報告 1
「イスレイ?聞きましたか?聖殿は、貴方を心配して言ってくれているのですよ?わたくしと別の部屋に行きましょう」
「……はい、お母様」
イスレイくんはしぶしぶといった感じで王妃様と部屋を出た。出るまで俺の顔を見ていたから。
「で?聖殿?イスレイに聞かせれない話とは?」
「はい、これは、テレサさん夫妻に関係がある話です」
と、たまたま夫妻と出会った経緯を話した。
「なっ!?まさか!?元教皇が悪魔崇拝者!?」
「信じられないわ………そんな人が神聖王様の教団のトップに居たなんて…………」
「俺達を付け回していた元凶が元教皇!?」
「だから、帝も動いていたのね?」
俺の話を聞いた4人はショックを隠せれないでいた。それもその筈だ王家は父さんの信仰が深く、教団との繋がりも深い。その教団のトップであった元教皇が悪魔崇拝者をやっていたのだから前代未聞だ。
「はっきり言えば、元教団トップがこんな状態です。幹部達も相当腐敗している可能性が高いですが?」
「ウム、確かにそうだな。その可能性が高いが………だが、我々は手が出せない。何故なら、元教皇は既に教団とは関係ないからだ。我々が行っても無関係だと言い張って追い返されるだけだ。踏み込むには現行犯ではないといけない」
「そうかもね?教団の力は強大になっているわ。それに信徒や信者達も………ハァーこれは本当に子供には聞かせれない話だわ。それで元教皇は聖のボックスの中に居るのでしょう?」
「ええ、居るよ。陛下に突き出したいからね。それにこの元教皇の姿をイスレイくんには見せたくなかった」
真の理由を言う。犯罪者を子供には見せたくない。
「そうね?話よりもより毒だわ」
「そうか。そういう事ならば少し待っててくれ」
陛下は席を外した。しばらくすると、陛下と2人の兵士がやって来た。陛下は護衛として兵士を呼んだようだ。
「この2人は余の親衛隊の隊長と副隊長だ。この娘は、ファルコンの娘の聖殿」
「はじめまして、ファルコン・マーカーの義理の娘聖です」
親衛隊の2人に挨拶をする。
「ファルコン大隊長の娘さんですか。我々は、新人の頃に大隊長には大変お世話になりました」
隊長と副隊長が頭を下げた。更に話を聴けば、パパは親衛隊の中では、アトランティスでの戦いが伝説になっているという。パパが退役した後でも親衛隊では今でもパパの事をファルコン大隊長と呼んでいるみたいだ。
「そうですか?父にそうお伝えいたします」
「「はっ」」
挨拶が終わり。
「聖殿、元教皇を出してくれ!」
「はい」
袋詰めにされた元教皇をボックスから出した。
「んー!!んー!!」
猿轡をされているから喋れない。
「いい様だな?お前の悪行は既に明白だ!!死刑執行の日まで、そのままの状態で過ごせ!!親衛隊!連れて行け!!」
「「はっ!!オイ!」」
更に数人の親衛隊員が来て、元教皇を運び出した。
「では、我々は失礼いたします」
親衛隊隊長は敬礼をして退出した。
そして、王妃様とイスレイくんが戻って来た。陛下は王妃様に説明をした。王妃様は驚いていたが、悲しい表情も見せていた。
イスレイくんはまた俺に抱っこをねだったので再びした。
「私が甘かった。まさか、我が娘夫婦に危害が及んでいたとは…………」
陛下は父親として悔やんでいた。
「でも、わたくし達は、聖様やアトランティスの人達によって助かりました。もし、アトランティスの人達に保護してくれなかったと思うと………」
「ああ。そうだな………聖様やアトランティスの人々がいなかったら、俺達はどうなっていたかが、結果的には助かった。聖様改めてお礼を申し上げます」
「「ありがとうございました」」
夫婦だけではなく、陛下と王妃様、クレアまで頭を下げた。
「良いですよ。私も将来的にはクレアの義理の姉となりますからね?」
「えっ?クレアの義理の姉?」
「一体どういう?」
「ちょっと聖!なんて事を言うのよ!!」
陛下達は疑問を持ち、クレアは慌てていた。
「あれ?まだ陛下達に話していないの?貴族達の前で公表したからてっきり話したと思ったが?」
「話していないわよ!」
クレアは大きく溜め息を吐いた。
「一体?何の話なのだ?」
「わたくし達に話せない内容の話なの?」
「いいえ、フレイム家で行われた晩餐会の時にわたくしがガルーガに対して言った言葉の事です」
「ああ。確か、自分は神様と結婚すると言っていたな?」
「はい、わたくしは本当に神様と結婚をします」
「えっ?神様と結婚って?クレア?どこの神様と結婚をするのだ?まさか?神聖王様とか?」
「ブッ!!陛下?私の話を聞いていましたか?私はクレアの義理の姉になるのですよ?父と結婚するなら、クレアが義理の母でしょう?」
「ああ、そうだったな?では、聖殿の弟君とか?聖殿の弟君はこの世界に居るのか?」
「いいえ、まだ、いませんが、わたくしが行おうとしている勇者召喚で喚ぼうと思っております。幸いに神聖王様達や聖も容認しておりますので」
「そうなのか?」
「はい、こちらでは、勇者召喚と言っていますが、あちらでは、誘拐事件に相当する大事です。しかし、幸いにも私の弟妹がこの世界に来たがっておりますので、双方の思惑は一致していますよ。ま、その恋愛はクレアと弟、更夜次第になりますがね?」
「そうか?クレアはその更夜とやらに?」
「はい、神聖王様に家族写真を見せてもらった時に一目惚れをしてしまいました。将来、一緒に遂げるのはこの人だと」
「そこまでにか?」
「はい」
「本気のようだな?」
「本気です。ですから、聖にも協力をして貰います」
「そうか?しかし、まさか、クレアが神聖王様の御子息様を惚れるとは思いもよらなかった」
「本当ですわね?しかしながら聖殿も承認していますし」
「まあ、更夜の外堀は既に埋まっていますよ。後はクレア自身で内堀を埋めれば良い訳です」
「そのようですわね?」
「はい、頑張ります」
「その前に勇者召喚を成功させないとね?」
「そうね」
コンコンコン。とノックの音がした。
「誰だ?」
「失礼いたします。陛下?全帝様が御面会をご希望されておりますが、いかがなさいますか?」
そうメイドが陛下に報告をして来た。おそらくは悪魔崇拝者と俺達の事だろうな?




