出会い 1
養子の手続きをやり終えて。
「学園在学中は非公表としますわね。リクが卒業したら公表しますわ」
「判りました。お母様」
「これで、私とリクは姉妹だわ」
「そうですね」
しばらく、雑談しながらお茶を飲んでいると。不意に。
『王子様!お待ちください!………あっ!そこは行ったらダメです!!』
大人の女性の声が聞こえたかと思えば、小さな男の子が入って来て、王妃様に抱き付いた。
「あらあら?どうしたの?」
「おかあさま。ボク、勉強が嫌です。したくない!」
と、男の子がはっきりと拒否した。
「この子は?」
「わたくし達の子供のイスレイ・ヴァン・ファーネリアですの。年は今年で6才。今は5才ですわ。来年からは初等部に入学する予定ですので、早いうちから学習をと思いましてね」
早期学習か。王家だから余計に大変だ。
「なるほど」
「失礼します!さあ!王子様!お部屋に戻ってお勉強を続けますよ!」
と、女はずかずかと入って来て、男の子の腕を乱暴に引っ張る。
「嫌だ!痛い!放して!」
「ちょっと!なにイスレイに乱暴な事をやっているのですか!!まだ子供なのですよ!!」
王妃様が女を叱咤する。
「申し訳ございませんでした。しかしながら、勉強が予定よりも遅れておりますので………」
頭を下げながらも言い訳をする。
「お前の家庭教師には感謝するが、予定を理由に我が子を乱暴に扱うのは遺憾だ!!」
陛下も女に注意する。
「申し訳ございませんでした」
女は再び頭を下げた。
「ねえ?キミ?私とお散歩に行こうか?顔色も悪いし、気分転換にさ?」
俺が声をかけると。
「えっ?良いの?行く行きたい!連れてって」
と、目を輝かせながら言う。
「分かった。陛下?王妃様?この子と散歩に行っても宜しいでしょうか?」
「そうですわね。聖殿、イスレイを散歩に連れてって下さい」
「そうだな」
「そ、そんな!?勉強の予定が詰まっているのですよ!?」
「その勉強が詰まっているから、この子の顔色が悪いのでしょうが!!逃げ出したのが何よりの証拠だ!!家庭教師ならその位察しろ!!」
反対する女を一喝する。
「…………」
「さあ、行きましょうか。あっ、ちょっと待っててくれる」
俺は着物から普通の服へと替える。
「聖さん?まさか空の散歩ですか?」
「ご名答。さすがミカ姉ぇだ」
「ならば、私も行きましょう」
「私も行きます」
ミカ姉ぇとルエルさんも席を立つ。俺達の散歩に同行するみたいだ。これは豪華な散歩になるな。
「空の散歩か………良いわね」
「本当だわ。私も行きたいわ」
「私もですよ」
3人が羨ましがっていた。
「さあ、私の背中に」
「うん」
イスレイをおんぶして、ベランダに出て。
「1時間程で戻ってきますので」
と言って、体を浮かばせる。
ミカ姉ぇとルエルさんは翼を出し、その翼を広げ飛び立った。
俺もその後を追うように飛んで行く。
しばらく、高度を上げて安定する。結界をしてあるから風の影響はない。
「はい、目を開けてもいいよ」
「…………うわあーー!!凄い!ボク、空を飛んでいる!!」
「どう?良い眺めでしょう?」
街が一望出来る。
「うん。凄いや。……………ねえ?お姉さんは、新しい家庭教師なの?」
「違うよ。私は貴方のお父様に呼ばれたから来たのよ」
「そうなの…………」
声が弱々しかった。明らかにがっかりとした声だった。
「あの家庭教師が嫌なの?」
「うん………だって、1日中勉強だけなんだもん。全く遊んでもくれないもん。ボクが遊ぼうとしたら、そんな事よりも勉強しなさいだもん。詰まらない。勉強は嫌い!もっと遊びたい!」
「そうか。確かに、遊びも大切だ」
「そうでしょう?」
「でもね。勉強も大切なんだよ。キミの年で言っても分からないと思うけどね。勉強は大切なんだよ」
「そうなの?お姉さんもあの家庭教師と一緒なの?」
寂しそうな声を出す。
「違うよ。勉強も遊びも大切なんだよ。キミの年では余計に遊びの方が大切なんだよ。遊びは頭の発想が良くなるんだよ。コレはずっと勉強をしているよりも効果が良いんだよ」
「そうなの?ボク、分からない」
「だよね?宮殿で暮らしているから、同年代の子とは遊んだ事がないよね?」
「うん………ない」
「まあそれは仕方ないか。良し、散歩から帰ったら、私が遊んであげるよ」
「本当に?」
声が明るい声になった。
「ええ、後は少し勉強もみてあげるよ?」
「勉強は嫌。ボクと遊んで欲しい」
「ん。分かったわ」
「お姉さん、約束だよ」
「ええ」
1時間、空の散歩をし宮殿に戻った。