頼み事
次の日の朝練前。
いつものように軽食を食べている時に昨日の出来事をママと兄さんに話した。ちなみにエリサは今日はいなかった。
「えっ?私の事を知ってしまったの?」
ママが驚いていた。
「まさか、おふくろが貴族だったなんてな?」
兄さんも驚いていた。
「仕方ないな。現冢宰はお前の実の弟だ。その話の過程で、お前の過去の話も出てくるな」
「そうよね。仕方ないと言えば仕方ないわね?」
諦めている表情だった。
「本当に貴族だったのかよ?」
「ええ、そうよ。夫と一緒になるために実家と縁を切ったのよ。だから、フレイム家とは何も関係は無いわ!今の私達はただの一般人よ」
「そうか。ならいい。今更、何か関係があってもオレらも困るしな?」
「そうだよね?」
兄さんの言葉にマリアも同調する。
「で、ママには、陛下の護衛に付いて貰いたいのだけど?」
「陛下の護衛に?ああ、今日、実行するのね?良いわ分かったわ」
「本当に良いのか?場合に寄ってはお前は実の弟を捕まえる事になるぞ!」
先生が心配をしていた。
「良いわよ!愚弟が悪い事をしているのなら、姉として、捕まえるのは当たり前だわ!全く!冢宰の地位に居るクセに悪巧みをするなんて以ての外だわ!!」
ママは魔力を放出しながら怒っていた。
そりゃあ、ママが怒るのも当然だな。自分達の主君に対してクーデターを起こそうとしているのだから。
「話はがらりと変わるけどね。聖?土日のお昼限定でカフェのシェフをやってみない?」
「えっ?シェフを?どうして?」
「あれだけの腕前を持っているですもの。やってみる価値はあるわよ?それに、聖のおかげでカフェが大繁盛をしているわ。土日もかなりのお客様で、夫一人では手が回らないのよ」
「ああ、なるほどね?少し考えても良いかな?」
「ええ、良いわよ」
「お姉ちゃん、凄いわ。シェフなんて」
「そうですよ。私達は、凄い料理を食べていたのですね?」
「そうだね。けど、ママ?ギルドのクエストは?お姉ちゃんがシェフをやると私一人になるよ?まあ、一人でも出来るけどね?」
自信満々なマリア。魔力量が一気に増えたから、余計に自信が付いたようだ。
「それは、考えてあるわ。リク、私のギルドに入らない?リクなら、かなりのクエストが出来るし、それにマリアとパーティーを組めば良いわ」
「えっ?私がリリカさんのギルドに入っても良いのですか?」
「勿論よ。はい、これがギルドカードよ。もう事前に作っておいたのよ。ランクは聖やマリアと同じEランクよ」
ママは、リクにギルドカードを渡した。
「あ、ありがとうございます」
リクは頭を下げた。
そして、話題は、父さん達になった。
「それにしても、昨日から、神聖王様が本山にご降臨なされたって、かなりカフェでも騒いでいたぞ。それと教皇が罷免されたって?」
兄さんが言う。
「ああ、あのゴミね?当たり前だよあのゴミは────」
と、ゴミが罷免された理由を言うと。
「呆れたわ」
「ああ、本当にゴミだな?」
「でしょう?俺達も陛下達もあのゴミの発言には呆れかえっていたよ」
「ある意味、辞めて良かったかもね?ろくでもない教会だわ」
「聖には悪いが、俺もそんな宗教に入りたくもない!」
「イヤ、一向に悪くないよ。俺達がやっているモノではないし、人間達が勝手にやっているだけだよ。先生も宗教を辞めたら?別に宗教を入っていなくても祈りなら父さん達に届くし、ろくな宗教でもなさそうだしね?」
辞めるように勧める。
「そうだな?もう宗教に入っていなくても神聖王様にはまた会えるしな」
「会える?」
「ああ、宗教では徳を積めば死後に神聖王様に会えると言われていてな。そして、教皇になれば、神聖王様にお仕えが出来るとな?だが、あのゴミのおかげでな信徒の夢はぶち壊しだな。教皇だった者が神様を否定したのだからな!話にならんな!」
「そうだわね?それに宗教の教えとは全く違うしね?」
先生とママが言う。なるほどね?ま、教祖は誰だか知らないが、おそらく、ソイツの想像だろうね。