表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

197/729

出会い 1

 養子の手続きをやり終えて。


「学園在学中は非公表としますわね。リクが卒業したら公表しますわ」


「判りました。お母様」


「これで、私とリクは姉妹だわ」


「そうですね」


 しばらく、雑談しながらお茶を飲んでいると。不意に。


『王子様!お待ちください!………あっ!そこは行ったらダメです!!』


 大人の女性の声が聞こえたかと思えば、小さな男の子が入って来て、王妃様に抱き付いた。


「あらあら?どうしたの?」


「おかあさま。ボク、勉強が嫌です。したくない!」


 と、男の子がはっきりと拒否した。


「この子は?」


「わたくし達の子供のイスレイ・ヴァン・ファーネリアですの。年は今年で6才。今は5才ですわ。来年からは初等部に入学する予定ですので、早いうちから学習をと思いましてね」


 早期学習か。王家だから余計に大変だ。


「なるほど」


「失礼します!さあ!王子様!お部屋に戻ってお勉強を続けますよ!」


 と、女はずかずかと入って来て、男の子の腕を乱暴に引っ張る。


「嫌だ!痛い!放して!」


「ちょっと!なにイスレイに乱暴な事をやっているのですか!!まだ子供なのですよ!!」


 王妃様が女を叱咤する。


「申し訳ございませんでした。しかしながら、勉強が予定よりも遅れておりますので………」


 頭を下げながらも言い訳をする。


「お前の家庭教師には感謝するが、予定を理由に我が子を乱暴に扱うのは遺憾だ!!」


 陛下も女に注意する。


「申し訳ございませんでした」


 女は再び頭を下げた。


「ねえ?キミ?私とお散歩に行こうか?顔色も悪いし、気分転換にさ?」


 俺が声をかけると。


「えっ?良いの?行く行きたい!連れてって」


 と、目を輝かせながら言う。


「分かった。陛下?王妃様?この子と散歩に行っても宜しいでしょうか?」


「そうですわね。聖殿、イスレイを散歩に連れてって下さい」


「そうだな」


「そ、そんな!?勉強の予定が詰まっているのですよ!?」


「その勉強が詰まっているから、この子の顔色が悪いのでしょうが!!逃げ出したのが何よりの証拠だ!!家庭教師ならその位察しろ!!」


 反対する女を一喝する。


「…………」


「さあ、行きましょうか。あっ、ちょっと待っててくれる」


 俺は着物から普通の服へと替える。


「聖さん?まさか空の散歩ですか?」


「ご名答。さすがミカ姉ぇだ」


「ならば、私も行きましょう」


「私も行きます」


 ミカ姉ぇとルエルさんも席を立つ。俺達の散歩に同行するみたいだ。これは豪華な散歩になるな。


「空の散歩か………良いわね」


「本当だわ。私も行きたいわ」


「私もですよ」


 3人が羨ましがっていた。


「さあ、私の背中に」


「うん」


 イスレイをおんぶして、ベランダに出て。


「1時間程で戻ってきますので」


 と言って、体を浮かばせる。


 ミカ姉ぇとルエルさんは翼を出し、その翼を広げ飛び立った。


 俺もその後を追うように飛んで行く。


 しばらく、高度を上げて安定する。結界をしてあるから風の影響はない。


「はい、目を開けてもいいよ」


「…………うわあーー!!凄い!ボク、空を飛んでいる!!」


「どう?良い眺めでしょう?」


 街が一望出来る。


「うん。凄いや。……………ねえ?お姉さんは、新しい家庭教師なの?」


「違うよ。私は貴方のお父様に呼ばれたから来たのよ」


「そうなの…………」


 声が弱々しかった。明らかにがっかりとした声だった。


「あの家庭教師が嫌なの?」


「うん………だって、1日中勉強だけなんだもん。全く遊んでもくれないもん。ボクが遊ぼうとしたら、そんな事よりも勉強しなさいだもん。詰まらない。勉強は嫌い!もっと遊びたい!」


「そうか。確かに、遊びも大切だ」


「そうでしょう?」


「でもね。勉強も大切なんだよ。キミの年で言っても分からないと思うけどね。勉強は大切なんだよ」


「そうなの?お姉さんもあの家庭教師と一緒なの?」


 寂しそうな声を出す。


「違うよ。勉強も遊びも大切なんだよ。キミの年では余計に遊びの方が大切なんだよ。遊びは頭の発想が良くなるんだよ。コレはずっと勉強をしているよりも効果が良いんだよ」


「そうなの?ボク、分からない」


「だよね?宮殿で暮らしているから、同年代の子とは遊んだ事がないよね?」


「うん………ない」


「まあそれは仕方ないか。良し、散歩から帰ったら、私が遊んであげるよ」


「本当に?」


 声が明るい声になった。


「ええ、後は少し勉強もみてあげるよ?」


「勉強は嫌。ボクと遊んで欲しい」


「ん。分かったわ」


「お姉さん、約束だよ」


「ええ」


 1時間、空の散歩をし宮殿に戻った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ