのではないのかと。魔法が使えないのは地球だ。
もしかしたら幼女神は嘘を付いて俺を地球に送ったに違いないと。ならば、人を見つければ、日本にがぶり姉ぇ、舞、更夜の待つ家に帰れるのではないのかと。
そう思ったら、俺は走り出した。人を見つける為に、夢中で走り出した。
しかし、現実は非情だった。走っても人を見つけるどころか森を抜け出せれなかった。
俺の体力も限界に近づいていた。それにどこをどう走ってきたのかも判らない。体力が限界になり倒れて気を失ってしまった。この時、俺はこのまま死ぬんだなと思っていた。
再び気が付いた時に、ガラガラとうるさい音が聞こえた。ゆっくりと目を開けると。
「あっ!?気が付いたの?パパー!気が付いたみたい」
女性がそう言った。
「そうか、良かったな」
中年男性が言う。この人が父親か?
「ここはどこだ?」
キョロキョロと見回す。
「ここは私達の馬車の中よ。今、移動中なのよ。貴方は森の中で倒れていたのよ?私達が偶然通りかかって、見付けて良かったわ」
女性が日本語でそう言った。
「そうか………ありがとう。助かったよ」
「どういたしまして」
俺も日本語で返したが、相手に言葉が通じているようだな?ここは日本なのか?イヤ、今の日本では日常では馬車は使われていないし、江戸時代も交通手段として使われていない。それに親子の髪の毛もヘアカラーをしている如く髪の毛が染まっている。
やはりここは異世界なのか?
「ねぇ?貴方は何故森の中にいたの?迷子になったの?」
「オイ?相手は子供ではないのだから迷子というのはおかしいだろう?」
「あっ!それもそうね?ごめんね?」
「イヤ、良い。今の俺は迷子という言葉が合っている。ここがどこなのか判らないし、どうして森の中にいたのかも判らないんだ。さまよい走って体力が尽きて倒れたのだから」
「そうなの?記憶喪失なの?」
「似たようなモノかもしれないな?」
俺はそう言った。
「似たようなモノ?そうだ貴方の名前は覚えているの?」
「ああ、俺はヤマセヒジリだ。ま、ヤマセがファミリーネームでヒジリがネームだ」
「へぇー?じゃあ。略してヤジリね?」
ニッコリと笑う女性。
「はぁ?オイ待てよ!何でヤジリとかになるんだよ!俺の名は聖だ!と言っているだろうが!」
「ええーっ!ヤジリの方が良いのに?」
女性は泣き声で目に涙を溜めていた。
『オイ!お前?お嬢を泣かすんじゃねぇよ!!』
馬を操っている男の声がした。
「泣きたいのはこっちだよ!!」
俺が叫んだ。
で。
結局。
「宜しくね?ヤジリ♪」
とうとう彼女に押し切れてしまった。
俺を拾ってくれたのは、旅の大道芸人達でメンバーが4人という小さな大道芸人団だ。団長は彼女の父親のダンさんで、その娘であるメアリー。そして、ゴンザさんとニートさんの構成だった。そこに俺が(強制的に)入ったのだった。




