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破滅をする者達

 時間は遡り。


 国王はずっと自分の執務室に籠もり、法律の不備等が無いかと、読んでいた。


 そこに執事がノックし。


『失礼いたします。陛下、リリカ殿がお目通りを願い出ておりますが、如何しましょうか?』


「何?リリカがか。分かった通せ」


『はっ!リリカ殿どうぞ』


 リリカは国王に頭を下げた。


「リリカ?今日は一体何しに?私は今日は忙しくてな?」


 国王は特に親しい者に対しては『余』とは言わずに『私』と言っていた。


「分かっております。今日は大事な日。私も娘の聖に言われて、陛下の護衛に来た次第でございます」


「そうか、聖殿が。聖殿はなんでもお見通しだな」


「陛下、聖に殿は不要でございます。聖は()()私達の娘でございます」


「リリカよ。勘違いするでない。確かに聖殿は、神聖王様のご令嬢様だが、私が聖殿と呼ぶのは敬意をはらって、殿とお呼びしているのだ。既に聖殿は我が王国に無くては成らない人物になっている。それが、たとえただの人間であっても私は聖殿を殿と付けて呼んでいるだろう。もし、我が王国に何も利益がなければ、私も聖と呼んでいるだろう。聖殿もそう言ってきていたのでな?」


「そうでしたか?分かりました。陛下のお考えを尊重いたします」


「ウム」


 そして、王妃がやって来た。


「久しぶりですね?リリカ?」


「はい、ご無沙汰しております。王妃様」


「しかし、お前がここに来るとは珍しいな?」


「あら?良いではないですか?それに、リリカに少しお話をしたくてね?」


「私にですか?」


「そうですわ。まあ、わたくし事ですが、リク殿をわたくし達の養子に迎え入れたいと思っておりますのよ」


「えっ?リクを王家の養子に?しかしリクは………」


「神聖王様の養子ですね?しかし、昨日、一緒にお菓子作りをしていた時にわたくしに話してくれましたわ。リク殿は元々アトランティスの出身で、貴女の娘であるマリアを攫ってしまった主犯格だと」


「な、なに!?真か?」


 国王は未だにアトランティスを警戒していたので、怒鳴り声になってしまった。


「は、はい」


 と、リリカが答えた。


「しかし、神聖王様は、アトランティスは全て解決済みと申していたが?」


「それも本当です。神聖王様は、計画を立てた罪人を自ら罰しました。それは、私も目撃しております。後の者達は、その罪人の言うこと何も疑問も持たずに従っていただけです。だから、アトランティスの人々には何も罪はございません」


「そうか、分かった。リリカのその言葉、信じよう」


 国王は落ち着きを取り戻す。


「で、リク殿は母親の温もりも知らずに育って来たと言っていましたわ。そして、お菓子作りも初めてだと。それを聴いて、わたくしはリク殿を養子に迎えようと思いましたのよ」


「そうですか?しかし、リクがなんて言うか?それにリクは聖を慕っております」


「それは分かっていますわ。ただ、休みの日にでも遊びに来て、一緒にお菓子作りや母親の温もりを教えたいと、それにこの宮殿には養子の方がより気軽になるでしょう?」


「そうでしたか?王妃様のお考えはよく分かりました。しかし、私にはなんとも申し上げられません。やはり、リクに直接話した方が良いやもしれませんね?」


「分かりましたわ。そういたしますわ。あら?何ですか?この資料は?…………まあ?こ、コレは!?」


「ウム、聖殿がやってくれたか………。しかし、急に資料が目の前にと言うのは、なんとも不思議だな?」


 国王はその資料を目を通す。


「そうですわね?確か、時間を止めると聖殿はおっしゃっておりましたが、わたくし達は、それが全く分からなかったですわね?」


「そうだな?ん?リ、リリカ?」


「あの愚弟!!こんなにも悪事をやっていたなんて、絶対に許さないわ!!私がその首を切り落としてやるわ!!」


 資料の目を通したリリカは怒りに震えていた。


「…………」


 あまりのリリカの怒りのオーラで国王と王妃は言葉を失った。


 その事に気づいたリリカが、慌てて謝罪する。


「イヤ、良い!自分の身内だった者が、悪事を働いていたと判れば、リリカのその怒りも判る」


「はい………ですが、みっともない所をお見せしてしまって申し訳ございませんでした」


 再度、謝罪した。


「ウム、あの2人の断罪する証拠も出揃った。そろそろ行こうぞ」


「はい、陛下」


「では、わたくしは、息子の部屋に行きますわ。万が一があった場合に、速やかに息子を連れて脱出いたします」


 王家はその血を絶やさないのが絶対条件となっているので、万が一、国王の身に何か起きても、王妃は子供達を連れて逃げ出し何としてでも生き延びるようにと段取りをしていた。


「ウム、クレアの所に逃げるが良い。あそこには聖殿達も居る事だからな」


「判っておりますわ。では、御武運を。息子と一緒に神聖王様にお祈りをしておりますわ」


「ウム」


 国王はリリカと親衛隊を引き連れて、冢宰と闇貴族が居る会議室へと向かった。


 その会議室では、ガルーガとクレア王女の結婚の是非を巡り会議していたが、闇貴族と冢宰が結託しているのは、昨日の晩餐会で明らかになり、独壇場で成立してしまった。


「ギャーハハハハ!!今後、ワシらに逆らう者は処刑だぁ!!」


「以上を以て会議を」

「待て!!会議は終わっておらぬぞ!!」


 国王が入って来る。


「おやおや?これはこれは、コクオゥサマ?今更、どのような、ご用件で?もう、貴方の時代は今日を以て終焉ですぞぉ。明日からは、我が息子が国王となるのですからなぁ。ギャーハハハハ!!」


「そうか?それは残念だな?だがな終焉はお前達だ!!冢宰!バラル・フレイム!並びに闇貴族ルガール・ダーク!!余の勅命以て命じる!本日この場を以て、両名の全ての地位・貴族の身分を剥奪する!!」


「ギャーハハハハ!何を言っているのだか、ワシには、わぁかぁりぃまぁせぇん。なぁぁぁ?貴方はもうこの国の王でもありませんからなぁ」


「そうですな?貴方はもう国王の器ではない!」


「言いたい事はそれだけか?」


 国王は、2人に資料の放り投げた。2人は資料を見た瞬間。


「「なっ!?」」


 と、同時に声を上げ、表情が変わる。


「どうやら、お前達は中身を見なくても、これがどういう物か判っているようだな?更に、今までの法律を改めて見直した。お前達の有利な法律が出てきた!これらは余の勅命で全て廃案とする!」


 国王は、冢宰と闇貴族が結託した法律の改正が書かれた原本も放た。


「元冢宰バラル!貴様は冢宰の地位だったにも関わらずに、闇貴族と結託し、闇の領を中心に各領に大量の麻薬と魔薬をバラまくとは言語道断だ!資料が書かれている全ての犯罪の黒幕は貴様だと判っている!そして、元闇貴族ルガール!貴様も王国が禁止しているカジノ、娼婦館を経営し、数々の犯罪行為も明白である!」


「ギャーハハハハ!だから、なんだぁ?愚民共はなぁ!ワシらぁ貴族の踏み台なのだぁ!領の愚民共の命だろうと、なんだろうと、何に使おうがぁ。ワシらの勝手だぁ!ワシらにはその権利があるのだぁよぉ!元国王さぁまぁ!」


 この場においてもまだ勝ち気でいるルガール。


「その通りだ!それに貴方のやり方ではこの王国はいずれダメになるのだ!!」


「死ね!国王!」

「チェストー!」


 ルガールとバラルは国王に向けて、護身用の剣を抜き斬りかかるが。


「この愚弟が!!恥を知れ!!」


 リリカが2人の攻撃を阻止した。更に、親衛隊も雪崩れ込んで2人をあっという間に拘束する。


「ど、どうして……あ、あねう「この私を姉と呼ぶな!!お前には、失望した!私が家を出ても、お前が!!お前が!!なのにこのざまはなんだ!!もうお前の顔を見たくない!!」


「…………」


「この罪人共を連れて行け!」


「はっ!」


 親衛隊は2人を連れて行った。


「リリカ、すまぬ。余の力不足だ………」


「いいえ、陛下の責任ではありません。あの愚弟が全ていけないのです」


 リリカの目に涙がうっすらとあった。


「へ、陛下!!」


 他の貴族達は、国王の登場からずっとこうべを下げていた。こういう会議場では、国王が入室して、国王の許しがない限り、頭を勝手に上げる事は許されない決まりがあった。


「我らが不甲斐ないばかりに」


 と、残った4大貴族の代表が言った。


「そうだな。だが、余も同じ事だ。だが、これで、一斉に掃除が出来るな!」


「そ、掃除ですと?」


「ああ、闇と火のおこぼれに預かろうとした貴族共の一掃だ!!一人も残さずに一掃する!良いな!」


「ははっ!!」


 最初に一掃されたのは、この場にいた闇派と火派の貴族達だった。そして、後日、次々と闇や火のおこぼれにたかった貴族達は一掃され、領地・財産を全て没収され、中でも酷い貴族の当主達はその責任を負い処刑にされ。それ以外の者達は全員平民の身分に落とされた。元、貴族が平民に落とされて、まともにその生活が出来る者達なぞ、ホンの一握り居るか居ないかだった。ましてや、ずっと不正に手を染めて来た者達だ。平民でのまともな生活は望めない。

 学園の方でも元貴族達の子供達が次々と自主退学者が続出したのは、もう少し後の話となる。学園側もその対応に追われる事になるが。


 元凶の闇と火の当主2人は、その日の内に、国王殺害未遂で斬首刑によって、民衆の前で処刑されたのだった。


 そして、国王は、その日のうちに闇屋敷と火屋敷に乗り込んだ王国軍の兵士に奇妙な報告を受ける事となる。


 そして、次の日に国王は聖を呼び出したのだった。

 制作裏話。

 当初は父親達の名前は無しで行こうと思っていましたが、話の関係上、出さざるをえなかったので、急遽考えたのが、これらの名前でした。

 アルフレッドの父バラルの名前の由来は、バベルの塔の建築によって、神が怒って人々の言葉を【混乱させた(バラル)】。という意味だったので、採用しました。


 ルガールは、ガルーガをただ反対に入れ替えただけの名前です。某格闘ゲームのラスボスとの名前とは関係ありませんので。まあ、性格は親子そのままコピーさせた性格です。


 ネタばれ:アルフレッドとガルーガはまた再登場します。アレが完全退場ではありません。が、ガルーガの性格は私が作ったキャラクターの中では一番の最低の悪役キャラクターになりました。

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