報告 2
「全帝が余にか?」
「はい、謁見の間でお待ちでございます」
「そうか?」
陛下は俺を見る。
「そうですね?おそらくは悪魔召喚の事や私の事でしょうね?」
「だろうな?判った会おう」
「はい、分かりました。失礼いたします」
メイドが下がった。
「では、行って来る」
「はい、行ってらっしゃいませ」
陛下は部屋から出て行った。
「私も陛下が戻りましたら、帰ります」
「あら?夕食を一緒に食べていかないのですか?」
「お姉さん?一緒に食べよう」
「お誘いありがとうございます。しかしながら、今回はご遠慮いたしますよ。せっかく、御一家が揃いましたからね?それに私も帰って夕食の支度がありますので」
俺がそう言うと。
「あっ!そうよね?聖が夕食の支度をしないと誰も作れないんだったわ」
クレアが納得していた。
「そう言う事」
「しかし、聖様が料理を作るのですか?神聖王様のご令嬢様ですよね?」
テレサさんが質問した。
「それは関係ありませんよ。料理の作り方を教えて貰いましたのでね」
「そうなのですか?そういえば、聞きそびれたので聞きますが、聖様の弟君は違う所に居るのですよね?どうして、聖様はこの世界に?」
「ああ、そうですね?テレサさん達には言っていませんでしたね?私は別の世界で死んで、この世界に転生しました。前世の私は男です」
「男!?」
夫婦が驚いていた。
「そうです。イスレイくんと同じ男だったのですよ」
「ボクと同じ?」
「そうだよ。前は男だったのよ」
「うんん、今はお姉さんだよ」
「そうだよ。今はお姉さんだ」
イスレイくんの頭をなでる。
「ま、料理の作り方はその前世で習いましたからね。今でも出来るのですよ」
「そうね?お昼ご飯は美味しかったわ。ね?イスレイ」
「うん、美味しかった。また食べたい」
俺がカフェで働いている事を教えた。
「───そういう事です」
「そうなのですか?分かりました」
「テレサさん達も食べに来て下さいね?」
「はい、ありがとうございます。必ずお伺いいたしますわ」
~謁見の間~
国王が謁見の間に行くと、全帝が畏まっていた。陛下は玉座に座り。
「全帝、面を上げ」
全帝は顔を上げる。全帝は仮面を付けていた。王の前でも帝の正装だから仮面は失礼に当たらない。
「今日は余になんの用だ?」
「はい、今日、私を含め3人で悪魔召喚を行っている現場に踏み込みましたが、既に賊達は壊滅状態になっておりました」
「ほう?ならば、誰がお前達よりも先に来てやった事だろう?その程度の報告ならば、余に直接言わなくても良いであろう?」
「はい、ですが、悪魔召喚の首領は元教皇が指導していました」
「何!?元教皇がか?で?元教皇は、捕まえたのだろうな?」
国王は知らない振りをして話を進めている。
「いいえ………先にやって来た女性達が元教皇を持って行きました。おそらくは、所属しているギルドマスターから連絡が来るかと思います」
「そうか。しかし、これは、大事件だな?元教皇が悪魔召喚をやっていたとはな?この事を知ったら信者達が反乱を起こす事になる」
「ッ!?」
全帝は仮面の中で目を見開いた。
「で、では?我々が元教皇を捕まえた方が良かったと?」
「イヤ、それらは判らん。その女性達の所属しているギルドマスターがまともな良識があれば騒ぎは起きぬだろう。元とはいえ、教団の教皇を勤めた男が悪魔召喚の首領をやっていたなんて世間一般に知られたら、先ほど余が言ったような事が起こるだろう?」
「で、では!!そのギルドマスターやギルド員達の口止めを!!」
「全帝?お前はその女性達の所属ギルドを知っているのか?」
「い、いえ。で、ですが、時帝さんなら知っております。時帝に連絡を取れば」
「ならば、そうしろ」
「はい」
「話は以上だな?」
「いいえ、まだ、あります。その女性達の事です。その女性達の一人が私よりも高い魔力量を持っていました」
「ほう?それは僥倖だな。我が王国は高い魔力量を持つ人間はそれ程いないからな」
「しかしながら、私よりも高い魔力量を持つ人間は、この世界にはいない筈です」
「ほう?昔はお前よりも高い魔力量を持っている人間はゴロゴロいたが?余の部下だった者もそうだった。それともお前は全ての全国民の魔力量を把握していると?」
「いいえ、してはおりません。それに昔は昔です。今は、いない筈です!」
「全帝よ?お前よりも高い魔力量を持っている人間は必ずいるぞ?それは余も否定は出来ぬ。それらの者達は今までこの表舞台に立たなかっただけの話だ!今後はきっと出て来るだろうな」
「しかしながら、私よりも高い魔力量を有する人間なんている筈がありません!!現在、私が一番なのです!!」
全帝はムキになって言い出した。
「分かった分かった。確かに現段階では公式ではお前が一番だ。ならば、その一番を抜かれないように努力をしろ」
「はい、そういたします」
全帝は頭を下げた。そんな全帝を見て呆れた目で見ていた。
どうやら、全帝は、国王に認めて貰いたかったようだ。
しかし、当の国王は。
「(やれやれ、もうこの全帝は使えないな。自分が一番ではないと気が済まないようだな。これでは職務を全う出来まい。近い内に交代させたいが、帝も人材不足だ)」
国王は既に全帝に見切りを付けていた。
しかし、国王の言うとおり、今の帝は人材不足だ。全帝という役職を任せられる人材は学園長しかいないのが現状だった。しかし、学園長は年だ。かと言って、帝に入って直ぐに聖に任す事は出来ない。自分達が無能だと言っているようなものだ。
国王の悩みの種がまた一つ増えたのだった。
この世界のギルドの役割。
ギルドは薬草採取やモンスター・魔物の討伐の他に人捜しや犯罪者の捕獲・逮捕。バウンティーハンターの役割がありますので、王都でもギルド活動が出来るのです。
帝は一般ギルドでは手に負えない依頼を処理している組織ですが、基本はソロでやります。
後、月イチで帝の集まりがあります。




