母さん酷い! 1
「さて、私が夕飯を作るわ」
「えっ?王妃様が!?お食事を作れるのですか?」
ルエルさんが聞いてくる。まあ、知らないから聞いても仕方ない。
「ご飯くらいは作れますよ。ヒルド?貴女は普通に食べられるの?」
「大丈夫じゃ」
「判ったわ」
「ママ?何を作ってくれるの?」
「今日は、コロッケを作るわ」
「コロッケ?聴いた事もないわ?エリサは知っている?」
「いいえ、知らないわね?あのどういう料理なのでしょうか?」
「油を使ったフライの料理よ。嫌いな人間はまずいないと思うし、美味しい料理よ。待っていなさい。あっ、聖はそのままね」
「オイ!いい加減を金縛りを解けよ!」
「良いじゃあない?解いたら、貴女も作ろうとするでしょう?でも、私が全てやりたいのよ」
母さんはキッチンに行って夕飯の準備を始めた。
「大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だよ。私達、ママの料理は食べたことあるから」
「そうですね。美味しいかったですよ」
「でも、何故、王妃様が料理をやりたがるのでしょうか?」
「ここには邪魔者がいないからだよ。以前から料理を作りたかったから、今やっているのさ」
俺が説明した。
「そう言う事ですよ。ここには、うるさい天使達や心配症のガブリエルがいませんからね」
キッチンの方から母さんの声がする。
「母さん?そう言えよな?素直にそう言えば俺も手は出さないぜ?」
「い・や・よ。解いた途端に着替えるでしょう?」
「当たり前だ!ずっとこんな格好で居られるか!」
「だから、解かないのよ」
「チッ!じゃあいつ解くのさ?ずっとこのまま訳が無いのだろう?」
「解除はご飯を食べる時よ。そして、水着はお風呂に入るでしょう?その時まで脱げないようにしておくわ」
「ひっでー!!」
「はい、出来たわよ」
大量のコロッケをお皿に乗せて持ってきた。サラダもある。
そして、母さんの言うとおり俺も動けるようになったが、水着は脱げなかった。
母さんはそれを無視して、「さあ、食べて頂戴」と言う。
仕方なく、俺は自分の席に着こうとするが、動くと胸がポロリと水着から出てしまい見えてしまう。が、もう気にしない。それに、皆、俺の裸は見ているし知っているし、お風呂で全て判ってしまうからさ。
「母さん?コレって、世の中に出さない水着だろう?」
「そうよ。聖専用の水着よ」
「俺専用水着って?」
「その前にずっと見えていますよ?気にならないのですか?隠さないのですか?」
ルエルさんが言うが。
「うん。もう皆俺の裸を知っているから今更隠してもね?」
もう諦めた。隠しても直ぐにずれてしまうから。
「それよりも食べましょうか」
夕飯を食べ始める。
「これは美味しいわ」
「そうだね。ホクホクしてて美味しいわ」
概ね母さんのコロッケは好評だった。
「でしょう?聖はどう?」
「ああ、美味いよ。というか、母さんのこういう料理は初めて食べるな?」
言いながら食べる。
「でしょうね?これでも密かに練習はしたのよ。でもね………」
「家ではがぶり姉ぇのおかげで披露出来なかったか?」
「そうなのよ。怪我や何かが遭ったら困りますってね?」
「ま、母さんは王妃だからね?臣下の立場ならそうなるよ?」
「そうですよ。王妃様」
「判っていますよ。だから、ここでやったのですよ。ミカエルもルエルも料理は出来ませんからね。出来ていたら私を止めますからね?」
「「う゛っ」」
「そうなのですか?ヒルド?貴女は?」
「妾も出来ぬよ。それでも、妾達、ヴァルキューレの中には料理をする者達も居るがのう」
「そうなのですか?」
「そうなると、このメンバーで、普段、料理が出来るのは聖だけになるな?」
「そうね?」
「じゃあ?お姉ちゃんがもし怪我や病気になったらどうなるの?」
「それは、学食に行けば………あっ!ミカエルさん達が居るか」
「そうだよ。だから万が一の事も言わないと」
「そうだよな?」
「なら、私の部屋に来れば良いでしょう?聖の料理よりは劣るけどね?」
「あっ!そうよね?エリサの部屋に行けば良いんだわ」
「そういう事よ。私も聖にお世話ばかりではいけないしね」
と、エリサは言う。それからは、雑談をしながら食事をした。やっぱりワイワイと喋りながら食べるものいいな。