土日限定の料理人
第二部開始です。第二部のエピソードはかなりありますので長いです。
その週の土曜日の昼。
俺、聖 山瀬は、パパの経営するカフェ・ネコノメの厨房で料理を作っている最中だった。
次の日にママに言って、土日の昼間の厨房係を引き受ける事にした。そして、ミカ姉ぇ、ヒルドさん、ルエルさんの3人は、寮部屋に居ても暇を持て余しているので、平日や土日にウェイトレスとして働く事になった。
マリアとリクはギルドでクエストをやっている時はヒルドさんとルエルさんはそちらに行っている。実質4人でパーティを組んでいる。
「はい、料理が出来たよ!」
「はい、チーフ!」
と、アルバイトの女性が言う。
ちなみにアルバイトのウェイトレスは数人居て、ローテーションを組んで働いていた。そのアルバイトのウェイトレスもギルドに所属して居るので掛け持ちだ。
「チーフはないでしょう?私は最初の方だけウェイトレスをやっていたけど、もうほとんどやらないからね?」
「いいえ、チーフは私達よりも優れていますので」
「そういう事にしましょう。料理を持って行ってね?」
「はい」
次の注文の料理に取りかかる。
ピーク時には厨房が戦場のような忙しさだ。
パパはこんなのを毎日やっているのか?イヤー、あの頃の閑古鳥時代が懐かしいのう。
そのパパなんだけど、俺が厨房で料理を全て作っているので、コーヒーのドリップやケーキなどのスイーツを中心に取り扱っている。パパは、ケーキの他にドリップコーヒーの研究をして、前より更に美味しいコーヒーを淹れられるようになったが、こう忙しいと、コーヒーに時間が取れないので、特に忙しい土日の昼間の厨房を俺に任せたのだった。
そして、兄さんは相変わらずの皿洗いに没頭中。絶対に料理を作らせない。
昼の部は11時から13時30分までだ。
時間的にもう少しで終わるが、終わるその直前にミカ姉ぇからこんな注文が入った。
「聖さん、ラストオーダーです!ハンバーグセットと『お姉さんが作った物ならなんでも』です」
とのオーダーが入った。
一瞬、『はぁ?』と思ったが、『お姉さんが作った物ならなんでも』で、思い当たる節が。
「ミカ姉ぇ?もしかして、イスレイくんが来ているの?」
「はい。他のウェイトレスが応対していましたが、その注文で困っていたので、代わりに私が応対いました」
「判った。イスレイくんには、特別な料理を作っておくよ」
「はい」
ミカ姉ぇは戻り、パパが来た。
「王女様と王子様がお忍びで来ているのか?」
「そうだね?しかも、終わる直前に来ているから、長居も出来る」
「そうだな。知らない仲でもないしな。よし、俺は特別にコーヒーとジュースをサービスをしよう」
「そうだね。お願い」
「ああ」
俺は、最後の注文料理を作り上げた。
イスレイくんには、特別料理のお子様ランチだ。カフェの料理メニューには載ってはいない料理だ。
その料理を自ら持って行く。
「お待たせしました。ハンバーグセットと特別料理、お子様ランチです。飲み物はサービスとして後から来ますので」
「ありがとう」
「美味しそう。これって、お姉さんが作ったの?」
「そうですよ。では、ごゆっくりと」
一礼して、立ち去ろうとしたが。
「お姉さんは食べないの?一緒に食べよう」
「私達は、お客様が帰った後で食べるよ。その料理をこれから作るのよ」
「そうなの?」
「だから、冷めない内に食べてね?」
「………うん」
「イスレイ?私達はお客として来ているのよ?だから先に食べましょう?せっかく、聖が貴方の為に特別に作った料理なのだからね?」
「………はい、お姉様」
イスレイくんがお子様ランチを食べ始める。
「美味しい」
「そう、良かったわ」
「うん、お姉さん?これってなーにー?」
「これはタコさんウインナーというのよ。食べ物を動物に見立てて作ったのよ」
「そうなんだ?………うん、美味しいよ。それに色々とあるから、ボク、気に入ったよ。また作って」
「ええ。いつでも作ってあげるわよ」
「ワーイ!やったー!」
喜んで食べているイスレイくん。この表情を見れば作った甲斐があったな。俺は厨房に戻り、皆の賄い料理を作った。




