陛下と面談する 2
「どういう事ですか?」
俺はイラついたように言う。
「すまない。経緯を話そう。実は、昨日、突入した兵士達の報告によれば、火と闇の夫人が遺体となって発見されたのだ。そればかりか、その2つの屋敷で働いていた使用人達が全てが消えたのだ」
「なるほどね?私が火と闇の夫人を殺害し、使用人達全て残らずどこかに隠したと?疑っていると?」
容疑がかけられている訳だ。
「そういう事だ」
「そうですか。答えはノーですよ。私がその2人の夫人を殺しても何の利益がないし、そもそも、その2人の夫人の顔も知らないのですから。使用人達も同様ですよ。隠す意味がないし、仮に私が犯人だとすれば、こんな事をやる意味もない」
「そうですよお父様!聖が犯人な訳がありません!」
「最初から分かっている。聖殿があんな卑劣な事やらないという事はな。それに本当の犯罪者ならば、兵士達を向かわせるし、このような歓迎はしない。だが、法人としては話を聴かないとならない。たとえ、神聖王様のご令嬢様でもだ」
「それはそうですが………」
「まあ、陛下が言っている事は非常に真っ当な事だよ。私が(神聖王の子供と)公表していないから特別扱いは出来ないし、一般人と変わらないよ」
「それもそうだけど………」
「とにかく、その夫人らの死亡原因を知りたいですね?なにで殺害されたのかを?」
「ウム、夫人らの死亡は心臓部を何かで貫かれた事が原因だな。兵士達の話では、剣や刃物ではない何かで体を貫通していたという事だ」
「剣や刃物ではない何かでですか?」
銃はこの世界には存在していないから、殺害方法は銃ではない。もしも、存在していたら、距離にもよるが、貫通するぐらいの衝撃ならその体は原型を留めていないだろうな。
「ああ」
「という事は?」
考えられるのはただ一つだけだな。
「そうですね?」
「はい」
ミカ姉ぇとリクは判ったようだ。
「拳か?」
「はい」
「でしょうね?」
「拳で殺害した?それは相当な化け物では?」
「そうですね?人間で、その方法で殺すには不可能に近い殺害方法ですよ」
「そうですね。もし、人間で出来るならば、人体の事を良く知り、拳を極めた人間ですよ。ですが、この世界は魔法が発展していますので、そういう化け物じみた人間は少数でしょうね?それに医学も」
「では?真の下手人は?」
「おそらく、フレイム家に雇われた闘鬼という者だと思います」
「その闘鬼とは?」
「はい、昨日の事です」
昨日の事を陛下達に話した。
「で、私達の推測の域が出ませんが、闘鬼の正体は、16年前に死亡したアトランティス王の転生体だとの結構つけました」
「なっ!?アトランティス王の転生体だと?だが何故?いや、聖殿の魔法を掻き消した事実があるが………」
「そうです。魔法を掻き消したという技術はアトランティスで作られた闘気術しか私達には思い付きません。そして、その闘気術の使い手だった事もアトランティスの関係者以外」
「そうだな。アトランティスがか」
「アトランティスの村に住んでいる住人達は私が全て面倒を見ますよ」
「なっ!?聖殿が?何故?」
「アトランティスの人々も、父さんを敬っているからですよ。それに妹のリクの故郷ですからね?神聖王の子供である私が気遣えば、アトランティスの人々はもう変な気は起こさないでしょうね」
「ウム、それは確かに」
陛下は乗り気ではなさそ。
「アトランティスの事は任せて下さい。悪い事はないですから」
陛下の目を真剣に見た。
「………判りました。聖殿にお任せします」
「はい」
「しかし、その闘鬼は何故屋敷の使用人達全員を行方不明にさせたのかが判らない」
確かにそれは謎だな?
「聖さん?こういう事は考えられませんか?」
「えっ?まさか?」
ミカ姉ぇが言ったその言葉に全員が驚いた。