ルエルの決断は?
お姉ちゃん達が部屋に入って。
「ルエルさん?」
「は、はい。なんでしょうか?」
「ルエルさんは、私との使い魔契約を結ぶのは嫌なの?」
「………えーっと、なんて言うか、私が使い魔になっても良いのでしょうか?私は熾天使になったばかりですし、その………ミカエル様やヒルド様よりもそんなに能力もありませんし………見劣りをしてしまいますよ?」
「そんな事はないわよ。私達、人間から見れば、ルエルさんも凄い天使だわ」
私は素直に述べた。
「そうですか?ありがとうございます………ですが、やはり、私は貴女の使い魔には相応しくないですよ。貴女は神聖王様のご令嬢様ですよね?ならば、もっと優秀な天使を使い魔にした方が良いと思いますよ」
それでも拒否するルエルさん。ルエルさんは、やっぱり、私と使い魔契約が嫌なのかな?
「確かに、私は、パパ達の養子にして貰ったわ。だけど、それはただ運が良かっただけよ。お姉ちゃんに会わなかったら、私は、ただの人間だからさ。そうなると、ただの人間の私の方がルエルさんにふさわしくないわね?本来なら、私からは言えないかもね?言えたとしても、『お願いします。私と使い魔契約をして下さい』と頭を下げながら言うわね」
実際はどうだろうね。本来なら、天使を使い魔にするなんて出来ないモノね。したいなら、やっぱり、頭を下げて、お願いするしかないと思うわ。それか、自分の力量を見せるかどちらかだわね?
「どうして、貴女は私を?聖さんに言われたからですか?」
「お姉ちゃんは関係ないわよ。私もルエルさんとは相性は良いと思うわ。それに、今、ふさわしくないなら、ふさわしく成れば良いんだしね?」
「それはそうですが………」
「何か気になる事でもあるの?」
はっきりしないルエルさん。
「ルエル様?何かマリアに不満でもあるのでしょうか?」
今まで、黙っていたエリサがルエルさんに話し掛けた。
「い、いえ、不満はありませんよ。ただ………私はこの世界に留まっても良いのでしょうか?私は、人間から転生した転生天使だったようです。私は、この世界で人間として生きて、死んだようですが、その記憶が一切ありません。人間だった私を知っているベルモットという人物も私は知らなかったですし、やはり記憶にありません。それに、ベルモットの他に私を知っている人間も居るやもしれません。そんな人達が居る世界に、私という天使が居ても良いのでしょうか?」
ルエルさんは、寂しそうな表情をしている。ルエルさんも学園長の表情を見て予想外だったんだ。
「ルエル様は、知っている人達に自分の姿を見られて、勘違いをさせるのが嫌だと?」
「はい。それに、あのベルモットの落胆した表情を見たら余計に………」
「そうですわね。学園長から見れば、ルエル様のお姿は、学園長が知っている人間だった時のルエル様ですから。しかし、ルエル様自身は学園長を知らない。知っていたら、思い出していたら、もっと違った結果になりますね」
「はい………私は、当初、その人物に会ったとしても大したことは無いと思っていましたが、私のあの言葉は、ベルモットにはかなりの衝撃だったと予測は出来ます。私は、ベルモットにはもう会わない方が良いのではないかと思います」
そうルエルさんは言った。
「なら、私との使い魔契約はダメなの?」
「いいえ、貴女との使い魔契約はしても良いと、私にとっても将来はプラスになりますから」
「じゃあ?ルエルさんの懸念材料は、過去の自分を知っている人達ね?」
「はい。そうです」
「今の現状は素直に話すしかないわね?今のルエル様は天使であって、人間ではないですものね?」
「そうだね。それで、納得してくれる人達なら楽だけどね?中には納得しない人達も居るわね?それは、判るまで説明をしないといけないわ。それに学園長も会って話した方がお互いの為だよ?学園長はたとえ天使のルエルさんだとしても会うのを楽しみにしていると思うのよ。それを会わないなんて聴いたら、学園長はショックを受けるわ」
エリサの話を私が引き継いだ。
「そうですか………そうですね………ベルモットとはまた話した方が良いですね」
「じゃあ?」
「はい。神聖王様に言って、私と使い魔契約をしましょう」
「ありがとうございます。ルエルさん。宜しくお願いします」
「はい。こちらこそ宜しくお願いしますね。マリアさん」
そして、お姉ちゃん達が戻った時に話して、私はルエルさんと使い魔契約をしたわ。
ということでマリアの使い魔はルエルとなりました。
まあ、勘のいい方はレイナと一緒に出て来た時点で判ったと思いますが。
それにしてもリクの出番が無かった………。