リクのやらかし
朝練が終わり、朝食も食べ終わり。俺達が制服に着替える時に。
「お、お姉さま!わ、私、スカートなんて穿けません!というより、スカートを穿いたことがありません」
と、リクが駄々をこねた。
「はいはい。ちゃんと穿こうね?俺だってスカートは穿きたくないけど、こうやって我慢している」
「えっ!?お姉ちゃん、そうなの?知らなかったわ」
「そうだよ。スカートはスースーと下から風が入ってくるし、風が強ければ、勝手に捲れ上がる。ズボンの方が良いよ」
男だった時は思わなかったけどさ、これってセクハラだよね?
「確かにそうだけどね?」
「ま、俺も学園のルールだから穿いているだけだよ。リクも我慢しなさい」
「わ、分かりました………」
リクはしぶしぶスカートを穿いた。
そして、俺達は学食に行くと、先に部屋を出ていた先生が既にいた。
「遅かったな?」
「ええ、リクがスカートを穿くのを嫌がりましてね」
「ああ、なるほどな。その気持ちは分かるぞ。私も嫌だった」
「えっ?私以外、全員、スカートが嫌だったの?」
「みたいだね?」
【速報!!】俺達の部屋に住んでいる人達は、マリア以外、全員がスカート嫌と発覚しました。
「まあいい、お前らはさっさと行け!他の生徒達に見られてもあまり良く無いからな」
「はーい、またね、リク」
「はい」
俺達は教室に入るとエリサが挨拶をしてきた。
「おはよう。聖にマリア」
「「おはよう」」と答えるが、クラスメートほぼ全員がじっとこちらを見ている。
「ん?どうしたの?まだ返事は書いていないけど?」
『違います!』
『神聖王様って、どういう神様だったの?』
『委員長達は一緒に来たのでしょう?』
クラスメートは神聖王に興味があるようだった。
「へぇー?あの人って、神聖王様だったのか?」
「知らなかったわ。ねえ?」
「うん、夫婦が本山はどこですか?と聞いてきたからただ案内しただけだよ。そして、神聖王様とされる像があまりにも可笑しかったから笑っていたら、自分達の部屋に戻っただけだよ」
「そういう事。だから、何がなんだか分からないわ」
俺達は事前に打ち合わせをして、聞かれたら知らない振りをしようと決めていた。
『そうなの?じゃあ?委員長が陛下と言った事も?』
「ん?何のコト?全く知らないけどね?国王陛下もいたの?」
「私達、寮の各部屋に戻されて、パニック状態になっていたわ」
「そうだね。自分の部屋にも関わらずに『あれ?ここ何処だ?』となったモノ」
『そうなの?』
「そうだよ」
俺がそう言うとクラスメートは離れていく。これ以上、俺達から何の情報を聞き出せれないからだ。
「(ここまでくると白々しいわね?)ああ、私も聞きたかったなぁ?知らないじゃあ仕方ないわね?」
エリサは白々しく言った。
「そうは言っても、後の事は知らないわよ?エリサ?」
「そうだわね?もうそろそろ、ホームルームが始まるわよ?」
俺達が席に着くとチャイムが鳴り、しばらくして、先生が入って来た。そして。
「居るやつは居るな!居ないやつは知らん!」
いつもの出席チェックをして。
「あー、今日、また、新たな転入生が入ってくるぞ!」
『えっ?一週間前に委員長が来ましたが?』
「仕方ないだろう!学園はここだけだ」
『美人ですか?美女ですか?』
また、俺と同じシチュエーションだな。
「黙れ!一週間前と同じだろうが!」
さすがの先生も怒る。
「もういい!オイ!入って来い!」
「は、はい!」
緊張状態のリクが入ってきた。
『おおっ!また、我がクラスに美女が入って来たぞ!』
『皆の衆!酒じゃあ!酒を持ってこい!』
と、数人の男性陣が騒ぐと。
「お前らふざけるなよ!!何が酒を持ってこいだ!!騒いだお前らは、今日の授業は受けなくても良いぞ!出ていけ!」
と、先生は数人の男子生徒を教室から強制的に追い出した。今日の授業は、午後から命に関わる授業がある。ふざけていた生徒達が何をするか分からない。
「あ、あの?」
「すまんな。では、自己紹介をしろ」
「あっはい!私の名前はリク………えーっと……(キョロキョロ)……あっ!お姉さま!!私のファミリーネームって、なんでしたけ?」
リクは大声で俺の方向き喋った。
当然、クラスメートも俺の方を向く。
『お、お姉さまって?』
『委員長の事?』
『こ、コレは!』
『ま、まさか!』
『き、キマシタワ!』
教室がざわついていた。
「あんなに自分で練習していたのになんで忘れるのかな?」
「リクらしいわね?」
全くやってくれたわ。
俺は机に伏せた。