報告 3
しばらくして、陛下が戻って来た。
「戻った」
「お帰りなさいませ」
「ウム」
「どうでしたか?」
王妃様が訊いた。
「ああ、聖殿の読み通りに悪魔召喚と聖殿達の事だった。まあ、内容を知らぬ振りして話を聞いたがな」
陛下は大きく息を吐いた。
「どうかなさいましたか?」
「ああ。聖殿?全帝の前で、全帝を超える魔力を開放したそうだな?全帝は全く認めようとはしなかったが?」
「はい、しましたよ。先生があの2人に現実を見せてやれと言われたので、3億程度の魔力量を。しかし、その程度の魔力量でビビっていましたが?」
「そうか?全盛期のファルコンと同じ魔力量でか?」
「はい、この程度の魔力量でビビるようでは先が思いやられますが?」
「そうだな?帝達の中では自分が最強だと過信している者もいるのも確かだ」
「だから、ステラ先生は私に魔力を放出させて上には上が居る事を分からせようと?」
「おそらくその通りだろうが、しかし、全帝は、聖殿の魔力量を実際に見てもまだ自分が一番だと思い込んでいる」
「それはダメじゃん!!それは意味ないでしょう?あっ!?素で言ってしまった」
反省だな。しかし、全帝というヤツは自分が最強だと思わないと気が済まないのか?
「イヤ、私もそう思う。だから、全帝があのままの状態なら、王家としては必要が無い。全帝という価値が無い!!」
そうなると全帝はクビか?
「お父様?全帝はクビですか?ならば、わたくしの権限で命令をしますが?」
クレアも俺と同じ考えをしていた。
「イヤ、今は様子見と言った事だな。しばらくは全帝の態度を見てみる。もし、駄目ならば解任もやも得ないだろう」
「分かりました。そのようにいたしますが、その後任は?」
「そうなのだ。その後任がいないのだ。イヤ、成れそうな候補はいるベルモット殿かファルコンあたりだろうが、ベルモット殿は年だ。ファルコンは目が見えぬから大変だろうな」
あっ!?そうか?陛下はパパの目の事を知らなかったな。
「陛下?パパの目は父さんの治療によって視力は回復しつつありますよ」
「なんと?そうだったのか?」
「はい、ですが、目が回復してもパパに全帝の仕事が出来るかは本人に聴いてみない事には分かりませんが?」
「そうだな?」
「それに、今、カフェがもの凄く繁盛していますので、これ以上の役職を任せると過労死をしてしまいますよ」
「そうですわ。ファルコンさんは平日でも働き詰めです。これ以上の役職は倒れてしまいますわ」
俺の意見に王妃様が賛同した。
「そうだな。ま、私が言ったのはあくまでも後任候補だ。まさか、帝に入った直後の聖殿をさせる訳にもいかぬからな?」
そう言って、陛下は笑った。
「断りますよ?それに」
「分かっている。入った直後に聖殿に全帝という役職を任命すれば、帝の質が疑われしまう。それ程、帝は落ちぶれているのかとな?だから、聖殿を全帝にさせる気はないし、クレアが万が一に任命しても私が却下する」
「お父様!?わたくしの前で言う言葉なのですか?」
「一応、釘を刺しておこうとな?」
「ま、クレアは言い出しそうだしね?」
「ウム、その通りだな」
「お父様!!聖!!」
クレアが怒った。
「クレア?落ち着きなさい」
「お母様?」
「陛下も聖殿も、貴女がうっかり暴走しないようにと先に釘を刺したのですよ?わたくし達の発言力はそれだけ強いのですからね。一度出した言葉を取り消す事は難しいのですからね?それだけ、わたくし達王家の言葉は重いのですよ」
「うっ!分かっておりますわお母様」
「よろしい」
話が一段落した。
俺は帰る。
その時に陛下が一緒に食事でもと言われたが、やはり、断った。再会した一家に関係がない俺がいない方が良いからな。俺がいれば遠慮されて、一家でつもる話が出来ないでしょう?
それを察した陛下が頭を下げ、お礼を言ってくれた。
そして、寮へと帰って行った。
寮に帰ったら、夕食の催促をされたのは言うまでもなく。




