部屋でくつろぐ33
「そ、そうか?お姉ちゃんの弟妹は神だったわ。普通に考えてみなくても勇者よりも強いよね?」
「そういう事。それに地球の人間は、この世界の人間よりも弱いよ」
「そうなの?」
「そうだよ。第一魔法が使えないからね。それに剣術だってかなり劣るよ。マリアは知っていると思うけどさ、俺がママとやりやった時はたったの一合でギブアップだもの」
「そうだったのか?お前がな?」
先生とリクが信じられないという顔をしていた。
「けど、それって、体が慣れていなかったせいではなかったの?筋力とかさ」
「それもあるけど、あの時は、前世の男の状態でもママとの打ち合いは成立しなかったさ。俺の剣術は所詮はスポーツの剣術だったのさ。戦場や実戦で鍛えた剣術とは全く違うよ」
「なるほどな。では、何故、50年前の勇者が強いとされていたと思う?もし、聖が言う通りなら、召喚された勇者は役立たずだぞ?しかし、50年前の勇者は活躍をしたと言われているぞ?」
「そうですね?考えられる事は、召喚された時にその人間の体になんらかの変化をもたらしたとしたら?」
「何?」
「仮に勇者召喚が、異世界の人間なら誰でもいいなら、産まれたばかりの赤子や死にかけている老人が選ばれても良い筈ですよね?」
そう、勇者召喚の召喚者が誰でもいいなら、老若男女、誰でも良いことになる。しかし、実際は違う。
「あー、確かにな?理屈ならそうだな。誰が選ばれても良いなら、なんら不思議はないな?」
先生も納得していた。
「そうです。おそらく、勇者召喚には相性があると思いますよ。そして、召喚された時になんらかの能力が備わっていると思いますが、召喚された人間は、自分自身にどんな能力かが備わっているかは解らないし、そんな能力を自身の世界では、当然、使えない、使った事がない。だから、いろいろな訓練をして判明すると思いますよ?」
「そうだな。確かに50年前と今とでは違うな。当時の勇者も当然戦闘訓練をして能力を開花していったのだろうな?」
「おそらく。だから、別に俺の弟妹のどちらが勇者でも構わないのですよ。あいつらは、魔法や魔力の訓練をやっているから」
「でも、お姉ちゃんの弟妹の他に本来の人が来たらどうするの?」
「母さんの転移魔法で、その人は元の世界に戻ってもらうさ。さっき言ったように、居なくなると大騒ぎになるからね」
「あっ、そうだね。あれ?それだと、お姉ちゃんの弟妹も同じじゃあ?」
「そこは大丈夫でしょう。おそらく、父さんが俺たちがその世界で存在していたという記憶を人間達から消すからさ。元々、そのつもりだったしな」
「そうなの?」
「ああ、父さん達の計画だと、俺たちが二十歳に成ったら、神と成り、神界で暮らす計画を立てていたんだよ。それが早まっただけさ」
「そうなのね」
「お姉さま?」
「ん?」
「聞こうと思っていたのですが、明日、私はどうすれば良いのでしょうか?」
「ああ、まずは、制服だな。まあ、昨日の今日だから、学園の制服は間に合わないが、俺の創造魔法で、リクのサイズに合った制服と運動着を出すよ。制服を着て、寮の食堂に行くと、先生がくるから一緒に来れば良い」
「そして、私が、入って来いと言うから、教室に入って、自己紹介をして終わりだ。簡単だろう?」
「は、はい。しかし、自己紹介って?自分の名前を言えば良いのですか?」
「そうだよ」
「では、リクで良いのですね?」
「リク?ファミリーネームも言わないと」
「ファミリーネーム?それはなんですか?」
「家族である証拠だよ。リクの場合は、ヤマセだよ。だから、リク・ヤマセになるのよ」
「リク・ヤマセ………これが、私の名前ですか?」
「そうだよ。貴女の名前だよ」
リクは何度も自分の名前を口にしていた。
「ま、これから、俺達はここで卒業まで暮らしていくんだ。皆で楽しくやっていこうな!」
「「「おーっ!!」」」
と、先生まで同調して拳を高々と上げた。
「先生まで」
「良いだろう!私もここで暮らしていくんだからな。あっ!寝る場所は、お前の空間の部屋だから気にするな」
「先生まで、お姉ちゃんに依存しているわ………」