使い魔召喚10~記憶~
「レ、レイナ様ぁー!!」
と叫ぶ天使。
俺もミカ姉ぇもすっかり忘れていたこの天使の存在。
既に魔法陣も静まり返っている。
「えーっと、転移魔法で帰れないのか?」
「無理です。私、転移魔法を使うと必ず体の一部が切断してしまいますので、この前も両脚が………その前は腕を………」
何?その怖い転移魔法は?
「そっかー?じゃあ?ミカ姉ぇに」
「ごめんなさい。私も神界に帰れません。王妃様にしばらくは聖さん達の元で暮らすようにと命を受けまして、緊急以外はしばらくは帰れないのです」
ミカ姉ぇはもう訳なさそうに言う。
「そっかー?それは仕方ないな。じゃあ、ルエルさんもしばらくは俺の所で暮らせば良いよ。その内に母さんが迎えに来ると思うし」
「はい分かりましたが………でも、なぜ、私の名前を知っているのですか?」
「父さんや母さんが言ったからだよ。レイナの新たな秘書はルエルだとね」
「なるほど、それで、私の名前が分かったのですか?」
「そうだね。それとベルモットという人物は知っている?」
「えっ?ベルモット………?誰ですか?」
「知らないのか?貴女の旦那さんだけどね?」
「えっ?旦那?私は…………えっ?天使として…………あれ?記憶がない?天使としての記憶はありますが、それ以降の記憶が?私はどうやって生まれたの?」
ルエルさんが混乱している。
「聖さん?どういう事ですか?この天使、ルエルは、ずっと天使のではなかったのですか?」
「ん?ミカ姉ぇは、このルエルさんとの面識が?」
「勿論、ありませんよ。もし、ルエルが、人間から天使へと、成った場合は、人間の記憶はほぼ無くなりますよ。まあ、これも転生ですから前世の記憶は無くなります」
「なるほど。じゃあ、外見や名前は同じだけど」
「はい、最早別人ですね」
「そうか、分かった。じゃあ、戻るか。ここにいても仕方ないし」
「分かりました」
俺達はルエルさんを加えて、皆の所に戻った。
「オーイ!終わりましたよ」
と、先生達に声をかける。
「戻ったか。って、オイ?誰だ?」
先生が来ながら言う。その後にマリア達やクラスメートが来た。
「ああ、この人、というか、この天使はルエルさんと言いまして、神様と一緒に魔法陣から出て来たのは良かったのですが、その神様に置いて行かれたので、しばらく、私の方で預かる事になりました」
俺はルエルさんを見る。
「なるほどな?」
「はい委員長。質問!天使とは一体何?」
「天使とは、神様にお仕えする者達を指す名称だよ。私の使い魔もそうだよ」
「えっ?そうなの?委員長の使い魔が?でもなぜ?」
「さあね?何故なの?」
「(私に振らないで下さい!もう仕方ありませんね)それはですね。昨日、神聖王様がご降臨なされた時にこの者が親切で丁寧で世話になったお礼として、私を遣わせたのですよ」
「みたいだね?ま、私は今朝言ったように知らなかったからさ普通に対応したのだけどね」
「はい、良いですか?神聖王様は、私達では到底判らない深い理由があって、この天使様を派遣なされたのです。これ以上は、質問はしないように」
ジェーン先生が言った。
クラスメートはしぶしぶ了解する。
「私は別の組に様子です見て来ますよ。かなり遅れていいる組もありますからね」
「遅れている組?」
「ええ、C組ですよ」
『ゲッ!?あの不良の見本市の組か』
『先生?どうして遅れているのですか?』
「C組の担任教師が魔法陣を2個しか描かなかったのが原因ですね。ノルマが3個でしたが、どうやら、サボったようですね」
「バカか!余計に負担になる事が判らないのか!!」
「その様ですね?時間内に終われば良いのですが………」
ジェーン先生が、心配している。
「ならさ、ここの魔法陣を使わせたら?」
俺がそう言うと。
「駄目ですね。そんな事をやったら、ズボラな教師が、来年は最低限で描いて、他の組の魔法陣を使おうと考えてしまいますよ。だから、組が描いた魔法陣を使うのが原則です」
「なるほど。では、もうこの魔法陣は使わないと?」
「そうですね。この組は終わりましたので、後は担任教師であるステラが消せば良いですね」
「暇なら、先生が今の内に消せば良いのか?」
「そういう事ですね。魔法陣を悪事に使われないようにさっさと消せば良いですよ。ステラ先生」
ジェーン先生はステラ先生をみるが。
「という事で、聖、お前がやれ!お前なら簡単に魔法陣が消せるだろう」
と、回って、俺に来る。
「はぁ?なんで、やらないといけないのですか?先生のお仕事でしょう」
「イヤ、お前の方が魔法陣に詳しいだろう。というか、お前がやった方が早く消せるからやれ!」
「あーはいはい」
仕方ないから『パチン』と指を鳴らして、5つの魔法陣を同時に消す。